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ギャルゲーのモブに転生したけどまだ発売されてないR-18バージョンだった  作者: 猫野 ジム


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第17話 それを止(と)める者はいない

 どうやら江並は文月さんにフラれたらしい。だからなのかどうなのか、文月さんのことを『あいつ』呼ばわりしてたな。


 二回目は断られたってことは、一回目で「なんか違う」って思われたということだろう。


 俺も前世で経験あるからすごく分かる。最初だからって気合いを入れて似合わないことをしても長くは続かず、やがてボロが出る。


 だったら最初から()の自分を見せるほうがいい。問題なのは素の自分を気に入ってもらえるかどうかだ。まぁそれは自分の魅力を高めるしかないかなって思う。

 でも最初に気に入ってもらえないと次は無いわけで。なんとも難しいよ、本当に。


 今回江並がフラれた理由は文月さんに下心を見透かされたからだ。文月さん本人から聞いたんだから間違いない。


「俺の何が駄目だったっていうんだよ。気が弱そうな奴なのにしっかり断るとか意味わかんねえよ。なぁ階堂、お前もそう思わないか?」


「俺に聞かれてもな。最初のデートで何かが違うと判断されたんだろ」


「チッ……! どいつもこいつも」


 江並があからさまに不機嫌になった。なんだろう、話せば話すほど印象が悪くなっていく。初対面の時の気さくな江並はどこに行ったんだ。


(ん? もしかして素の江並ってバッドエンドに向かってるのか?)


 もしそうだとしたら一大事だ。なぜなら原作のバッドエンドは卒業の日に男数人だけでカラオケに行き、声を枯らすというものだから。このままだと俺はその男達の中に含まれてしまう。


 モブの最大の見せ場がそれだなんて嫌すぎる。俺も彼女なしで卒業はしたくないぞ。五年も高校生活を送ってさすがにそれは悲しい。


 江並との会話が終了した。だって不機嫌になったんだから。こういう時は刺激しないに限る。


(なんか気まずいな)


 文月さんから話を聞いて知ってたのに、俺が江並に聞いたからなのか? でもまだ実際に聞いてみないとどうなるか分からなかったからな。


「ごめんお待たせー」


 ここで救世主、朝陽奈さんの登場だ。タイミングが絶妙すぎる。マジで神。


 朝陽奈さんが居てくれるだけで空気がガラッと変わった。その人が持ってる空気感ってものがあると思うんだ。


「あれ? 蓮二(れんじ)と階堂くん、何かあった?」


「別に何もねえよ、なぁ階堂」


「ああ。普通に話してただけだよ」


「そう? 私の思い過ごしかな」


 朝陽奈さんってそういう空気を感じ取ることに敏感なんだろうか。


 それから数時間が経ち、時刻は午後六時。


「もうこんな時間か。そろそろ帰らないと」


 今日は土曜だが、俺はともかく朝陽奈さんの帰りが遅くなるわけにはいかない。


陽香(はるか)も帰るのか?」


「そうだね、あまり遅くなるとお母さんに怒られちゃう」


「昔みたいに泊まってもいいんだぞ」


「うーん、蓮二のお父さんとお母さんに悪いからやめとこっかな」


「それなら心配ないって。両親は旅行に行ってるから。昔みたいにゲームでもしようぜ」


 おいおいマジかよ。そんな状況で朝陽奈さんを誘ってただなんて、本当に危なかったんじゃないか?


「ごめんね、やっぱり帰るよ。でもありがとう」


「そうか。だったら家まで送るぞ」


「それは俺がするよ。朝陽奈さんと帰る方向は同じだから」


「でも階堂は陽香の家を知らないだろ?」


「確かに朝陽奈さんがここまででいいって言ったところまでにはなるかな」


「そうだろ? 俺に任せとけって。陽香もそれでいいよな?」


「わざわざ外に出てもらうのも悪いから大丈夫だよ。それに階堂くんが帰るついでみたいなものだから」


「……まあ陽香がそう言うなら」


 江並は渋々ながらも了承したようだ。なんだか必死のように見えたな。


 

 そして俺は朝陽奈さんと帰路についた。五月下旬とはいえ帰る途中には辺りが暗くなってくるだろう。


 雑談しながら歩いて行くうちに、いつもの分かれ道に差し掛かった。一緒に下校する時もここで分かれることになる。


「もう着いたのか」


 それはあっという間だった。でもここからも人通りが多いし俺がいなくても大丈夫だろう。


「もう終わりなの? 私の家まで送ってほしいなー」


「え、本当に? 朝陽奈さんは気にしない?」


「なんのこと?」


「俺に家の場所を教えること」


 ただのクラスメイトに家バレは避けたいだろうから。


「えー、そんなの気にしないよー。階堂くんってなんだか信用できるんだ」


「そう? それなら家まで送らせてもらおうかな」


 こうして朝陽奈さんの家まで楽しく話しながら歩き、家の前に着いた。


「階堂くん、今日は私のお願いを聞いてくれてありがとう」


「俺にできることならまた声をかけて」


「うん。……ね、階堂くん。さっきまでの私たち、まるでカップルみたいだったね。いろいろ想像しちゃった」


「そう見えたかもね。じゃあまた学校で」


「うん、バイバイ」


 それから一人で暗くなった道を歩く。さっきは冷静に返したが、まるでカップルみたいだと思ったのは俺もだった。


(ん? 朝陽奈さんが想像した……?)


 朝陽奈さんはきっと今から自分の部屋に一人きりになるだろう。つまり何をしても誰にも見られない。

 だからたとえつい手が伸びちゃったとしても、それを()める者はいないのだ。


(ま、そんなワケないか)

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