第8話 ざまぁされるべき奴かもしれない
「さあ、早く入ろっ!」
朝陽奈さんに手を引かれ、店内に入った。どうしてこの子はこんなに乗り気なんだろう。
初めてランジェリーショップの中に入ってしまった。当然ながら店内は女性ばかりで男は俺一人。
カップルの一組でもいればまた違ったかもしれないが、周りの人達から見れば俺と朝陽奈さんがカップルに見えていることだろう。
それにしても、ただのクラスメイトの男子と下着を買いに行くものだろうか?
現実ならそんなことはありえないとは思うが、まさにゲームならではのイベントといえる。
(俺はいったいどうすれば……?)
朝陽奈さんとは離れた場所で待機しようか? それとも何か理由をつけて店の外で待とうか? いや、それではいけない。朝陽奈さんはわざわざ俺に声をかけてくれたんだ。なのに俺が否定的になってはいけない。
(いや、待てよ……?)
むしろずっと朝陽奈さんの隣にいたほうが自然なんじゃないだろうか? 変に恥ずかしがるほうが不自然で、気をつかわせてしまうかもしれない。
「いっぱいあって迷っちゃうねー」
「そうだね。俺のことは気にせずゆっくり選べばいいと思うよ」
「そう? ありがとう。それじゃあまずはあっちに行ってみよう」
またもや朝陽奈さんに手を引かれる。堂々としてる朝陽奈さんと比べると、俺の慌てっぷりが目立ってしまう。
「ねぇねぇ階堂くん、これとこれ、どっちが好き?」
「俺の好みを聞いてもしょうがないんじゃない?」
「そんなことないよ。男の子じゃないと分かんない感性があると思うの」
「そう言われてもなぁ。もう正直に告白しようかな。俺、女の子と付き合ったことないんだ」
悲しいことだが本当だ。社会人になっても特に何もなかった。だから経験値はゼロ。
「そうなんだ。でも私もそうだよ。男の子とお付き合いしたこと一回もないからね」
「朝陽奈さんの好きな人って、やっぱり江並?」
「うん、そうだよ」
果たして聞いていいものか迷ったが、隠す気はなさそうだし、念のため確認しておいたほうがいいと思ったんだ。
「でも蓮二が私のことをどう思ってるか分かんないからね。だからデートで聞いてみようかなって」
「そうなんだ」
本当に江並のことが好きなんだな。問題は江並がその気持ちに気づいてるかどうか。
俺としても推しの恋がどうなるかってのは気になる。
「それでね、もしかすると蓮二の家に誘われて二人きりになって、そのまま二人でってことになるかもしれないよね?」
「えっと、それはどうだろう……? いきなりそうなるとは考えにくいかも?」
「どうしようー、きっと一人でするのとは全然違うよね。だったらやっぱり可愛いのを履いて行かないとね」
そんなセリフを素で言えるのがR-18の朝陽奈さんだ。
「階堂くんならどれが一番興奮する?」
それから俺はいろんな種類のものを見せられ、意見を求められ、まるで俺の癖を披露してるみたいだった。
それに加えて、聞いてもないのに朝陽奈さんが普段どんなものを着けてるのか教えてくるので、どうしても想像してしまう自分がいる。
しかも全く同じものが売られているのを見つけると、これは擦れるからイマイチだったとか、これは触った時の刺激の伝わり方がちょうどよかっただとか、思わず俺のほうから「もうお腹いっぱいです」と言いたくなるようなことまで教えてくれた。
そして改めて注目してみると、朝陽奈さんも胸が大きい。よくは分からんけど、擦れるのは単純にサイズが合ってないからでは?
「階堂くん、今日は付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ、声をかけてくれてありがとう」
買い物が終わると意外とあっさり解散となった。少し寂しい気もするが、江並と付き合う可能性がある以上は、俺がアクションを起こすわけにはいかない。NTRする奴にはなりたくないからな。
そして休日を挟んだ最初の登校日。つまりただの月曜日。俺は江並に朝陽奈さんのことをどう思ってるか聞いてみることにした。
そろそろ江並の意思を確認する必要があると思ったからだ。
「俺が陽香のことをどう思ってるかって?」
「幼馴染なんだってな」
「確かにそうだが俺にとってはただの幼馴染だな」
それは俺にとってもなんだかショックだった。でも相手にも気持ちってものがあるから、こればかりは仕方ない。
「でも陽香ってデカいから一度ヤッてみたいと思ってんだが、あれでなかなかガードが固くてな」
淡々と話す江並。まさかデートに誘った目的って、そういうことじゃないだろうな? 朝陽奈さんの想いは考えないのか? それに文月さんにも声をかけてるし。
ここにきて発覚する事実。もしかすると江並はざまぁされるべき奴なのかもしれない。




