第五十話
いきなりの二人のやり取りに驚いた様子だったジークだったが、すぐに気を取り直し、改めに話し始めた。
「いや、こちらも戦況が悪いから即決して貰わなくてもいい、取りあえず今の戦況話させてもらってもいいだろうか」
「えっと…はいどうぞ」
この場には、シンヤとユウキしかいなかったが取りあえず、ジークの話を聞いてみることにした。
「現在、この天翼都市ツェルマットは黒鉄都市ハイデラバードと戦争している。約二ヶ月ほど前に一度このツェルマットを護る城塞チェスターに一度攻めてきたことがあったがその時は上手く撃退することができた」
城塞っていうとあれか、このココに来る途中にあった崖を塞ぐように建っていたやつか。
「前回撃退できたってことは、防衛能力は高いのかその城塞は」
「ああ、立地的に攻められるのは一方向からのみで、更に高所は全てこちらが抑えることができてるから、射線も通しやすい。つまり、立地的には防御も反撃にもこちらが有利になっている」
ここまで地理的有利な条件がそろっておいて、出会ったばかりのプレイヤーである俺達に手伝いを頼むとしたら……
「戦力差が圧倒的なのか」
「そうだ、現在こちらの戦力は4000ほどだが、偵察部隊の報告よれば、向うは10000の軍勢を引き連れこちらに進軍しているそうだ」
「……そこまで悪い戦況なのか?」
およそこちらの戦力の2.5倍か…攻撃三倍の法則から考えればギリギリ何とかなりそうな戦力差ではあるな。二ヶ月前にも防衛に成功しているって話があるし、他にも不利な情報があるのか。
「二ヶ月前の防衛戦よりも更に一ヶ月前にこのツェルマットはハイデラバードに敗北しているんだ」
「すでに一回負けていたのか」
だが、都市まで攻められてはいないようだし、そこまで悪い情報か?
「ハイデラバードはこちらに攻めてくるよりも前に、自身周辺の都市国家を攻め落としており、その勢い乗ってこちらまで攻めようと進軍してきた。それに対してツェルマットは周囲の栴檀都市ヴィエンチャンと湾岸都市ベイラと共同戦線を張ることにしたんだ」
栴檀都市ヴィエンチャンは森の中にある都市国家で、見上げるほどの大木が犇めきあっており様々な薬草が採れるのでモモがココの次に行きたがっていたな。
湾岸都市ベイラは海辺にある都市国家で、機会があれば全員で海水浴に行きたいと男三人で話し合ったな。うちの女性メンバーは全員可愛いから水着姿を見ることができたら眼福だと思っていたから。
「三ヶ国は連合軍を作ることによって、ハイデラバードの軍勢はほぼ互角の戦力持って行ったが、三ヶ国とハイデラバードの国境線状にあたる平原で野戦を行い……大敗した」
「大敗っと言われるくらい負けたのか」
「ああ、その戦場に出撃していたツェルマットの王は戦死し、王の護衛についていた天馬騎士団も団長を含む主要人員がほぼ戦死した。これによりツェルマットの最高戦力が都市に残った近衛騎士団を覗いてほぼ壊滅したことになる。だから新参者であったプレイヤーの俺が今、新設された天馬騎士団の団長を務めている」
大出世だなジーク。
「あれ、王様が死んだなら今この都市は誰が運営しているんだ?」
普通に暮らす分には王様なんて気にしなくても問題ないけど、流石に国の最高権力者が不在だと色々と問題があるんじゃないか。
「今はこの都市国家唯一の王族である、クーリュディナ姫と残った大臣たちがこの都市を治めておられる」
へ~~今この都市は御姫様が治めているのか。
「また、その戦いを始めた時には次の標的はツェルマットと決めていたようで、我らが重点的に狙われたそうだ。そのため、こちらの損耗率は9割を超えていた。だから、今ここにある戦力は新たに集められた戦力だけで錬度も低い」
「なるほど、つまり戦況は、こちらの兵は数と質、両方ともハイデラバードに劣っているっと、有利な点は地の利がある程度か」
それなら少しでも戦力が欲しいと思うはずだ。
「ああ、ここまで状況が悪いとこちらに手を貸してくれるプレイヤーも集まらなくてな。だからこそ、こうして声を掛けさせてもらったわけだ」
「ちなみに、プレイヤーの数はどうなっているんだ?」
「こちらは俺と同じく騎士団に入っているものと、騎士団には所属してないが都市で活動しておりこちらに協力を約束してくれた者は全部で20人ぐらいになる。一方ハイデラバードには1000人位のプレイヤーが傭兵として参加しているそうだ」
プレイヤーの数までそこまで差が開いているのか。
「さて、こちらの状況は大まかに理解してもらえたようだな。その上で頼みたい、どうか力を貸してもらえないだろうか」
「よし!! 俺たちに任せろ」
シンヤは微塵も悩むことなく即答した。
バコン!! ユウキは先程の様にシンヤの頭をはたき倒した。
「だから、君はどうして勝手に決めるんだよ!!」
「大丈夫だって、この話を聞かせたらソースケとハルトは必ず肯かせるから」
「肯かせるって無理矢理じゃないか」
無理矢理じゃなくても、二人なら問題ないと思うがな、物語的に有利な方につくより、不利な方について逆転する方が燃えるしな。
「それに……今なら吹っ掛けれる」
上手くいけば天馬車台が一発で稼げるかもしれん。
「ふむ、金に困っているのか」
ジークが食いついてきた。戦力が必要なこの状況で金で雇えるなら雇いたいんだろう。
「ああ、ちょっと1200万G程必要でな」
「1200万G!! 流石にそれだけの大金をただの傭兵の報酬として渡すわけにはいかないぞ」
流石に1200万Gもの大金にジークも驚いたようだ。
「つまり、こう言いたいんだな……1200万G程の価値のある働きをしろっと」
しばらく、シンヤとジークは強い意志を込めた視線を交し合い。
「……できるのか」
「さっきも言っただろう……俺たちに任せろって」
シンヤは不敵に笑って見せた。
さて、今度は戦争か……楽しくなってきた。
「いや、ちょっと待ってシンヤ。ボク達も巻き込んでいるけど1200万もの働きって何をするつもり」
「な~に、ツェルマットがやられた様に、ちょっと敵の団長や隊長などを片っ端から皆殺しにしていくだけだ…簡単だろ」
「いや、それは全然簡単じゃないよ。それに相手はこちらよりも大量の兵士を引き連れているんだよ」
「ならば、一緒に蹂躙すれば良し!! 雑兵など物の数ではないわ」
自信満々のシンヤの宣言にユウキは自分で説得することをあきらめ。取りあえずみんなを集めて話し合うことにした。




