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第一話



 俺が気が付くと日本では見ないような深い森の中にいた。その景色を見て、ようやく始まったかと思いながら周囲を見回した。


「おかしいな、きちんと都市を選択したつもりなのだが・・・何もないな」


 そう、呟いたとおりに周囲は木しかなく、仕方くなく自分の持ち物を確認してみることにした。制服を調べてみるとポケットの中から見たことのない携帯と財布が出てきた。携帯は電池が切れているのか全く動かなかったが、財布には5000円も入っていた・・・現実の財布より多く入っていたことに少しへこんだ。


「しかし、これからどうすればいいんだ?」


 見渡す限り木しかなく、どの方向に進めばいいのかわからないので、取りあえず高そうな木に登ってみようかと思っていたら、森の奥から奇声を上げつつモンスターが飛び出してきた。緑の皮膚に人の胸くらいの大きさで手には錆びたナイフを持っていた。


「典型的なゴブリンだな」


 俺は体の内側からオーラを引き出し全身に纏わせた。オーラが体に巡ると同時に、体が温まり力がみなぎってきた。すると、視界の端にヘルプが表示された。


『人物やモンスターの頭上を注視すると名前が表示されます。プレイヤーは青、NPCは緑、犯罪プレイヤーはオレンジ、モンスターは赤で表示されます』


 ヘルプの通りモンスターの頭上を注視してみると赤でゴブリンと表示された。


「やっぱり、ゴブリンだったか」


 そう呟きつつ、ナイフを振り上げつつ飛びかかってきたゴブリンを、蹴りを叩き込んで撃退し、倒れこんだゴブリンを踏みつぶしてあっさり止めを刺した。


「ふむ、人がゴブリンに襲われていると思ったが、どうやら心配いらなかったようだな」


 そう言いつつ一人の男が現れた。名前が緑で冒険者としか表示されていないのでどうやらNPCのようだ。おそらくは正規のシナリオとしてはゴブリンに襲われているところをこの人に助けられるのが正しいのだろうが、俺にとってはゴブリンが弱すぎていきなりの戦闘でも瞬殺してしまったから、後から現れる出方になってしまったんだろう。


「しかし、少年、なぜこのような森の中にいるのだ? 見たところろくな装備を持っていないようだから旅をしているわけでもなさそうだが」


「ああ、気が付いたらこの場所にいたんだ」


 まさか、都市を選んだのにいきなり森の中からスタートするとは思わなかった。


「もしかしてだが、その奇妙な恰好からして異世界人か?」


「わかるのか!!」


「この世界には、たまにだが君のような異世界人が迷い込んでくるんだ」


 どうやらこの世界では異世界人はそこまで珍しくないようだ。まぁ、今日から万単位の異世界人がこの世界に来ているが。


「できれば、近くの村まで送ってやりたいが、あいにく先を急がなくてはならない。だから、昔使っていた道具を君にあげよう。それで、自力で近くの村までたどり着いてくれ」


 そう言って、幾つかのアイテムを渡してきた。


 男に感謝しつつ、俺は貰ったアイテムを確認することにした。


・使い古された剣

結構ボロボロで切れ味もかなり悪そうだ。長さは1Mくらいで装飾もなくただの古いロング・ソードだ。


・冒険者のカバン

小さめのカバンで腰にしっかりと固定でき、中は空間を広げる魔術が掛けられているようで見た目以上に物が入るそうだ。


・解体用ナイフ

倒したモンスターを解体できるようだ。ナイフを突き刺すだけで使うことができ、さっき倒したゴブリンに使ってみたら子鬼の牙が入手できた。


・オーラポーション

飲むことでオーラを回復することができる。飲み薬ですきちんと口で飲んでください。


・マナポーション

飲むことでマナを回復することができる。投げつけても回復できません。


・ヒーリングポット

小さなツボに入っており、傷に塗ることで軽いアバターの損傷を治すことができる。塗り薬なので戦闘中に使うのは難しそうだ


・10000Gゴールド

異世界の通貨みたいだ・・・っていうか日本円が使えないなら、なんで五千円も入れているんだ!!(負け犬の遠吠え)


・コンパス

しかし、壊れているのか中の針がクルクル回っている。


「おい、このコンパス壊れていないか?」


「コンパスの使い方がわからないのか、コンパスを手にもって力を込めてみろ」


 俺は言われた通りにオーラを纏った手にコンパスを持って力を込めた。


 バキッ!!


 すると俺の手の中でコンパスが砕け散った!!


