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第二話




「っち! ふざけんな~~~!!」


 俺の目の前に2~30匹のモンスターがいる光景に、思わずそう叫んだ。


 2~3匹なら今の俺でも問題なく相手にできるが、流石にその十倍に迫る数の群れでは勝ち目がないことがわかってしまう。すぐに逃げようと先程のように足にオーラを込めようとしたが、体に疲労感がありオーラがあまり残っていないことが分かった。


「畜生! 実験でオーラを使いすぎたか」


 俺が先程までの行動を悔やんでいたら、モンスターたちはむしろ好機だといわんばかりによってたかって俺に襲いかかってきた。


(あ~~、これは死んだな)


 襲いかかってくるモンスターに囲まれて、ゲーム開始早々に死ぬことを覚悟したが、森の奥から二人の男が飛び出してきた。


「手を貸すぜ、小僧!!」


 そう叫び、モンスターの群れの中に突っ込んできたのは、両腕に重厚な手甲を着けモンスターを殴りつける、立派なリーゼントをしたおっさん、バンチョウと俺と同じ初期装備でモンスターに戦いを挑む灰色の髪をしたツンツン頭の男アッシュだった。


 バンチョウ達と共にモンスターと戦い始めると、先程の苦戦が嘘のように敵を倒せ始めた。俺も道場に通っていることもありそれなりに戦えると思っていたが、バンチョウは装備からして俺よりも早く開始していたようでここら辺のモンスターでは相手にならず、目の前のモンスター達を素早く殲滅していった。


 しばらくしてモンスターを倒し終わり、ようやく俺たちは挨拶をした。


「さっきは助かった、俺はシンヤだ。よろしくたのむ」


「おう! 俺はバンチョウだ、こっちのツンツン頭の小僧はアッシュだ。しかし、なんであんなにモンスターに囲まれる状況になったんだ?」


 バンチョウの疑問に対して俺はここまでの経緯を話した。


「いや~、初めてのVRゲームでテンションが上がって森の中を駆け抜けていたら、いきなりモンスターの群れに出くわしたんだ」


「あ~、おそらく誰かが襲われたモンスターから逃げて次々とモンスターをかき集めてから、ここで倒されてしまったところで、モンスターが解散する前にシンヤがこの場所に飛び込んだんだな」


 俺の返答を聞き、疑問が晴れた感じでバンチョウは答えた。


 それを横で聞いていたアッシュは、俺の事をあざ笑っているかのようだった。


「うっかり、モンスターの群れの中に飛び込むとはマヌケなやつだな」


「悪かったな、マヌケな行動をして。そういうアッシュ、お前は何だよ、バンチョウのパーティーメンバーか?それにしては装備が俺と同じ初期装備にみえるんだが」


 俺が、ムッとしつつ答えるとバンチョウは笑いながら


「いや~、こいつもお前と負けず劣らずのマヌケっぷりを披露しているぜ。うっかり、コンパスを無くして村の方角がわからなくなって途方に暮れているところを俺が偶々みつけたんだ」


「なんだ、お前は迷子か」


「迷子じゃねえ、偶々コンパスで村の方角を確認している時に、モンスターに襲われたんだ。うっかりコンパスを手放してしまってもしょうがないだろうが」


 俺とアッシュがしょうもない言い争いをしているとバンチョウが間に入って二人を宥めた。


「ほら、二人とも村まで案内してやるからついてきな。あとアッシュ、コンパスは村の雑貨屋に安く売られているから気にしなくていいぞ」


 そう言いつつ、バンチョウは先頭に立って歩き始めた。


 しばらく森の中をバンチョウの案内で歩き、日も暮れ始めた時間にようやく俺たちは森の切り開かれた場所に作られた村についた。俺は、村の入り口から中を見回してみてふっと疑問に思ったことをバンチョウに聞いてみた。


「いや~、ようやくついたか。ただ、何かプレイヤーの数が少なくないか」


 村の中には村人(NPC)は結構いるが、プレイヤーは十人に満たない人数しか確認できなかった。さすがに、夜の中で森を探索する奴はまだ余りいないだろうから、この少なさは目立ってみえた。


