鶏小屋の裏に
※ 魔界 鶏小屋 ※
魔 王 「とうとう明日だねー」
子 供 「ねー。テリヤキも明日は参加するんだよー?」
伝説の鶏「コケ?」
子 供 「うん。ワームもあるよー?」
伝説の鶏「コッコー!」
魔 王 「参加だね」
子 供 「うん。参加だ」
伝説の鶏「こっけこっこー」
魔 王 「ごきげんだね」
子 供 「うん。よかったね」
魔 王 「河太郎、そろそろ戻ろうか?」
子 供 「う~ん、でも。ワームの解体がまだだよー?」
魔 王 「ワームのミミズ効果に期待して、放し飼いにするらしいよ?」
子 供 「ミミズ効果?」
魔 王 「うん。ここら辺の土地を耕してもらうの」
子 供 「でも、ここって……」
魔 王 「大昔のお墓。ここの人たちも、もういいかなって」
子 供 「…?」
魔 王 「もう、形を保ってなくていいかなって」
子 供 「自然に還るの?」
魔 王 「そう。僕らが生まれる前に、人間に殺されちゃった人たち。でも、恨みとかもって、ゾンビと して生まれ変わるのは可哀想だって」
子 供 「解放してあげるの?」
魔 王 「…というか、解放されてください?」
子 供 「?」
魔 王 「ここね、歴代魔王のお墓なの」
子 供 「……え?」
魔 王 「正確には、魔王とその時代の悪魔たちの…」
子 供 「……うわぁ……」
魔 王 「来年なんだよね、彼らが目覚めるの。でもね、昔と違って、ここは人間への恨みばかりに満ち 溢れてないから、昔のまま目覚めても、きっとこの人たちが悲しい思いをするって」
子 供 「人間大嫌いなままってことだよね…」
魔 王 「特に、今は勇者さんもいるしね」
子 供 「?お兄ちゃんが……勇者だったね、うん」
魔 王 「勇者さんとこの人たちが出会ったら、魔界は色々な意味で終わると思う」
子 供 「一方的に因縁をつけられるお兄ちゃんと、襲いかかるゾンビな魔王様と悪魔たち。双方を止め ようとする一般人のみんなが入り乱れての喧嘩祭り?」
魔 王 「僕らでも、収集つけられないもん」
子 供 「納得ー」
魔 王 「河太郎、ここが魔王たちのお墓だったって、内緒ね」
子 供 「うん。わかったー」
魔 王 「ノリがね、本当に信じられる人にしか、ここは教えちゃだめだって」
子 供 「うん。それはわかる。危ないもんね」
魔 王 「河太郎は、僕の手伝いしてくれるでしょ?」
子 供 「うん。幸せを作るんだよね」
魔 王 「うん。大嫌いな人間を、頑張って大好きになろうとしてる河太郎になら、話していいかなって 思ったから」
子 供 「大丈夫だよ。あのね、今はね、中の村の人も大好きだし、お兄ちゃんも大好きなの。もう、無 理してないよ」
魔 王 「うん。見てたらわかるよ。良かったね」
子 供 「うんっ」
魔 王 「…良かった……」
子 供 「…ところで、魔王様ー。ワーム二百匹もとってきたけど、ここに放して大丈夫?」
魔 王 「だから、テリヤキのいるここなんだ」
子 供 「あ、そっかー」
ニワトリ「コッケ―?」
魔 王 「ワーム、食べていいからねー?」
ニワトリ「コッココー!」
魔 王 「…後は自然消滅?」
子 供 「昔の魔王様たちをワームがただの有機物にして、そのワームもテリヤキが食べちゃうから…… うん。自然消滅ー」
ニワトリ「コッコッコッ」
魔 王 「あ、さっそくテリヤキが御飯食べ始めた」
子 供 「…そう言えば、ご飯の時間?」
魔 王 「そうだねー。お昼食べに帰らなきゃ」
子 供 「明日の準備もあるよー」
魔 王 「じゃあ、ここで解散だね」
子 供 「また明日ね、魔王様ー」
魔 王 「また明日ー」