月明りサイクリング
初めての小説です。
文中の歌詞は吉田拓郎さんの「結婚しようよ」から。
夏の夜は涼しい。
特に、満月の夜は
「こら!****!! 人の話は最後まで聞きなさい!!」
「うっさい! 自分の事は自分でする! だから、もう関わんな!」
母親の制止を振りきって、俺は家から飛び出した。
「****! どこに行くんだ!」
父親が俺の腕をつかもうとする。
「っ!!」
それをなんとか逃れて、鍵をブッさしたままにしておいたチャリに飛び乗る。
自分でも驚くぐらいの早業で、スタンドを蹴りあげペダルを漕いだ。
「****!!」
後ろで父親と母親が俺の名前を呼んだけれど、振り返らなかった。
「・・・・・・・・・・・」
家から飛び出して、俺はどこに行くでもなくチャリを漕いだ。
しばらく夜風に当たるうちに、俺の頭も冷めてきた。
こう言う風に飛びたした事なんて無かったから、親も心配してるかも知れない。
だけど、俺は悪くない。 あんなやつらの事で、悩むなんてバカらしい。
そんな事を考えていたら、いつの間にか国道を離れて、知らない田んぼ道を走っていた。
周りは水田で、青く伸びた稲穂がそよそよと揺れている。
水面には空の黒と光る星、そして丸い月が映っていた。
そして俺は、なんとなく―――――そう、ただ水面に映る夜空を見てみたくて、空を見上げた。
「うわっ・・・・・すっげ・・・・・・・」
見上げた夜空は壮大で、俺はため息まじりにそう呟いた。
空には今まで見たことないぐらいの星が輝いていて、その近くには大きな月が光っている。
星と月が輝く雲ひとつない夜空は、今まで俺が見たことのない景色を映し出していた。
綺麗だった。
輝く月も、星も、夜空も。
だから、きっと俺は、雰囲気にのみ込まれたんだ。
「僕の髪がー肩までのびてー 君と同じになったらー・・・・・・」
気付けば、母親がよく歌っていた歌詞を口ずさんでいた。
もう、いつのころだったか忘れたけれど、母親がよく歌っていた曲だ。
俺も驚くぐらい、歌詞を覚えていて、どんどんリズムに乗っていく。
「もうすぐ春がー ペンキを肩にー・・・・・・」
これは恋愛の曲で、春ごろの歌。
今は夏で、歌っている俺は一人。
そんなギャップが面白くて、俺は笑いをこらえながらチャリを漕いだ。
「結婚しようよー・・・・・・・」
遠くに見なれた看板が見えた。
どうやら田んぼ道を半周して、国道に戻って来たらしい。
帰ろう。やっぱり、二人とも心配してるはずだろうし。
「僕の髪はー もうすぐー肩までー とどーくよー・・・・・・・」
俺は、ペダルを強く、踏み込んだ。
月が出てるのに、星がたくさん出てるとか、なくね?
書いた後にそんなことに気付いたんですが、そこは大目に見てください・・・・