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恋愛ジャンル

化物と人間が共存する国では恋愛や喧嘩のトラブルが絶えることが無い

作者: 金銅才狸
掲載日:2026/09/26


 垢


 昔は風呂屋にいた。

 風呂屋が閉まると忙しく掃除したモノだ。


 しかしながら……

 最近は風呂付きの家が増えてきた。

 だんだん大衆風呂は廃れている。


 おかげで私の仕事が激減してしまった。

 おまけに私の競合相手も増えてきた。


 掃除道具の発達で、私の綺麗に掃除する技術は徐々に有意性を失ってしまったのだろう


 私は風呂屋で働く事をやめる羽目になった



 ソレから


 

ーーー

 口


 ある日の事。

 彼氏に連れられて私は美容院へ。

 私には最近彼氏が出来た。

 私は彼氏を作るつもりなど無かったのに


 街中を歩いていた男に適当に声をかけたら、そのままあれよあれよと言う間に私はいつの間にか彼氏に口説かれていた。


 私には劣等感と使命があった。

 しかし……私の彼氏は

 その事をわかってくれない。


 彼氏は私の心が病んでいると判断し

 私を病院に連れて行く。

 病院では……


「心の病気ですね。お大事に。

 他の精神病院も紹介します」


 など言われて病院をたらい回しにされた。

 終いには彼氏に連れられて

 病院どころか美容院に通う始末。


 私は一種の心の病気だそうだ。

 治すには自信をもつのが一番らしい。

 

「な、腕の良いプロに美容院で見てもらえば、綺麗になって自信つくって」

「でも……」

「俺は、お前そのままでも綺麗だと思う」

「あらまぁ」


 私の彼氏は私の顔を褒めてくれる。

 私、顔にはコンプレックスがある。

 だから余計に顔を褒められたい。


「でもお前。自分の顔に自信が無いんだろ? なら美容院で、より綺麗にしてもらおう」

「……」


 最近出来た私の彼氏は必死に私を励ます。


「確かに私は自分の顔に自信が無い。けど」

「な。それなら試してみよう」


 私の彼氏は、とてもポジティブ。

 前向きで強引だ。

 そういう所は嫌いじゃない。


 何より彼は私を褒めてくれる。

 自分に自身の無い私を全肯定してくれる。

 

 それは私が何より欲したモノで……

 何より心地よいものだった。


ーーー

 口


 美容院にて……


「熱かったら言ってくださいね」


 濡れた温かいタオルを顔にのせられた。

 目隠しをされた。

 

「先生、お客様の準備終わりました。コチラのお客様を頼みます」

「ハイハイ」

「少しお客様に怪我跡が見られるので注意してくださいね」

「ハイハイ」


 声から男の先生がやってくる音がする。

 濡れタオルが顔にのって目隠しされてる

 だから先生の顔までは見えないが

 声は男。


「それじゃ。施術を始めるね。リラックスしてね。痛くないから」


 私の顔が濡れる。


 ぺちゃぺちゃと音がする。


 私の顔が濡れる。


 何か生臭い。


 不快


 とても不快。


 私は耐えかねて目の上にのせられた濡れタオルを跳ね除け目を開けた。


 すると…、


 私の目の前で、大きな口を開けた男がいた

 くたびれて老い醜悪な顔をした男

 長い舌で私の顔を舐めていた。


 ちょっとした恐怖体験。

 しかしそれよりも!