「ああ、このゲームは最初に選択できるスタート地点が結構あるから人数がばらけるし、最初に到着したプレイヤーは早々に都市を目指して出発しているぞ」


 バンチョウに詳しく聞いてみると。プレイヤーは最初に選択した都市の近くの村に飛ばされるようで、この村はチュートリアルの要素が強いみたいだ。この村にも、鍛冶屋に雑貨屋など必要最低限の要素はあるが質は低く、都市に向かったほうが効率的にプレイすることができるのでほとんどのプレイヤーは都市に向かっていったそうだ。


「ところで、シンヤとアッシュはこれからどうするんだ。俺は日が明けたら都市に向かって出発するつもりなんだが一緒に来るか」


 バンチョウの問いに対して俺とアッシュは、少し考えた後に答えた。


「いや、俺はしばらくこの村にとどまって修行する、この村の周りのモンスターは弱いからオーラを使った戦闘になれるのには丁度いいと思うからな」


「俺もこの村に残るとするか。おいシンヤ、修行はいいがまたうっかりモンスターに囲まれて死ぬんじゃねえぞ。このゲームはデスペナルティがきついからな」


「お前こそ、うっかりコンパスを落として迷子になるんじゃねえぞ」


「「やんのか、コラ」」


 今確信した、こいつとは馬が合わない。


「ハッハッハ、お前ら、仲がいいな~。まぁ、残るのはいいが森の奥の湖には気を付けろよ、あそこはリザードマンの住処になっているから。ここら辺ではリザードマンが一番の強敵だから、さすがに複数匹に囲まれるとかなりきついぜ。」


 そう言い残しバンチョウは去り、俺とアッシュは仲良しのサイン(片方は中指を上に、片方は親指を下に)をして解散した。


 解散した後、俺は村の中を見て回ることにした。雑貨屋は見た目は小ぢんまりとした店だが中は傷薬や携帯食料さらには衣服いたるまで様々なものが押し込まれていた・・・なんか田舎にあるミニ百貨店みたいな店だな。ほかに店がないから一つの店に取りあえずまとめてみました感がする。


 次に鍛冶屋に向かってみた。鍛冶屋には武器と防具と農具が所狭しと並んでいた。武器は鉄製の武器しかなかったが、種類だけは豊富にあった。剣だけどもロングソード、ブロードソード、バスタードソード果てはトゥヴァイハンダーという大剣までそろっていた。剣以外では槍、斧、ハンマーみたいな定番ものから、鞭やハルベルト、それから死神がもっていそうな大鎌までそろっていた・・・よくこんな田舎の店でこんな種類を集めたな。


 ちなみに、俺がこの武器の中で一番心が惹かれたものは・・・刀!! やっぱり、日本人は刀をもたなくてはな、侍の血が騒ぐぜ!


 ただ、問題が一つある。それは値段だ、この刀値段が一万二千Gもする、一応ここまで来るまでに狩ったモンスターの素材が三千で売れたが冒険者のおっさんから貰ったお金と合わせてい一万三千・・・一応足りるが、他にも欲しい雑貨と宿代を含めれば微妙な値段である。取りあえず刀は後に回して宿でも取るか。


 そして俺は宿屋を探して歩き始めた。なぜ、宿屋に行くかというと、このゲームではよくわからないすごい技術で、内部の一日が現実では一時間でしかなく、当然一日以上ゲームの中にいることができる。

 たとえ、ゲームの中とはいえ一日以上過ごす上で現実との齟齬をなくすために、お腹もすくし眠くもなる。だから、きちんと食事と睡眠をとらなくてはならない。


「さてと、やどや~、やどや~」


 俺が宿屋らしき建物を見つけてその近くの馬小屋の前を通ると、中でアッシュが先程までもっていなかったグレートソードを携え馬小屋の藁を整えていた。すると、アッシュが通りかかったシンヤのことに気付いた。


「「・・・・・」」


 お互いに無言で見つめあったあと、俺はそのまま宿の入り口に向かった。


「すいませ~ん、馬小屋の様子がよく見える部屋は空いてませんか~」


「いい度胸だな!てめー!」


 アッシュの叫びが馬小屋に響いた。



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