第三十四話
俺たちがギルドに入って何かいい依頼がないか探していると、一人の男が話しかけてきた。
「すみません、もしかして依頼を探しているのですか」
「ああ、そうだが」
「もしよろしければ、私の依頼を受けてはもらえないでしょうか」
「どんな内容だ?」
「護衛です」
どうやらこの男は解放された坑道の奥に行きたいようだ。ただ、自分には戦闘能力がないので護衛の冒険者を探しているようだ。ついでに同じ目的の生産職を誘っているらしく護衛する人数も少し多くなるようだ、だから俺たちだけでなくもう少し人数が増えるようだ。
「どうする?」
「まぁ暇だからいいんじゃないか」
「じゃあ受けるってことだな、しゃー腕が鳴るぜ!!」
こうして、依頼を受けることに決めた俺たちは坑道前に集合らしいので、準備を整えてから行動にに向かった。そして、坑道前で思いもよらない出会いがあった。
「なっ!! お前はアッシュ!! お前もこっちに来ていたのか」
「久しぶりだな、シンヤ」
壁に背を預け、腕を組み格好をつけいてるアッシュはこちらの姿を見るとそう答えた。
「お前・・・なんで首輪をつけているんだ?」
アッシュの首には人間がファッションとしてつけるには少々無骨すぎる鍵付きの首輪が付けられていた。それについて聞いてみると、隣にいたメグが理由を説明してくれた。
「コイツの趣味よ。好きにさせてやりなさい」
「・・・そうか(かわいそうな物を見る目)」
人の趣味は色々あるが、首輪プレイとか・・・コイツは美少女に飼われたい願望でもあるのだろうか。
「そんなわけあるかーーー!! てか、これはお前が付けたんだろうがメグ!! 鍵をくれればすぐに外しているよ」
どうやら、首輪の鍵はメグが持っているようだ。
「うるさいわねー、隣で怒鳴らないでくれる・・・この駄犬」
二人がまたギャーギャー騒いでいるとハルトが二人の事を聞いていた。俺がこれまでの事を説明するとハルトはアッシュの事を親の仇でも見るような目になった。
「ハハ、美少女の幼馴染がいて一緒にプレイだと・・・畜生!! こういうゲームはもてない男が女の事仲良くなれるかもしれないって微かな希望を抱きながらやるものだろうが、なんで美少女幼馴染を仮想世界まで連れてきているんだよ。自分の幼馴染は男のバカ二人なのに、コイツだけ違うゲームになっていないか運営に問いただしてみたい」
ハルトがアッシュに向かって悪態をついていると街の方から三人の女の子が歩いてきた。
「お~いお二人さん、また喧嘩しているの」
まずは弓を装備しているアーチャーの子、茶色の髪を軽くまとめており、人の好さそうな笑みを二人に向けている子の名はイリス。
「はぁ、ほんとよくやるね二人とも」
呆れた感じで二人を見ているのは、燃えるような紅い髪をしており、巨大なバトルアックスを背負っている子の名はカーミラ。
「あらあら、いいじゃないですか、喧嘩するほど仲がいいって言いますから」
最後に、緑の髪でおっとりとした雰囲気を出しており、重厚な鎧に大楯に突撃槍という、明らかなタンク装備をしている子の名はナタリア。
どの子も無茶苦茶可愛い女の子だった。どうやらアッシュのパーティーメンバーの様で二人の喧嘩をいつもの事の様にみている。
「ハハハ、何だよ……このハーレムパーティーは何・・・自分たちと同じゲームをしているつもりだけど、コイツだけホントはギャルゲーをプレイしているんじゃないの……どうすればそっちに行ける! こうか! どうか自分もそっちに連れていってくれ!!」
虚空に向かってルパンダイブしているこの変態を見ながら思うことは・・・別に行ったとしてもコイツではモブキャラが精々だろう。なんというか一発ネタキャラとしてなら運用されそうだ。
取りあえず、簡単な自己紹介を済ませたら、依頼人の三人の男たちがやってきた。
「どうやら来てくださったようですね。もう一度自己紹介しましょうか、私の名前はサブローです。こっちが今回同行することになった、ヤシマさんとアンドレさんです。依頼はこの間解放された坑道奥の道中の護衛です。護衛中に倒したモンスターの素材は皆様で分け合って貰っても構いません、こっちは探索中に採掘をするかもしれませんからその間は採掘に夢中になっているかもしれないのでモンスターに襲われない様に特に警戒して護衛をしてもらってもかまいませんか」
「構わないが、少しいいか」
「何でしょうか?」
「採掘した鉱石を少し分けて貰うことは可能か」
俺はこの街に新しい武器を作ってもらいに来たから、採掘した中に未知の鉱石が在ったら、現在工房にこもっているギンガにプレゼントしたらより良い武器ができるかもしれないし、ぜひ欲しい。
「そうですね・・・その時は倒したモンスターの素材と交換というのはどうでしょうか。何が取れるのかはまだよく分かっていませんので、その時に相談して決めましょう」
「OK、それで問題ない」
「それでは、皆さん参りましょうか」
こうして、俺たちは再び坑道の奥に向けて進んでいった。