「・・・いや、マナを込めてくれ」


 そう言って新しいコンパスを渡してきた。


「・・・どうすればマナを込められるんだ?」


「意識を体の内側に集中してくれ、冷たい何かを感じないか、それがマナだ。そしてマナが腕を通ってコンパスに行くようにイメージしてみろ」


 俺は言われた通りに体内のマナを動かしてコンパスにマナを込めてみた。すると、コンパスが光始めた。


「よし、うまくコンパスを起動できたな。あとは、近くの村をイメージすればコンパスがその方角を指し示してくれるだろう」


 言われた通りにイメージするとコンパスは一つの方角を指した。


「へ~、便利だな」


「ああ、それとコンパスは村だけでなくイメージすれば色々なものの方角も指し示してくれる。ついでに、魔道具全般は先程と同じようにマナを込めれば起動することができる」


 へ~~、コンパスって魔道具だったんだな。


「では、道中もモンスターが出ると思うが気を付けて行ってくれ」


 そう言い残し、男は去っていった。


 俺は男が去ったあと、コンパスで村の方角を確認しその方向に歩き出した。




 俺が村に向かってゴブリンやウルフなどを蹴散らしながら進んでいると、何度目かのコンパスを使ったタイミングでインフォが鳴った。


『アビリティ【魔力Ⅰ】を取得しました』

『アビリティ【魔力操作Ⅰ】を取得しました』

『スキル【魔弾】を取得しました』


「お!! 新しいアビリティか」


 ちなみに、俺はさっきまでに【生命力Ⅰ】【気功術】【剣術Ⅰ】【格闘術Ⅰ】【解体術Ⅰ】【身体強化Ⅰ】などを取得していた。


「しかし、魔力操作は何ができるかな」


 魔力操作を取得してから、試しにコンパスにマナを込めてみたがかなりマナを送りやすくなっていた。それと同時に取得した【魔弾】は魔術ではなく技に分類されるようでルーンを知らないシンヤでも問題なく使うことができるようだ。


「あとは、魔弾かとりあえず使ってみるか。確か、スキルの使い方はスキルを使う意志とともにスキル名をイメージすればいいんだったな。」


 魔弾を使ってみると、体内のマナが掌に集まっていくのが感じられた。そして、3秒くらいチャージしてから光る玉が作られた。


「ふむ、あの木でいいか、・・・いけ!」


俺は近くの木に狙いを定め、魔弾を発射した。


パン!


ボールが破裂したような音が響き、木の命中したところみると表面が少し削れていた。


「威力とスピードはそこそこだが、3秒くらいチャージしないとならないなら、殴ったほうが速いな」


俺は見事な脳筋宣言した後にふと気づいた。


「これって、自力でできないか?」


 俺は、コンパスにマナを込めるように手にマナを集めて、魔弾を作れないかやってみた。


「はぁ~~~」


 気合を込めて、手にマナを集めていき、十分に溜まったら次にボールになるようにイメージした。すると、掌に先程と同じような光の玉が生まれた。


「うりゃ!」


 パン!


 きちんと魔弾は作られ目標にした木に当たった。


「どうやら自力でもできるようだな。だけど、チャージする時間が10秒くらいに増えているな。慣れればもっと早くなると思うがめんどくさいな」


 マナを使った実験をしているが、元々俺は魔法使いではなく戦士を目指していたので、すぐに飽きてしまった。


「あっ、マナを剣に纏わせてみたらどうなるだろうか。」


 しかし、興味が沸いたことは、とりあえず試して見ないと気が済まない。


 俺は剣を抜き、集中してマナを剣に集めてみた。剣は魔力を宿し光始め、試しに近くにあった木を切りつけてみた。しかし、普通の剣による一撃と変わらなかった。


 どうやらマナはただ込めるだけでは意味が無い様だ。おそらくルーンを刻むか、魔剣などにマナを込めないと意味がないんだろう。


 やはり、近接戦闘ではマナよりオーラを使った方が効率がよさそうだ。オーラなら纏っていれば身体能力が上昇し攻撃力も防御力も上がるのでこれからもオーラの方を重点的に鍛えるか。


 ただ、オーラにも欠点があり、肉体から離れると物凄い勢いで拡散し、遠距離攻撃に向いていない。


 俺はマナとオーラの使い方を考えつつ、次は足にオーラ集中して早く走れるか試してみることにした。


「な、うお!」


 地面を蹴った瞬間、オーラを込めすぎたのか俺の体が4~5m吹き飛んでいき、そのまま地面を転がっていった。


「イタタ、もっと加減しないと。」


 俺は、今度はオーラを少し加減して足に込めていき駆け出していった。すると、上手くいったのか凄まじい速度で森の中を駆け抜けることができた。


「うはははは、はやいはやい」


 俺が調子に乗って、馬鹿笑いしながら森を駆けていると少し開けた場所につきそこで数十匹の魔物の群れとでくわした。



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