第30話 メッセージ(一方通行)
『いろいろ選びましたからね、確かに迷うのも無理ありませんよね。もう少し待ってますね』
『どうですか? とりあえず一通り全部見ましたか? どれも魅力的ですよね』
『先輩に後輩に同級生。ちゃんと全部ピックアップしておきました。気が利くでしょ? まあ私としてはダントツで後輩ものがオススメなんですけどね!』
『もしかして試し読みとかしちゃってます? だったら時間がかかるかもですね。私なら大丈夫なので気にしないでください。どうぞごゆっくり』
『まさかとは思いますが、つい手が伸びちゃったりしてますか? そういうことなら私も経験があるのでものすごく分かります。どうぞごゆっくり』
『もうこうなったら告白します。実はですね、その中のどれかで私の手がつい伸びちゃったんですよ。どれなのかは恥ずかしいので秘密です』
『そろそろ返信してほしいなー、なんて。可愛い後輩からのお願いでーす』
『あれぇ? まさか寝落ちですか? まだ一時にもなってないじゃないですか』
『直接会って話すのもいいですけど、こうやって離れた場所でやり取りするのもまた違った良さがありますよね』
『ほらほら、早く返信くれないと私寝ちゃいますよ』
『もしもーし? 階堂さん、見てますかー?』
『前の送信から五分経ちました。ちゃんと気がついてますか?』
『そろそろスマホを見ましょうよ』
『もしかして寝てます?』
『スマホは見るものですよー』
『スマホ、見ましょうよ……!』
『スマホ……』
『スマホ、みて』
(そんなとこでやめるなよ!)
これらは昨夜文月さんから送信されたメッセージだ。俺は寝てたので、その全部が一方通行。怖えぇ、怖えぇよ。ホラーかと思ったじゃないか。
もう最後なんて変換すらしてないし。丑三つ時になんてものを送ってきてるんだ。そこはせめて『また学校で』とかだろう。
しかもスマホに『スマホ見て』って送信しても意味ないんじゃないか?
俺は選択を間違えたのだろうか? せめて俺が『また明日』だけでも返信していればよかったのかもしれない。どうやら気づかいが裏目に出たみたいだ。
とりあえず今からでも返信だけはしておこうと思った俺は、『ごめん寝てた。話は今日学校でしよう』と返信した。
だってこのままだと家凸されそうな勢いだから。もしこの後インターホンが鳴るようなことがあれば、それはもう立派なホラー映画だ。
するとすぐさま返信があった。文月さん大丈夫か? ちゃんと寝たのだろうか。
『元気そうでよかったです。そうですね、とりあえずお腹を割ってお話ししましょう』
……つまり俺に切腹しろと?
まぁ腹を割って話すと言いたいのだろう。文月さん、変なところで丁寧だからな。
もしここで学校を休みでもしたら、それこそ家凸案件だ。俺は特に気にせずいつも通り登校することにした。
「階堂くん、おはようー」
「朝陽奈さん、おはよう」
朝陽奈さんはいつも通り元気よくあいさつをしてくれた。
それから俺は自分の席に座る。前にはすでに江並がいるが、昨日文月さんに吐いた暴言の一件により、俺の中での江並の印象はさらに悪くなった。
江並のほうも、俺が朝陽奈さんの他に文月さんとも仲良くしてることが気に食わないようだ。
このまま友達付き合いを続けるべきなのか、このあたりで一度考え直す必要がありそうだ。いくら友達が少ないとはいえ、それでも交流を持つ人は選ぶべきだと思う。
「おはよう江並」
「おう」
それでもあいさつはする。江並はというと、俺のほうは見ずに返事だけがあった。
昼休みになったが今日は文月さんと学食で話すことになっているので、早速行ってみる。
するとすでに居たので、二人用のテーブル席で対面する形に。
「階堂さん、早速聞かせてもらいましょうか。昨夜送った中でどれが一番興奮しましたか?」
俺が返信しなかったことには全く触れてこず、逆にそれがなんだか怖い。
「いつも明るく純粋そうな同級生の女の子が実はめちゃくちゃエロかったってやつ」
「へぇ、そうですか。朝陽奈先輩ですか」
「なんでそうなるんだ」
「確かに朝陽奈先輩、そそる体つきしてますもんね」
何やら話がおかしな方向に進んでるような気がする。
俺は朝陽奈さん以外は考えていないが、ここでふと疑問に思った。原作では高校卒業の日に
ヒロインに告白をする、あるいはされるというエンディングだ。
でもそれはあくまでゲームだからそうなってるというだけで、実際に卒業まで待つ必要なんて無いのではないだろうか? そんな悠長なことを言ってたら他の誰かに取られてしまう。
ということは卒業を待たずとも、今年中に彼女をつくってもいいはずだ。
言うなら早期ハッピーエンド。もっと早く気づけばよかった。




