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第三話




「ところでアッシュ、お前は馬小屋でなにしてるんだ。」


 俺は宿の部屋の中から、馬小屋で藁に包まっているアッシュをニヤニヤ眺めていた。


「うるせー! 宿がこんなに高いとは思わなかったんだよ!!」


 たしかに、最初の所持金が一万Gで宿の一泊の値段が千Gもするので。最初の村の宿の宿泊費がここまで高いとは思わないだろう。俺自身危うく馬小屋行きになるところだった。しかも、この宿食事代(300G)が別である。予想外の出費に明日は雑貨を少し買って装備は諦めようと思っている。


 ちなみにアッシュが馬小屋で休んでいる理由は、金がないからだそうだ。アッシュが持っているグレートソードも一万二千Gしたはずなので、今日狩った分のモンスターの素材も売った分でおそらくギリギリだったのだろう。夜の森の中では殆ど視界が確保できないので、狩に出て金を貯めることができずに仕方なく馬小屋で寝ることにしたらしい。


「しかし、武器にグレートソードを選ぶとはいいセンスしているな。」


 現実ではどう扱えばいいか困るほどの大きさを持つ武器でも、この世界ではアビリティやオーラを用入れば問題なく振るうことができ。巨大な武器を手にモンスターとロマン溢れる戦いを繰り広げることもできる。


「だろう、武器屋でこいつを見たとき一目でこいつを相棒にすることに決めたんだ。見てろ、俺はこのグレートソード手にこの世界で一目置かれるプレイヤーに登りつめて見せるぜ」


 アッシュは金がなくて馬小屋で寝ている人間とは思えないほど自信に満ち溢れた表情でこれからの野望を俺に語ってくれた。


 そして、俺は馬小屋で自信満々のアッシュを見て、思わず吹き出してしまわないように必死に耐えていた。


(だめだ、まだ笑う時ではない、もっとネタを引き出せ)


 ・・・二人の夜はまだしばらく続きそうだ。


 夜が明け朝になると俺はベットから飛び起きた。チラリと窓の外を見てみるとすでにアッシュは狩に出発したようで馬小屋はもぬけのからであった。俺は軽く体をほぐし、宿に併設されている酒場に向かった。


「すいません、朝食をとりたいんですけど」


「あいよ、泊まってくれたお客さんだからサービスで二百Gでいいよ」


 そう言い、店員は俺の前にパン、ウィンナー、サラダ、スープで構成された食事をもってきた。味は安いだけあってそこまでうまくはなかったが腹は十分に膨れた。


 食べ終わり、俺は店員に「ごちそうさん」と告げ、代金を払い冒険に出発した。


森を駆けまわりモンスターを狩っていると、俺はこの周辺で一番強いといわれるリザードマンと対じした。リザードマンは粗末な剣と鎧を装備していて俺の事を敵だと認めたのか雄たけびを上げつつに襲いかかっってきた。


「ふん、やる気満々じゃねえか、いくぜ!」


 同時に俺も一気にオーラを全身にみなぎらせ、戦闘状態に体を移行した。昨日は始めたばかりで興奮していたから気付かなかったが、ただ全身にオーラを纏わせている状態でもそれなりの量のオーラを消耗していくようだ。なので、オーラは基本的に戦闘になったら纏うようにしないとすぐに無くなってしまう。


 ガキン!!


 お互いに、剣戟を交し合い森に激しい金属音が鳴り響いた。しばらくの間何度も打ち合い、このまま剣戟の音が鳴り響くかと思われたが金属音はすぐに鳴りやむことになった。


「ふ~~、やっぱり最初らへんの敵だとだとパターンが単純だな。もういいや、大体動きは見切った」


 俺はリザードマンにそう告げると、言葉道理リザードマンの攻撃をヒラリとかわしてすれ違いざまに一撃を叩き込んだ。


 綺麗に刻まれた斬撃ではあったが、初期装備を攻撃力の低さもあって。リザードマンに致命傷を与えることはできなかった。しかし、ノーダメージというわけではなく。切られた場所は赤い血しぶきのようなエフェクトが表示されていた。