「お前は……!」

「キサマ!」


 私達はお互いの顔を確認して声を荒げた。


 お互いに良く見知った相手。

 見知った化け物。


 お互いに、ここ最近は長い事、噂すら聞かなくなった相手。


 なんの因果(いんが)か運命の悪戯(いたずら)か……


 ワタクシこと妖怪『口裂け女』は彼氏に連れられて……

 妖怪『アカナメ』がいる美容院に来てしまった。



ーーー

 垢なめ視点


 妖怪アカナメ


 長い舌で垢をなめる。

 舐められたモノは綺麗になる。


 その特技をいかして風呂屋の掃除から、美容院へと転職していた。


 人間の顔を、人間の垢を舐める。

 私に舐められたモノはどんなモノでも綺麗になる。

 『垢抜ける。』


 私は妖怪アカナメ。

 今では美容業界で主に人間の顔を舐めている。


 私にかかれば、私が自慢の舌で顔をナメれば、どんな垢抜けない顔も『アカ抜ける』。

 綺麗になる。


 なぜなら私がそういう妖怪だから。


 私は美容業界の時代の寵児としてもてはやされている。


 その私にも、時に本気でビビ事がある。

 いつもの様に美容院で客の顔をナメていた


 垢抜けない顔から垢を抜く。

 それだけで人間は喜んでくれる。

 それが嬉しい。


 それなのに……

 あぁそれなのに。


(なんて事だ。

 よりにもよってこの『妖怪アカナメ』が『妖怪口裂け女』の顔をナメる事になろうとは……)


 顔に傷がある時点で、気付くべきだった。


ーーー

 垢なめ視点



 【妖怪口裂け女】はヤバイ


 コイツはヤバイ。

 マジでヤバイ。


 何せ。

 ところかまわず

 妖怪人間関係無しに

 相手かまわず

 だれ彼無しに


「わたしキレイ?」


 とか聞いてまわる超メンヘラ女だ。

 それどころかキレイだと褒めてくれた相手に『裂けた大きな口』を見せて


「これでもかぁ」


 と脅かす、超面倒なメンヘラ女だ。


 コイツが自分の顔にコンプレックスを持ってる事は想像がつく。


 まともな神経じゃない。

 関わりたくもない。


 そんな相手の顔を、この『妖怪アカナメ』がナメてしまった。

 とんでもない事をした。


 化物メンヘラ女の顔をナメるなんて自殺行為もいい所だ。


 しかも『口裂け女』の顔の欠点は、大きく裂けた口にある。


 私の技術は相手の顔をアカ抜けた顔にする事だ。裂けた口をどうにか出来る訳じゃない


 コイツは不味い。

 メンヘラ女に、どんなクレームをつけられるかわかったもんじゃない。


 私は全速力で逃げ出した。



ーーー


 妖怪絶滅リスト『妖怪アカナメ』


 妖怪アカナメは最近美容院で働いていた。

 人間の顔を垢抜けた顔にする事で人気絶頂だったが……


 運悪く訪れた『妖怪口裂け女』の顔をナメてしまった。


『彼氏以外に顔を舐められた』


 最近出来た人間の彼氏に操をたてていた『妖怪口裂け女』は激怒。


 激怒した妖怪口裂け女に追いかけられて『妖怪アカナメ』逃げだし失踪してしまった。

 

 人間達の美に対する執着は凄まじく、

『妖怪アカナメ』の居場所を探し、ネットにも度々目撃情報が拡散されているが……


 それを妖怪『口裂け女』も見てる様。


 その度に激怒がおさまらぬ『妖怪口裂け女』の襲撃を受け『アカナメ』は逃げ隠れしている様だ。


 アイツらは何をやっているのやら???



        報告者のっぺらぼう



ーーー



 私は、のっぺらぼうの報告書を何度も何度も読み返した。


 『妖怪アカナメ』の意外な特技。

 美容術に、そんなにも長けているとは思わなかった。


 利用価値がある。


 私は、さっそく『のっぺらぼう』へ『妖怪アカナメ』を連れてくるように指示した。


 私なら安全な隠れ家を提供できる。

 口裂け女から、かくまってやれる。

 私は妖怪『アカナメ』を隠す事にした。


 こうして妖怪『アカナメ』は姿を消す



 それにしても……

 妖怪アカナメVS妖怪口裂け女か。


「あいつ等は何をやっているのだ?」



 

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