第7話 想像してしまった
ギャルゲーやラブコメの主人公にとって、もっともやってはいけないことは何か。
それは一人に決めず全員にいい顔をすることじゃないだろうか? 八方美人というやつだ。多分プレイヤーの多くから嫌われるやつ。
どうやら原作主人公の江並にもその疑惑が出てきた。
もともと愛想がよく男女問わず誰に対しても同じ対応なら納得できる。そうではなく女の子から頼まれて同行しただけってことでも、まだ理解できる。
ただ自分からいろんな女の子を誘うのはダメだろう。それはもう完全に江並の意思ってことになる。
「朝陽奈さん、今までにも江並と二人で出かけたことってあるの?」
「もちろんあるよ。小学生の時とか中学生の時とか。……あれ? でも高校生になってからはあんまりないかも」
確か二人は小学校低学年からの幼馴染のはずだから、すでに朝陽奈さんが江並に惚れていてもおかしくない。というか間違いないだろう。
その逆だってありえるわけだが、江並のほうは朝陽奈さんに対して本気じゃないように思える。
(いったいあいつはどういうつもりなんだ?)
おいおい大丈夫なのか? そんなことしてたらいつか修羅場になりそうだ。卒業式の日に男共とカラオケバッドエンドなんて生易しい終わり方じゃなくなるぞ。
特に文月さん。おそらく江並は知らないだろうが、なんだか絶対に怒らせてはいけないような気がする。
「あっ、そうだ! 階堂くん、今日このあと時間ある?」
「俺はいつでも暇だよ」
自分で言ってて悲しくなるが、転生したとはいえ性格は変わってないからなぁ。結局は前世とそんなに大差ない生活かもしれない。
いや違うか。こうして女の子と話してる時点で全然違ったものになってるな。
「それじゃあさ、ちょっとお買い物に付き合ってくれないかな?」
「いいよ」
そう返事したものの女の子と二人で出かけるなんて、初めてかもしれない。
前世での高校生活はもちろんのこと、社会人になってからもそんな機会はなかった。
むしろ社会人になってから、ますます女の子との関わりがなくなったような気がする。
数少ない同期とは別の部署になり、仕事に追われ、休日は疲れて寝る。改めて思い返してみると、時間をムダにしてたんだなと気づく。
そう考えると同年代の女の子達と毎日のように顔を合わせる高校生活って、そういう意味ではかなり恵まれた環境だったんだな。
(彼女づくり、本気で考えてみるか……)
そして朝陽奈さんとやってきたのはショッピングモール。俺もたまに来る場所だ。
「何を買うつもり?」
「せっかくのデートだからね。新しいもののほうがいいかなって思ったの」
「新しいもの? ああそうか、服か。確かにいつもと違う雰囲気の服装だとドキッとするかもしれないな」
「そうなんだね。やっぱり階堂くんに来てもらってよかったよー」
「実を言うと俺はファッションに詳しいわけじゃないけど大丈夫? それに個人の好みってことになると思うんだけど」
「大丈夫だよー。私としても男の子の意見を聞いてみたいって思ってるし」
「そうか、それならできる限り協力させてもらうよ」
江並とのデートで着る服を俺と一緒に買いに行くだなんて、これって俺に対しては恋愛感情が無いってことだよな? そう思うとやっぱり残念に感じるな。
それでも大丈夫だ。推しヒロインが幸せになれるのなら、俺は協力を惜しまない。
「ここだよー」
「……ちょっと待ってくれ」
連れて来られた店の中には布製品がたくさん並んでいる。確かに身につけるものではあるのだが……。
「どう見ても女性用の下着しか見当たらないんだけど」
「うん。だってランジェリーショップだもん」
「うん、そうみたいだね。俺はそこのベンチで待ってるから」
「えぇー! 一緒に入ってくれないの?」
「くれない」
「そんなぁ……。ね? ちょっとだけ入ってみない?」
「そもそもどうして新しいものを買おうと?」
「私はいつも替えの下着を上下とも持ち歩いてるよ。もちろん学校に行く日も毎日。だってそのほうが安心するから」
そういうものなのか……? 安心ってなんだ? ヤバい、全然分からん。
「実は初めて階堂くんとお話しした日、もう履き替えていたんだよ」
「そ、そうなんだ……」
そんなこと言うから想像してしまったじゃないか。メインヒロインが変に純粋で困る。仕方ない、付き合おう。




