第二十一話
「おはようシンヤ、あれ? どうしたのこんな所で刀を眺めて?」
俺が宿の食堂で刀を抜いて眺めている姿にユウキがどうしたのか聞いてきた。
「ああ、そろそろ刀を買い換えたいな~~っと思ってな」
エメラ・ントゥカやカルバンにオンブラっと様々な敵と戦ってきた相棒だったが、金も貯まってきたし、より難易度が高い依頼を受けるとなると店売りの鋼鉄の刀では攻撃力不足に陥ることになるかもしれないので、買い換えたいと思ってきだした。
「ふ~ん、店売りの刀じゃ不満になってきたの? なら、オーダーメイド品を作ってもらうの?」
ちなみに、このゲームの武器製作は素材によって能力が大きく変わる。
まずは、鉱石だけで製作する場合は、鍛冶師の腕と使う鉱石によって能力が変わり、武器自体の基本能力が高くなりやすい。つまり、刀なら硬くて切れ味のいいのができやすい。
次に、魔物の素材だけを使用した場合、使った魔物の素材によって能力が大きく変わる。オーラを込めたらその力を増強したり、マナを込めただけで属性を変換したりと様々な効果をもつ装備ができる。反面、使える素材が限られていたり、基本能力は鍛えたりできないので低くなりやすい。
最後にハイブリットとよばれる、魔物素材と鉱石を併用する場合。これはまず、鉱石で素体を作り、スキルで魔物の素材と融合させる手法がとられているようだが。素材と鉱石の相性が良くないとできず、鍛冶師の腕もかなり要求されるようだが。上記の両方の特性を持った武器を作ることができる。
「やっぱりシンヤはハイブリットを目指すの?」
「当然! だから移動するぞ」
ハイブリットは当然簡単には入手できない。様々な素材をかき集め、使う素材と見合う腕を持つ鍛冶屋が必要だ。だからこそエレウシスではなく鍛冶師たちの本場と言われているらしい鉱山都市『フェラーラ』に移動しようとユウキに持ち掛けた。ユウキも承諾し、俺たちは旅の準備をするために街にくりだした。
「それで何で移動する?」
このエレウシスからフェラーラに行く方法は三つある。まずは徒歩、時間はかかるが金はかからない。次に馬車に乗っていく、時間はそこそこで金もそこそこかかる。最後にどの都市にもあるゲートを使う、ゲートは巨大な門でくぐると任意の都市の門まで移動することができるよくある移動用のギミックだ。向うにつくのは一瞬だが滅茶苦茶高い。この中で俺が選ぶのは・・・
「当然、徒歩だな。急ぐ旅でもないしのんびり観光しながら行こうぜ」
「なら、食料と薬と消耗品を結構買い込まないといけないね」
「ついでにこの街でお世話になった人にも挨拶しないとな」
予定を決め、商業区に向かった俺たちはまずトリンブル武具店って向かった。イーデンのおっさんにはカルバンとの戦いの後も色々と世話になっていた。冒険者として指名依頼を受け、その時、報酬として冒険に役立ちそうな物を貰ったり。商人特有の情報網で様々な情報をもらうこともできた。
「なるほど、確かにシンヤ君ほどの腕前ではもっといい武器を欲しいと思う頃でしょう・・・どれ、少々お待ちください」
おっさんはいったん奥の部屋に引っ込み、しばらくして一枚の書状を持ってきた。
「これは、うちと懇意にさせてもらっている工房への紹介状です。フェラーラでも有名な工房なのできっと腕の立つ鍛冶師が見つかるでしょう」
イーデンのおっさんから紹介状をもらうことができ。俺たちは次の場所に向かった。
「なんだ、この街から出ていくのか、お前ら」
運よく、バンチョウを捕まえることができたので、俺たちはこの街から出ていくことを告げた。
「確かに、俺自身、もっといい手甲が欲しいと思うことがあるが、今はクランを立ち上げたばかりだからここから移動するわけにはいかないからな」
バンチョウが立ち上げたクランは、様々な人材を幅広く受け入れており、余り育っていないプレイヤーも所属しており、比較的モンスターの弱いエレウシスから動くことができないんだろう。
「まぁ、いつかはまた会うだろう。その時はまた、一緒に冒険しようじゃねぇか」
バンチョウと別れた後、俺たちは商業区でモモを探した。なんだかんだであのちびっこはエレウシスで一番世話になったし、きちんと挨拶しないとな。
「あれ、シンに~さん達どうしたの?」
ようやく露店を広げているモモを見つけ、フェラーラまで移動することを告げた。
「えっ! シンに~さん達フェラーラまでいくの! モモも連れて行って」
「別に構わないが、あそこは鉱石の名産地だぞ。錬金術師のモモが必要とするものがあるのか?」
「もちろん、火薬を作るための材料とか色々鉱石も必要なんだよ」
そういうわけでモモも入れた三人で移動することになった。
「それじゃ~モモも準備しないといけないからちょっと待っててね。準備が終わったら時計塔に集合で」
モモが準備をしにどこかに行ったあと、俺たちは買い物をするために引き続き商業区をブラブラしていた。
「ん? なんだあの行列は」
露店の一つに行列ができているのに気づいた俺たちは覗いてみることにした。近づいてみるとそこから漂って来る匂いで行列を作っている正体がわかった。
「む・・・この匂いは味噌汁!」
マジか、この世界にもやっぱり味噌があったのか、しかし、エレウシスでは手に入らないっと思っていたが手に入れることができるならぜひ欲しいな。
「ホントだ、お味噌の匂いだね。どこに売っていたんだろう」
列が進んでいき自分たちの番になった時、愕然とした。なんと味噌汁一杯の値段が三千Gもした。
「おい店主! この値段はぼったくりすぎじゃないか」
「みんなそう言うが、この味噌は旅商人から買ったものだから高かったし、今度はいつ手に入るかわからないんだよ」
旅商人について聞いてみると、街から街まで歩きまわっており、その街で買えないものも買うことができるが、商品はランダムでいつ会えるかもわからないキャラらしい・・・畜生、俺も味噌が欲しかったな。
あと、味噌汁は買いました。




