第二十九話
俺たちは四人は坑道の中を順調に進んでいった。坑道は意外と道幅があり、途中で出るモンスターとの戦闘でも特に問題が無いくらい広かった。
「チェェェァァァ!!」
そして、ギンガも生産職の割にはかなり強く、今も現れたロックリザードを気合を込めた一撃で叩き割っていた。
「すご~~い、ギンちゃん強いね~~」
「ん・・・この坑道にはよく掘りに来る・・・だからここのモンスターにはなれてる」
だからギンガは重量のある大剣を武器を選んでいるのか、ここのモンスターは硬くて遅いのが多いみたいだから、重量のある武器の方が相性がいいだろう、俺の武器は刀なので甲殻の隙間など防御の薄い場所を攻撃するか、オーラを多めに込めた一撃を叩きこんでいるがユウキは剣でうまくダメージを与えられないので主に魔法で戦っていた。ついでにモモは見学している・・・ただ。
「なぁギンガ、ここのモンスターなら大剣よりもハンマーとかの方が良くないか?」
「・・・剣の方がカッコイイ」
「なるほど、確かに効率よりの見た目の方が大事だよな」
うむ、カッコイイは正義!
坑道をギンガの案内で奥に向かって進んでいると、なぜかドンドン暑くなってきた。
「・・・なんか、暑くないか?」
「そうだね、少し汗ばむくらいの温度になってきているね」
「この先、マグマが流れてる・・・だからもっと暑くなる」
マジか、何も対策してないぞ。
「モモ、何か暑さを防ぐアイテムは無いか」
そう、ドリンク的な何かとか。
「ごめんシンに~さん、エレウシスでは需要がなかったから作ってないよ」
確かに、エレウシスは初夏の様な心地よい気温だったから温度調節アイテムがあっても売れないよな。
「しょうがない、今回は我慢するか」
そして、俺たちは奥に向かって進んでいったが、ギンガが言った通り進めば進むほど気温が上がっていき汗ばむ程度から汗が滝の様に浮き出るくらいの気温まで上昇していった。その余りの暑さに俺は既に服を脱いで上半身裸の状態で進んでいた。
「クソアチーな、なんでギンガは耐えられるんだ?」
ギンガの恰好は確かに俺たちの装備より覆う面積が少なかったが、気温が上がった今も軽く汗が出ている程度で俺たちより平気そうだ。
「・・・工房にこもっていれば、【耐熱】のアビリティが手に入る」
なるほど、工房の中もここと同じように扱ったもんな、だから【耐熱】アビリティで暑さに強くなっているのか。
隣で歩いているユウキとモモがつらそうにしている。特にモモの服装はフリル満点のゴスロリ服だから特に暑そうだ。
「う~~~、もう我慢できない・・・脱ぐ!!」
そう言い、モモは自分の服に手を付けた。
「ちょっと!! モモちゃん何してるの!!」
いきなり、脱ぎだしたモモをユウキは止めようとした。
「いいじゃねえかユウキ、いっそのことお前も俺みたいに脱いでしまえば」
ドゴッ!!
「シンヤは黙って、後ろを向いていて!!」
ユウキに蹴り飛ばされ、強引に体の向きを変えられた俺はしばらく背後でゴソゴソやっている音を聞きながら待っていた。
「も~い~よ~、どうかなシンに~さん、このモモちゃんクールビス形態」
終わったようなので、後ろを振り向くとそこには、服を大胆に改造したモモの姿があった。暑そうなゴスロリ服が上はフリルがあしらわれたキャミソールのようなものに改造され、なぜか二の腕が丸出しで肘から先だけ袖が残っていた。下のスカートは限界まで短くして少し派手に動いたら下着が見えそうな感じになっていた。
「お~~大胆にいじったな」
「ねぇモモちゃん、今度ボクと貞淑さについて話し合わない」
モモの露出の多い格好に納得ができていないのかユウキはそんなことを言っていた。ただ、後ろを向いている間にユウキの服装を大分ラフな感じになっていた。
「うう、大丈夫かなこれから何人ものプレイヤーを追い返したボスと戦うのに、向かっているだけでドンドン装備が薄くなっていってるよ。ねぇシンヤ、いったん引き返した方がいいんじゃないかな」
「ユウキは心配性だな、だけど見ろ! おそらく目的地に着いたぞ」
俺の目の前にマグマで出来た川があり、向う岸まで渡れるように石の足場が転々とあった。ただ、川の中央付近に強大な円形の中州があり、明らかにそこはボスと戦うために用意されたリングだった。
「姿は見えないが、あの中州に着いたらボス戦だろうな」
「・・・やっぱり行くんだよね、シンヤ」
色々諦めた感じのユウキと他の二人を連れて、中州まで渡っていった。そして、中州に着くと地震の様な揺れが起き、マグマの中からモンスターが飛び出してきた。
名はラーヴァデーモン・ヴァルメーガ。その姿は強大な棍棒を携え、曲がりくねった角をもち、灼熱の溶岩を身にまとった悪魔であった。




