第四十七話
ツェルマット周辺は空を飛ぶモンスターが多いようだ。道を歩くシンヤ達の見える範囲でも羽の生えた蛇がウネウネと身をくねらせながら空を飛んでいたり、その蛇を巨大なムササビの様なモンスターが捕食している光景が繰り広げられていた。他にも色鮮やかな綺麗な鳥が頭上を飛んでおり、それを見つけたユウキが皆に知らせるために指を指した。
「見て、あそこに綺麗な鳥が飛んでいるよ」
言われてそれを見上げたシンヤがポーチからアイテムを取り出し。
「そうだな、今夜はあれにするか」
シンヤがボーラを投擲した。
ボーラは4~6個の端に重りのついた細綱を纏めて結び付けた狩猟具で、それが風を切りながら飛んでいき、ユウキが指差した鳥に見事命中した。
「よし、当たった。モモ止め!」
「まっかせてー」
ボーラが絡みつき必死にもがきながら落ちている鳥に向かってモモは発砲し、止めをさした。
「うわ! うわぁぁぁぁ!!」
ユウキは自分が指差した綺麗な鳥が自分の仲間に容赦なく狩られていった光景に、ただわめくことしかできなくなっていた。
「よし! 今夜は唐揚げだな」
「やった! 今夜は焼き鳥だね」
抜群のコンビネーションで狩猟した二人を後ろからフーカがはたき倒した。
「いきなり何をやっているんですの!」
「何って今晩の晩飯を捕ったんだが」
シンヤの言う通り、ずっと移動を続けていたのでそろそろ日が暮れそうになっていた。このままではツェルマットに着くまでに完全に日が落ちてしまうだろう。
「調べた情報では、もうすぐに谷間の村に着くはずだよ~」
なので、捕った鳥は宿屋で調理してもらうことにして、シンヤ達は村に向かうとした。
「なぁハルト」
「どうした? シンヤ」
「谷間って聞くとオッパイしか思い浮かばないのは俺だけだろうか」
「……安心しろ自分もオッパイが思い浮かんだから」
そして、村に着くとシンヤ達は早速宿に入り、中の酒場で夕食を食べることにしていた。
「いや――、捕れたてだから一段とうまく感じるな――」
「……どうせ、データだから変わらないよ……」
鶏肉をかじりながら言ったシンヤの台詞に、ユウキはいじけた様に応えていた。
「そーいやー、思ったんだけどよ」
「どうしたソースケ?」
「餌付けをすればいいって情報だけど、ペガサスって何を食うんだ?」
ソースケは手に持った肉を見ながらそう言った。確かにペガサスなんてファンタジー生物の食生活なんてしらないよな。
「え~と、草?」(カオル)
「ニンジンかしら?」(フーカ)
「果物とかどうだろう?」(ユウキ)
三人の答えは一般的に考えられる答えだった。
「やっぱ、処女じゃないか?」
「待ってシンヤ、処女厨なのはペガサスではなく、ユニコーンなはずだ」
「違うのか! 似たようなモノだと思っていた」
「確かに両方とも白い馬をモデルにしているはずだけど、一緒だと考えるのは早いんじゃないだろうか」
ふざけているのは、シンヤとハルトの二人だった。
「えっとね、調べた情報だと、何でもいいらしいよ。その辺で探索して手に入れた木の実でテイムできた例もあるし、馬らしくニンジンでテイムできた例も、それに何も与えなくて撫でていただけでテイムできた例もあるらしいよ」
「…つまり、よく分かってないってことか」
「そうだね、一応餌付けをしたほうがテイムできる確率は高そうだよ」
「なら、ツェルマットについたら、まずは各自でペガサスの餌を調達することにするか」
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そして、シンヤ達は翌日に半日ほどかけてツェルマットに到着した。前日に話し合った通り、この日は買い物に当てることにして、各々が各自で行動し、その日は宿で休んだ。さらに、翌日になって。モモの案内でペガサスがいる高原までシンヤ達は歩いて行った。
「お~~、結構いるもんだな」
シンヤが言う通り、そこには探す必要が無いほどのペガサス達が自由に闊歩していた。
「ところでみんなは何を買ってきたんだ?」
シンヤにそう言われ、全員が一斉に自分が買ってきた物をみせた。
・リンゴなどの果物 (ユウキ)
・ニンジンなどの野菜 (フーカ)
・マカロンなどのお菓子( カオル)
・シリアルバー (ギンガ)
・香水? (モモ)
・マンガ肉 (ソースケ)
・エロ本 (ハルト)
・エロ本 (シンヤ)
「なっ! ネタが被っただと…」
エロ本ネタがハルトと被ってしまい、心底ショックを受けているフリをしているシンヤ。
「シンヤ…本当にエロ本でペガサスがテイムできると思っているの」
「オスならいけるんじゃないか」
「そうだねシンヤ、それに自分とネタが被ったと言うのには、早いんじゃないか。君のはリアルもので、自分のは二次物…ジャンルが違う」
「年齢制限でモザイクが掛かっているのによく内容が分かるね、それにペガサスにはジャンルなんて関係ないでしょ」
お互いのエロ本を見せ合っている二人を、冷めた目で見つめているユウキ。
「ねぇソースケさん、馬は草食だから肉は食べないのではないかしら」
「マジか!! いやーこのマンガ肉を見つけた時はこれしかないって思ったんだけどな」
そう言い、ソースケは自分でマンガ肉を食べ始めた。
「モモ…それ、香水?」
「ふっふっふ、これはモモ特製の香水で、これでペガサスたちをメロメロにしてあげるんだ」
そう言い、モモは怪しげに光る香水をギンガに見せていた。
そして、各々が自分が用意した物を使ってペガサスのテイムに挑戦した。




