第十二話
「最後にちょっとしたトラブルがあったが、依頼達成お疲れ様」
「「「お疲れ様」」」
俺たちはエレウシスの酒場でバンチョウの音頭と共に乾杯をし、先程の戦いを労った。ちなみにバンチョウたちは成人しているので酒を頼み、俺たち未成年組はジュースを頼んだ。(酒は一応酔った気分になれるらしい、番長たちに言わせればどんなに飲んでも二日酔いにならないから最高らしい)
「しかし、なかなかやるじゃねえかシンヤ、初めに会った時に死にかけていたとは思えねえな」
「あの時は、始めたばっかりでこの世界での戦い方がわかってなかったんだよ」
あの時はおれが助けられたが今度はこっちが助けることができたな・・・今までバンチョウには出会う度に世話になったから助けることができてよかったぜ。
「そうなんだろうな、シンヤのあの身のこなしは素人とは思えなかったしな」
「ああ、幼いころから天草道場に通っているから、オーラの使い方を覚えたいま、俺はかなり強いと思うぜ」
ただ、バンチョウも素人とは思えなかったが、おそらく空手をやっているだろう。
「アハハ、シンに~さん飲んでる~?」
バンチョウといろいろな事を話していると、テンションの高いモモが絡んできた。
「お~飲んでいるぞ・・・ジュースだがな」
「なんだ、ジュースじゃ不満かシンヤ。お~い店員さんエール追加で」
バンチョウは俺も酒が飲みたいのかと思ったのか。店員にエールを頼んでくれた。
「って、バンチョウさん僕たち未成年だからお酒は飲んだらダメだよ!」
すぐに、真面目なユウキが注意してきたが、すでに俺の手の中に店員が持ってきたエールがあった。
「あ! シンヤ君ダメだって」
「いいかユウキ、ここはVR空間だぞ、つまりここにあるものすべて単なるデータだ」
そう、別に体にアルコールが入るわけではないから問題ない。
「それなら、別にお酒を飲まなくてもいいよね」
「はぁ~~、ユウキは空気が読めていないな、今は飲まなくてはならない空気だ」
そう言って、俺は一気にエールを飲み干した。
「・・・あれ? 水だ」
確かに、俺はエールを飲んだはずなのに飲んだ感じはただの水だった。すると視界の端にヘルプが表示された。
『未成年が飲酒した場合は自動的に飲んだものを水に変換いたします。飲酒は成人してからにしましょう』
「ちくしょ~~~」
システムに阻まれて俺は酒を飲むことができなかった。
飲み会を終え、バンチョウ達と別れた後、俺たちは泊まっている宿に向かって歩いていた。(モモはバンチョウ達に泊まっている宿まで送ってもらうそうだ)
その道中にユウキは何か言いたいことがあるのかチラチラこっちを見ていた。そして、決心がついたのかこちらに話しかけてきた。
「ねぇ、本当に良かったの・・・バンチョウさん達の誘いを断って」
飲み会の時、俺たちはバンチョウにクランを作る予定だから一緒に冒険しないかっと誘われていたが、俺は自由に冒険したいから断った。クランだとある程度周りに合わせる必要があるから自由に行動できないからな。
「そういう、ユウキこそ断っていいのか」
「それは・・・ボクはシンヤ君と違ってあんまり戦力にならないからボクだけ仲間に入れてもらうのはどうかと思って」
「そんなことは気にしなくてもいいと思うんだが。こういうゲームで重要なことは強いから組むんじゃなくて、その人といるのが楽しいから組むんだろう」
俺がそう言ったあと、ユウキは期待を込めてこっちを見ていた。
「ねぇ、それじゃあこのままボクと組んでくれる?」
「ああ、もちろんじゃねえか。お前といると楽しいからな」
「うん、これからもよろしくねシンヤ君」
そう言い、満開の笑顔を見せてくれた。改めてコンビを組みなおしたついでに気になっていたことをユウキに言った。
「あと、シンヤでいいぞ」
「えっ」