 切られたことに対する怒りなのかリザードマンはがむしゃらに襲いかかってきたが、俺は冷静に相手の動きをみて、正確に対処し、攻撃を叩き込んでいた。


 見る人がいれば、リザードマンはただ剣を力任せに振るっているだけなのに対して、シンヤの動きはまさに武術として修練を重ねられたものであることに気付くだろう。


「これで終わりだ《パワースラッシュ》」


 俺がアビリティ【剣術Ⅰ】で取得したスキル《パワースラッシュ》を使い、その一撃をまともに受けたリザードマンはその命を散らした。


「ふ~、一対一ならそこまで強くはないがこの剣では少し硬すぎるな」


 実際に、俺にダメージはなく戦いにかかった時間も殆ど攻撃を当て続ける時間であった。これまでの戦闘で装備を買うには十分な金になる素材は溜まっていると判断し、この攻撃力不足の問題を解決するために俺は村に一度戻ることにした。


 そして、 村に戻ってる最中に俺は誰かの悲鳴をきいた。


「ぐぁぁっぁぁ」


「っなんだ!」


 悲鳴の聞こえたほうに向かうとそこにはアッシュが3匹のリザードマンに襲いかかられていた。


 アッシュの動きはそこまで悪くはなかったが、しかし、リザードマンは3匹いてアッシュの獲物は巨大なグレートソードであり、どうしても攻撃すれば大きな隙ができてしまい。リザードマンたちに後れを取ってしまっていた。


 それに気づいた俺はすぐにアッシュを助けるべく駆け出したが。アッシュが一体のリザードマンの止めを刺した瞬間に別のリザードマンが背後から襲いかかりアッシュに致命傷を与えていった。


「アッシュ!」


 その声を聞き、アッシュは最後の力を振り絞りシンヤの足元にグレートソードを投げ、最後に悔しそうに呟いた。


「っち、どうやら俺はここまでのようだ。そいつはお前にやる、だからお前まで死ぬんじゃねえぞ」


 死亡し光の粒になっていくアッシュを隣で残りのリザードマンがシンヤを新たな獲物と見定めて襲いかかった。


 俺はすばやく足元のグレートソードを拾うとリザードマンに立ち向かった。リザードマンの動きは先程の戦いで覚えており。紙一重で攻撃を避けつつ、グレートソードの一撃を叩き込んだ。グレートソードは武器のカテゴリは大剣であり、その力を引き出すには【大剣術】のアビリティが必要だ。俺は【大剣術】アビリティはもっておらず補正もないが超重量武器であるグレートソードの一撃は凄まじく、一撃でリザードマンを倒すことができた。


 しかし、残ったもう一匹のリザードマンが超重量武器を振り回したことによる隙を突こうと俺におそいかかった。それに対する、俺の行動は武器を手放すことだった。

 俺の手から離れ、武器は明後日の方向に飛んでいったが。俺はすばやく態勢を立て直すことに成功した。


 リザードマンは武器をもっていない俺を見て、好機と判断し力任せの一撃を放ち、俺にあっさりと躱され、その顔面にカウンターの拳による一撃がめり込んだ。その威力に鱗が吹き飛びリザードマンの視界がぐわんぐわんと揺れて、地面に倒れ伏した。


 そう、俺は【大剣術】のアビリティこそもっていないが【格闘術】のアビリティはもっていたのである。


 倒れたリザードマンに止めを刺すと。俺はグレートソードを拾い、アッシュがいたところにこう呟いた。


「アッシュ、こいつは有難くもらっていくぜ」


 そして、俺は村に帰り雑貨屋で素材を売り。次に向かった鍛冶屋でこう言った。


「すいませ~ん、こいつ売りたいんですけど」


 俺の手にはアッシュの形見のグレートソードが握られていた。


(悪いな、アッシュこいつは重くて使いづらいわ)


・・・アッシュの形見は三千Gで売れた。


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