第26話 興奮しませんか?
二人仲良くベッドに腰掛けると、陽香はスマホを操作してその画面を詩恩に見せた。
「階堂くんが選んでくれた本はね、こういうのだよ」
「ちょっと見せてもらうわね」
スマホを受け取った詩恩は、時々操作しながらも画面を真剣に見つめている。
「うわ、すごい。もはや表紙イラストが下着の女の子なのは普通なんだね。ねぇ陽香、階堂くんに何て言ったの?」
「どのイラストが可愛いと思うって聞いたの」
「なるほどねぇ。イラストだけ見てもマンガみたいなものとリアル寄りのものがあるわね。でも階堂君が選んだのはマンガみたいなイラストばかりね」
「ホントだ、気がつかなかったよ」
「あとはタイトルだけど、そうねぇ……。義妹、幼馴染、先輩ギャル……か。そういう相手がいいのかしら」
「うーん、どうだろう? あ、そういえばイラストだけで選んだって言ってた。だからタイトルは気にしてないって」
「そうなの。同級生が無かったのが気になったけど、そういうことなら気にしなくていいかな」
「ね、お姉ちゃん。買ってくれた本はもう読んだの?」
「半分ってところかな」
「どうだった? やっぱりすごかった?」
「陽香、あれは絶対に外で読んではダメよ。自分の部屋の中じゃないと」
「どうして?」
「つい手が伸びちゃうから」
こうして姉妹の実に楽しいおしゃべりは続いていったのだった。
【階堂視点】
朝陽奈さんとデートをした翌日の昼休み。コンビニで買ったパンを食べ終えた俺は、いつものように文月さんと話をしている。
「文月さん、ちょっとここに来すぎじゃないか? 友達と過ごさなくていいの?」
「心配ありませんよ、友達いませんから」
「リアクションに困ることを言わないでくれ」
「気にしなくて大丈夫です。話し相手なら階堂さんがいますから。それよりも階堂さん、見てください。この本の表紙イラスト、なんだか私に似てませんか?」
そう言われ見せられたのは、銀髪ショートボブの女の子が描かれたイラスト。もちろんR-18指定の。
その女の子は下着姿で、しかもところどころが不自然に破れ何かに怯えてるような表情をしており、その子がいったい何をされる話なんだと想像をかき立てられてしまう。
「こんなイラストが自分に似てるってよく言えるよな。もう凄いとすら思えてきた」
「階堂さん、どうですか? このイラストを見て興奮しませんか?」
「ちょっとかわいそうだと思う」
「またまたぁ。正直に言ってくれてもいいんですよ? 私に置き換えて想像しても構いませんから。階堂さんの頭の中を私のことでいっぱいにしてみてください」
「それならもういっぱいだから」
「そうですか、ついに……! 毎日足を運んだ甲斐があったというものです」
「そう、それだよそれ。毎日ここに来る必要ある? そういう意味で頭の中がいっぱいってこと」
「それを私の口から言わせる気ですか? そんなの階堂さんと話したいからに決まってるじゃないですか」
「なんで学校の昼休みにエロ小説の話をしないといけないんだ」
「エロ小説じゃありません、官能小説です」
「一緒だから」
「学校の外ならいいんですね? だったら私と一緒に出かけましょう」
「それは無理だな」
「なんでですかー!」
「真面目な話、本当にここには来ないほうがいいと思う」
実際は文月さんが来ること自体は何の問題もない。だけど今、文月さんが座ってるのは江並の席だ。つまり文月さんと江並が顔を合わせる可能性があるということ。
そして江並は文月さんと一回だけデートしたもののフラれており、かなりイラついていた。
そんな二人が顔を合わせればどうなることやら。むしろ今まで何事もなかったのが不思議なくらいだ。
ところが俺のそんな心配をよそに、教室の入り口には江並の姿があった。
そしてどこを目指すのか? そんなの自分の席に決まってる。だがそこには文月さんがいる。
「文月さん今すぐ帰ったほうがいい」
「えぇー、なんでですか」