「だから名前、いちいち君づけで呼ばなくていいってこと」
「・・・うん、よろしくシンヤ」
ユウキとのなんだか近く感じながら俺たちは歩いていると、番長の時のように予期せぬ再開が俺を待っていた。
「なっ!・・・お前は死んだはず」
「へっ!地獄から舞い戻ってきたぜ」
俺にそう返したのは初めの森で死んだアッシュだった。
「えっ?なにどういう事?」
いきなりの俺たちのやり取りに事情の知らないユウキは混乱していた。なので軽く俺たちの事情を説明した。
「・・・それって、また初めからやり直しただけだよね」
そんなのは分かっている、さっきのやり取りにロマンがあるんだろが。
こうしたやり取りをしている間に後ろからアッシュに近づいていた奴がアッシュの脳天目掛けて杖を振り下ろした。
「痛って~なにしやがるメグ」
「うるさいバカ晃、不良みたいにいきなり人に絡んでいるんじゃないよ」
「絡んでねえよ、それにこっちでは晃ではなくアッシュだ」
二人は俺たちを無視して痴話喧嘩を始めた。普段の事から小さな時の事の言い争いまで始めた二人の会話を聞く限りどうやら二人はリアルで幼馴染のようだ。
メグと呼ばれた奴を見てみると、肩先まである黒髪に少し気の強そうな眼の上にメガネをかけていた。装備はゆったりとしたローブを纏い先端に宝石が付けられた杖を持ったいかにも魔術師だった。
一通り、罵り合ったあと、メグはユウキに向き直り、頭を下げてきた。
「ごめんなさいね、このバカがいきなり絡んできて。今度から、ちゃんと首輪をつけておくから。ほら、アッシュ早く謝ったら、従魔ギルドに行くわよ、あそこならあんたに合う首輪も売っているだろうから」
「別に絡んでねえって言ってるだろうが、知り合いだから声を掛けただけだ。ってちょっと待て、首輪って比喩じゃなくて物理的につけるのかよ」
「あたりまえじゃない、狂犬みたいにワンワン吠えて回って、少しは落ち着きなさい」
二人は痴話喧嘩や夫婦漫才ともいえるやり取りをしながら去って行った。取り残された俺たちは二人が去った五分後くらいに再起動し宿に向かって歩き始めた。
「なんだか、仲のいい二人だったね。幼馴染だったのかな?」
「そうじゃないか、リアルで男女の幼馴染なんて羨ましいな、俺の幼馴染は男二人だから花がない」
本当にうらやましい、メグと呼ばれた女は整った顔立ちでメガネを外せば美人、外さなくても美人、という感じだったからなおさらだ。
対して、俺の幼馴染の連中は、一言で言うならバカと変態という始末に負えない仕様だからな。
「シンヤも幼馴染が居たんだね。その人たちはこのゲームはやっていないの?」
「いや、やっているぞ。ただ、小さい頃から毎日顔を合わせているから、せっかくのこの世界まで来て、毎日顔を合わせたくなかったから放置している」
そういえば、リアルの学校でどこにいるか聞かれまくったな、さっさと合流しろ、っと五月蝿かったから、「今美少女とエレウシスで冒険しているから無理だ」って答えたら変態が飛びかかってきたな(鉄拳で撃墜したが)。そして、「今すぐそっち行くから美少女にリボンつけて待ってろ」ってわめいていたな。
「ねぇシンヤ、その人たちもシンヤと冒険したいんじゃないかな。」
「いいんだよ、気にしなくて。それよりユウキ、お前リボン欲しいか、欲しいならプレゼントするが」
いきなりのプレゼントと聞いて、ユウキは顔を真っ赤にしながら興奮した面持ちで聞いてきた。
「どうしたのシンヤ、いきなりプレゼントなんて、そりゃ貰えるなら欲しいけど」
「ああ、幼馴染の一人の変態がユウキの裸リボンが見たいって言っていたのを思い出してな。(※言っていません、裸リボンはシンヤの願望です)」
それを聞いたユウキはテンションをジェットコースターのように急降下させ「やっぱり要らない」と答えた。




