第33話 もう一組の姉妹
文月 流菜には最近気になっていることがある。それは同じ高校の一つ上の先輩である、階堂という男子生徒について。
自分の不注意により、エロい小説が好きだということがその生徒にバレてしまったのだ。
バレてしまったものは仕方ないので、もうそうなったらその生徒にも自分と同じ趣味を共有させて、一緒に楽しもうと考えた。
それから約三ヶ月。頻繁に階堂の教室に突撃しているが、いつまで経っても階堂が自分に心を開いていないように思えて、時々そのことを姉に相談している。
そして今夜もまた、流菜は姉に相談するのである。
「ねぇお姉ちゃん、家凸ってどう思う?」
「いきなりどうしたー? もしかして何かあった?」
そう聞き返したのは流菜の姉である亜希。21歳のカフェ店員。流菜が銀髪ショートボブであるのに対して、亜希は金髪ロングのハーフアップ。
その顔立ちは流菜と同じく整っており、綺麗というよりは可愛いと言われるであろう雰囲気だ。その印象を一言で表すなら、ギャルが最も適しているといえよう。
二人は亜希の部屋のベッドの上で横たわり、そのままお互い向かい合って話す。
「あぁー、流菜が前から言ってる先輩のことかな? 何か進展あった?」
「進展どころか私には興味ゼロっぽい。せっかく私がオススメの小説をピックアップしても後輩ものを選ばないんだよね」
「だったら後輩には興味ないのかもね」
「もうー、それ言っちゃう?」
「流菜はその先輩のことどう思ってんの? 好きなの?」
「うーん、好きとかじゃない……と思う。でも私の趣味を知っても普通に接してくれるから、もっと話したいというか、疎遠になりたくないというか、沼らせたいというか」
「あぁー、分かるなぁ。大抵の場合はドン引きされるから。私だってそのことを気楽に話せるのは流菜しかいないからさ。……それで家凸をどう思うかだっけ? つまり勝手に家まで行くってことだよね」
「うん。だって学校だと昼休みにしか話せないから。だから階堂さんの家に行って時間を気にせず語り合いたいなって」
「流菜はその人の家の場所、知ってんの?」
「ううん、知らない」
「だったら無理じゃん」
「だからもう一緒に帰って家までついて行こうかなって。そしてそのまま入らせてもらおうかなって」
「なるほどねぇ。こっそり後をつけたらただの不審者だけど、それならいいんじゃない?」
「だよね!」
「いっちゃえいっちゃえ! それにもうすぐ夏祭りだし誘ってみたら?」
「うーん、階堂さんは多分他の人と行くんじゃないかな」
「友達とってこと?」
「今はそうなんだろうけど、好きな人がいるみたいなことを言ってた」
「女か……!」
「でもその先輩、私も好きなんだ」
「流菜、実は男女どっちもイケるんだ?」
「違う違う。その先輩もああいう小説に興味があるみたいでね、話が合うの」
「詳しく」
そして流菜は朝陽奈 陽香について話した。おそらく階堂のことが気になってるであろうことも含めて。
「何その子。年下だけどめっちゃ友達になりたいんだけど。ていうかいろいろ教えてあげたい」
「それなら今度ここに来てもらおうよ」
「おっけー。シフト確認しとく」
「だからね、その先輩のことを邪魔したくないって気持ちもあって」
「流菜はいい子だね。誰かが不幸になることだけはしちゃいけないから」
「うん。もしかしたら私は趣味を共有できる友達ができればそれで満足なのかも。……それでお姉ちゃん、ちょっと前に買ってもらったあの本どうだった?」
「すごくよかったよ。つい手が伸びちゃった」
「いいなー。私も早く買えるようになりたい」
「フフッ、それはもう少し大人になってからだねー。それまではお姉ちゃんで我慢しなさい。ほら、おいで」
亜希はそう言ってベッドの上で横を向いたまま両手を広げた。そしてそのスペースに流菜が入り込み、大きな胸に顔をうずめる。
そんな流菜を亜希の両手がそっと包み込んだ。
「お姉ちゃん、あったかい」
「もしツラいことがあったら、いつでもお姉ちゃんの胸に飛び込んでおいで」
「うん!」
朝陽奈姉妹とはまた違った形で、姉妹の絆がここにあった。




