第二十五話
俺は森の中で大量の剣を持つ、密猟者・アサドと斬り合っていた。こいつは大量に剣を持っている癖に手に持てる分しか使ってこない・・・てっきり剣を飛ばしてくるかと思ったんだが。
そう思っている間に、こいつは大量に剣を背負っているせいで動きが鈍くなる時があり、その隙に斬りつけてやった。
「グッ! 中々やるじゃねぇか小僧」
俺に斬られたアサドがそう言ったが、コイツ弱いな~としか思わなかった。奇抜な姿を見てユニークスキル持ちだと思ったんだが・・・これならユウキに任せた豹頭の獣人の方を俺が受け持てばよかったか?
「しゃ~ない、さっさと倒して、ユウキの加勢に向かうか」
俺がすでにアサドを倒したと時のことを考えていると、アサドは不敵な笑みを浮かべ何やらアイテムを取り出した。
「あ~、なんでもう俺を倒した気になっていやがる!!」
「・・・肉? 肉なんて何に使うんだ? 今から焼いて食う気か?」
アサドは取り出したのは食い応えがありそうな大きな肉で、その肉を地面に投げ捨て自分が持つ剣を突き刺した。
「何勘違いしてやがる。今から食われるのはお前の方だよ」
「ん? ・・・へぇ」
すると、見る見るうちに突き刺した剣が獣に変わっていった。
「わかるか、これが俺のユニークスキル『剣闘獣』だ」
「ようやく使ってきたか」
それでこそ、ワクワクする戦いをできる。
「さぁ、食い散らかせ『剣闘獣』!!」
アサドの号令と共に獣たちが俺に襲いかかってきた。飛びかかってきた一匹を刀で斬りつけたが返ってきたのは金属音だった。
キンッ!!
まるで本物の剣とぶつけ合ったみたいな音がして、獣自身の体にも刃は食い込んでおらず、吹き飛ばすことができたが、獣はすぐに体制を立て直し、再び俺に向かってきた。
もちろん、その一匹だけでなくほかにも『剣闘獣』で作られた獣が俺に襲いかかってきており、慌てて回避すると獣は俺の後ろにあった木に当たり・・・その木を両断した。
「・・・どうやら、見た目が獣なだけで本質は剣のままなようだな」
猟犬の如く、俺の周囲を駆けまわり襲いかかってくる獣は厄介の一言で、刀で斬りかかてっも殆ど効果がない・・・だからこそ、俺は獣たちを無視してアサド本人を斬ることにした。
そして、獣の包囲網に隙間が生まれて瞬間、俺はアサドに向かって駆け出した。最短距離で間合いを詰める俺をアサドは笑ってみていた。
「バカが、あっさり俺の誘いに乗りやがって」
アサドがそう告げた瞬間、木の上や足元の落ち葉の中から、ネズミとイヌを足したような小さな獣が俺に襲いかかった。
予想もしない奇襲に俺は対処することができず、体のあちこちに食いつかれてしまった。おそらくナイフのような小さな刃物を『剣闘獣』で獣にしたものだろう。今のところ致命傷には程遠いが、小さな獣たちは自らの意思で俺の体に食い込んでいきドンドン傷を広げていった。
このままでは不味い!! そう思い、手で引きはがそうとするがこいつらは俺の体にしっかりと食らいついていて中々引きはがせないでいた。そうしている間にも他の獣が俺に向かって襲いかかってきた。
「なら・・・かぁぁぁぁ!!」
俺は咆哮と共に身体から全力でオーラを放出した。
放出されたオーラは衝撃波を生み出し、食いついていた獣や飛びかかってきた獣たちを吹き飛ばした。
「ぜぇ・・・はぁ・・・どうだ!!」
うまく獣たちを払いのけることに成功したが、消耗が激しすぎる・・・もう、同じことはできそうにないな。
「クックック、そんな満身創痍な状態で意気がられても、怖くもなんともないぞ」
確かに、今の状況はやばいが・・・打てる手は既に思いついていた。
(ただ・・・できれば余り気が乗らないんだよな)
しかし、他に逆転の手が思いつかず、結局使うことにした・・・アイテムポーチから取り出したのはユウキが昔、俺のアイテムポーチに突っ込んだスティンクミストというアイテム、その効果は・・・
「ぐわぁ!! てめぇーなんて匂いを発していやがる!!」
ギャー―!! 想像以上にくせぇぇぇぇ!! しかも自分の体に振りかけたから匂いが体から離れない!!
しかし、匂いの分だけ効果はてきめんでさっきまで元気に襲いかかってきた獣たちは(うわぁ!! コイツくせぇぇぇ)って感じで遠巻きにこっちを眺めるだけになっていた。
「・・・よし・・・これで獣たちは封じたぞ・・・」
若干、涙目になりながら俺はアサドに向かって駆け出した・・・このやるせない気持ちは全てアサドにぶつける気で。
「くっそ!! まだだ・・・いけ!!」
アサドの号令で再び木の上から小さな獣が飛びかかってきたが・・・俺の体に当たると同時に泡を吹いて気絶した・・・
「なんだと!! このガキどんだけ臭いんだよ・・・このクソガキが!!」
「うっせ!!!」
俺の色んな意味で怒りが込められた一撃がアサドを打ち据えた。




