プロローグ
俺は真っ白な広い空間に放り込まれていた。まるで、異世界召喚や転生の前に描写されている空間のようだった。
だが、実際に異世界召喚などに巻き込まれたわけでなく。今日手に入れたVRMMOゲーム『X GATE ON-LINE』を起動したらこの光景に出くわしたわけだが。
『X GATE ON-LINE』は異世界召喚をコンセプトに発売されたゲームでプレイヤーは異世界に召喚された一人の人間として自由に行動することができるようだ。
俺がきょろきょろと周りを見回していると目の前に巨大な鏡が出現した。
「『X GATE ON-LINE』をご購入ありがとうございます。まずは容姿と服装と名前を設定してください」
どうやら、鏡を見ながら容姿を変更できるようだ。その鏡には全裸の俺が映っていた・・・しかも機械からVRゲームする上で現実との差異を無くすために登録した俺のパーソナルデータから身体情報を引き出したようで近所の天草道場で古武術を習っており平均以上に鍛えられている体がかなり正確に再現されていた。
取りあえず、髪だけでも変更しようと思い色々といじってみたが、最終的には普通の黒髪に戻した。ただ、それだけでは少し寂しいので髪に少しだけ赤いラインが入るように色を変更してみた・・・中々厨二心をくすぐられるな。
次に服装を選択した。服装は様々なものが用意されており、学生服なら登下校の最中に、ジャージならコンビニに行った最中に召喚された設定とかができるのかな。まぁ、ロールプレイように用意されたものだろうから、適当に学生服を選んだ。
最後にシンヤと名前を入力し、初期設定を完了した。
「ようこそ、『X GATE ON-LINE』の世界へ、これよりシンヤ様には異世界『ミュトス』に旅立っていただきます。ミュトスでは数多くの都市国家があり、互いに協力したり、争い合ったりしています。その中であなたは冒険者として活動したり、または鍛冶で名剣を作ったり、さらには仲間を集めて国を作ることまで自由に生きることができます」
ちなみに、俺はこの異世界召喚に惹かれてこのゲームを買った。平凡な人間が異世界に行き様々な活躍をする物語が大好きで自分も異世界に行ってみたいと思っていた。ついでに言うなら、サバイバル知識を集めたり道場で体を鍛えたりもしていた。
「次に、ゲームの基本システムについて説明します。このゲームではHPなど体力を示す数値はなく、アバターの損傷によってキャラクターは死亡します。ですので、首を斬られるなどの重度の損傷を受けると一撃で死亡しますのでご注意ください」
たしかにせっかくのVRゲームで数値が削られたら死亡では、なんというか味がないよな。
「次に、生命力について説明します。体の内側に熱いものがあるのがわかりますか?」
俺は体の内側に意識を向けてみるとへその裏側に熱いものと冷たいものがあるのが感じられた。
「オーラは体に巡らせれば身体能力を上昇させることができます。また、集中させることができればその部位の攻撃力と守備力を高めることができます。戦士にとってオーラは重要な要素です」
試しにオーラを引き出してみたら、ぶわぁ! っといきなりオーラが噴き出してきた。
「うおぉ!! こいつは勢いがあって制御が難しいな」
「・・・よろしいでしょうかシンヤ様」
「うん? ああ、続きかどうぞ」
オーラで遊んでいたら鏡に注意された。
「それでは、次に魔力について説明します。体の内側に冷たいものがあるのがわかりますか。マナは基本的には魔術スキルを行うのに使用します。ただし、魔術はマナだけでは使用することができません。マナを使い魔術文字を書くことにより魔術は発動します」
つまり、ルーンを知らなければ魔術は使えないと。
「次に、アビリティとスキルについて説明します。このゲームのプレイヤーはアビリティを取得して強くなっていきます。アビリティはプレイヤーの行動やクエストの報酬などで取得していきます。また、アビリティを取得することによってスキルも使用することができます。スキルはアビリティの取得時、スキルブックの使用などで覚えることができます。ただし、スキルブックを使用時には対応するアビリティを持っていないと使用することができないので注意してください」
つまり、このゲームではレベルの代わりにアビリティがあるということか。
「最後に、このゲームでは死亡した場合は、基本的にはその場で復活いたしません。また、この場所からやり直してもらいます。その場合はデスペナルティとしてアビリティが一段階下がります。また、装備などのアイテムは死亡した位置に置かれてしまいますので注意してください」
おい、確かに人は死んだら終わりだが、デスペナルティがかなりきつくないか。
「以上で基本システムの説明を終わります。それでは、スタート地点を選択してください」
鏡におそらくはミュトスの世界地図が映しだされていた。その中の幾つかの都市が光っていたので、おそらくはこの中から選ぶのだろう。
指をさしてみると、鉱山都市や海洋都市などその都市の名前が表示されたので、その中で一番気に入った森丘都市『エレウシス』を選んだ。
「スタート地点は『エレウシス』ですね、かしこまりました。それでは、只今より『X GATE ON-LINE』の世界をお楽しみください」
その台詞の後に俺は眩しい光に包まれていった。