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第五十四話

 ギンガとカオルは案内役の技師タリアに連れられて城の工房に向かった。


 工房では多くの人がせわしなく動き回り、兵士が装備する武器や今度の戦争で使われるだろう大型の兵器など様々な物を作っていた。


「……大砲が無いね」


 工房の中を見回したギンガは、バリスタやカタパルトなど色々な兵器が作られている中で大砲が無いことに気付いた。


「そうですね、大砲は今は作っていないですね」


「どうして?」


 ギンガが首を傾げながらタリアに聞いてきた。


「実際大砲は作れなくは無かったのですが、ツェルマットでは大砲の素材になる、鉄や火薬が貴重で数をそろえるにはどうしても他所の都市から輸入しないといけないことになるので、兵の装備も作らないといけない現状では十分な数をそろえるには資金が足りないのです」


「……向こうは大砲を使ってくると思う?」


「前回の戦いでは用意しておりませんでしたが、使ってくるでしょうね…ハイデラバードはむしろ大砲の材料は豊富に取れますから、向こうに所属しているプレイヤーが開発していないわけがないでしょうし」


 そのことを聞いて考えこみだしたギンガの横で専門外の事で暇を持て余して辺りをキョロキョロと見回していたカオルは部屋の隅に置かれている黒鉄の鎧に気が付いた。


「あちらの鎧は何でしょうか?」


「ああ、あの鎧は前回の戦いの戦利品ですね。敵の重装兵が身に着けていた鎧を回収したものです。相手の装備を調べることで色々と対策を考えていたのですよ」


「私が見ても硬そうだって事しかわからないわね~」


 そう言うカオルに解かりやすく説明するためにタリアは鎧の一部を持ち上げた。


「よく調べてみると鎧の表面がコーティングされているのがわかりました。本来黒鉄製の防具は雷に弱いのですが、このコーティングで雷を弾く様になっているのです。なのでまずはこのコーティングをどうにかしないと雷属性の魔術が効き難いのです」


「なるほど~、つまり弱点だと思っていた雷属性が対策されてそうでは無くなってしまっていたわけですね」


「はい、ですので今はこのコーティングをどうにかする方法か、それを無視して効率よくダメージを与える方法を探っているところなのです」


「……何か考えがあるの?」


 ギンガに聞かれたタリアは奥から木の枠で作られた箱に泥の球体が入った物を持ってきた。


「これは明末に万人敵と呼ばれるものを模した兵器です。この泥の球体の中に火薬や毒薬を詰めており、導火線に火をつけて城壁から投げ落とすと、万人敵は火炎や毒ガスを噴出しながら地面を転がって敵を倒すというものです。どこに転がるかわかりませんが城壁があるためこちらに被害は出ないというものです」


 カオルは感心したように目の前の物を見た。


「ほへ~~、色々考えておるんやな~~」


「ただ、これにも火薬が多少使われているので量産が難しいという難点がありますが」


「……なら、この世界特有の魔術を使った兵器はないの?」


「一応、あるにはあるのですが…」


 タリアが案内した先にあったのは幾つかのバリスタ用の強大な矢であった。


「この矢は魔法の杖の様に魔石を埋めんこんでそれにルーンを刻むことにより魔術の込められた矢を放つことが出来る様にしたものです。ですが魔術を込めても威力がそこまで上がることがなかったのです。元々バリスタの矢はそのままでも強力でしたし、できることは着弾地点の周辺に魔術による攻撃ができるだけでしたが、この魔石には強力な魔術は刻めませんから、正直そのまま魔石を別の用途に使った方がコスト的に有難かったりします」


 カオルは隣で考え込んでいるギンガを眺めて。

 

「どうですか、何かいいアイデアはありますか?」


「…魔術についてはハルトに相談した方がいいかも。ただ…こちらの方が数が少ないからもっと多くの敵を倒せる兵器を考えないといけない」


「う~ん、多くの敵を倒す兵器なんて私には爆弾以外思いつかないわね~。けどここでは火薬が取れないから無理ですわね」


「けど…考えないと。こっちには魔術があるから科学ではできない戦法も使えるはず」


 それから、様々な試作兵器を見せて貰ったが、戦況を変えることができる兵器は思いつかなかったので二人は一度皆と相談することにした。




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