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第四十八話

 高原のペガサスたちは人に慣れているのか、シンヤ達は簡単に近づくことが出来た。しかし、撫でるまでは抵抗しないが、テイムしようとすると途端にペガサスたちはその場から飛び立ち、距離をとってしまう。


「クソ、中々難しいな……やっぱりコレの出番か」


「やっぱり使うんだねエロ本」


 そう言い、ユウキは呆れた視線でシンヤが懐から取り出したエロ本片手にペガサスに近づいて行く様子をを見ていた。


 シンヤは後ろからそっとペガサスに近づくと、背をポンと叩き、振り向いたペガサスに手に持ったエロ本を見せた。


「ほら、これが欲しいんだろ」


 直後、ペガサスの後ろ蹴りがシンヤを襲った。


 身体はギリギリ躱すことができたが、ペガサスの蹴りは手に持ったエロ本に命中しエロ本は蹴り砕かれ、紙吹雪になって散り、風に舞って飛んで行った。


「あっぶね――、危うく蹴り飛ばされる所だった……このペガサスはメスだったのか?」


「ねぇシンヤ、エロ本じゃ無理って思わなかったの」


「いや、オスならいけたはずだ」


「その自信はどこから来るんだよ」


 その二人の近くで、シンヤと同じエロ本を選択したハルトがペガサスに向かってエロ本を差し出していた。


「あの…渡したい物があるので受け取って貰えますか」


 まるで、ラブレターを差し出すかの様にエロ本を差し出したハルトの頭に、ペガサスは己の蹄を全力で叩き込んでいた。


 地面にめり込んだハルトからエロ本を奪い取ると、ペガサスはそれを噛み千切り、その場から去っていった。


「「………」」


 二人は無言でハルトの末路を眺め。


「よし、エロ本も無くなったことだし、違うやり方で挑戦してみるか」


 シンヤは気持ちを切り替えて、挑戦することにしたようだ。


「違うやり方って?」


「力ずくで乗りこなす」


 そう言うと、シンヤは近くにいたペガサスに飛び乗った。


 いきなり飛び乗られたペガサスは激しく暴れまわり、シンヤを振り落とそうとしているが、シンヤはしっかりと組みついて離れなかった。


「うわ!! 暴れているけど大丈夫シンヤ!?」


「任せろ!! この程度のロデオ、きっちり乗りこなして見せるぜ」


 ペガサスに跨ったシンヤは振り落とされない様にしていたが、上空から襲いかかった新たなペガサスに叩き落とされてしまった。


 そのペガサスは周りのペガサスより一回り大きい体格、漆黒の体毛に鬣や毛先が赤くなっているのが特徴のペガサスだった。そして、シンヤをじっと睨みつけていた。その燃える様な眼を見てシンヤは確信した。


(コイツは……強者の眼だ)


 シンヤは上着を脱ぎ棄てると、黒いペガサスに向き直り、真正面からぶつかった。


「って、シンヤなんで脱いでいるの!?」


「見て分からないのか、このペガサスが眼で語りかけてくるじゃないか、漢なら拳で語れっと」


「あっそう」


 見て分からなかったユウキは、黒いペガサスと殴り合いをしているシンヤを放置して、先程シンヤに襲われて疲弊しているペガサスに近づいていき、自分の持っている果物を与えていた。


「ごめんね、シンヤが迷惑をかけて」


 ペガサスもユウキが本気で謝罪していることが分かったのか、与えられた果物を拒むことなく受け取っていた。


「誰かはちゃんとテイムできているかな?」


 自分の持っている果物を周りのペガサスに与えつつ、ユウキは他のメンバーを気にしていた。




「中々上手くいきませんわね」


 ニンジン片手にフーカは途方に暮れていた。多くのペガサスは近づくだけで逃げていくし、何匹か餌を受け取ってくれた個体もいたが乗せてくれるほどなついてくれる個体もいなかった。


「そちらはどうですか」


 フーカがカオルとソースケがいる方を見ていみると二人は和やかにお茶をしていた。


「このお菓子もなかなか旨いな」


「やろ~~、私も食べてみて結構気に入ったんだ~~」


 ソースケは口一杯にマカロンを放り込んでおり、カオルはその様子をぼんやりと眺めながら紅茶を飲んでいた。


「貴方達、ココにはピクニックではなくペガサスをテイムしに来たんですわよ」


「そう言われても、俺のマンガ肉はもう骨だけになっているしな」


「私の用意したお菓子も受け取って貰えないし~」


 そう愚痴っている三人の下にギンガが戻ってきた。


「あら、ギンガさんどうでした?」


「…無理だった」


 どうやら、ギンガは手持ちの餌を使い果たしたようだ。


「ふぅ、モモさんが入手した情報より遥かに難しいですわね」


 フーカは、モモのいた方角に目を向けるとそこには、多くのペガサスに囲まれたモモがいた。


「モモさん、どうしたんですかそのペガサス達は!!」


「えへへ、モモの魅力に憑りつかれたペガサスだよ」


 自慢げにしているが、周りのペガサスは明らかに様子がおかしかった。まるで熱に浮かされているような様子をみせている。


「…モモ……何をしたの?」


 ギンガの問いにモモは香水瓶を見せた。


「これはね、チャームボトルっていうアイテムで中の液体を身体に振りかけると近くのモノを魅了することができる様になるんだよ」


「なるほど、それで周りのペガサス達を魅了していったのですわね」


 フーカがモモの手口に感心していると、周りのペガサスは魅了が解けたのか、先程までの熱に浮かされているような様子が消え、モモに熱のこもった視線を向けてきた。先程までの好意ではなく、余計なことをしたモモに対する純粋な怒りのこもった視線を。


「いたたた、えっ!? 何、もしかしてもうチャームボトルの効果が切れたの!!」


 モモは周囲のペガサスから一斉に襲いかかられていた。


「痛いよ、ちょっと髪を噛まないで―――」


「うわ~~いたそ~~」


「ちょっと、何のんびり観戦しているのですの!! 早く助けませんと」


「うっし、任せろ」


 ソースケがペガサスの群れに潜り込み、身を挺してモモの盾となり、モモを救出した。


「うう、ありがと~ソーに~さん」


 ペガサス達に襲われたモモは若干涙を流していた。


「しかし、これはもしかすると全滅しているかもしれませんわね」


 この場に居る誰もがペガサスのテイムに失敗している状況に、全員がテイム出来ていない可能性を考えていたフーカの頭上から声が掛かった。


「おーい、そっちの調子はどうだー」


 黒いペガサスに跨ったシンヤがフーカ達の前に降り立った。













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