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ギャルゲーのモブに転生したけどまだ発売されてないR-18バージョンだった  作者: 猫野 ジム


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第1話 まさかメインヒロインがこんなことになってるなんて

 春休みが終わり、高校二年生としての生活が始まろうとしている。まぁ今まで通ってた学校じゃないんだけど。


 でも転校はしていない。転校してないのに通う学校が変わるなんてありえないだろう、普通なら。


 なんと俺はギャルゲーの世界に転生したんだ。……全然普通じゃなかった。だったら仕方ないね。


 なんて軽く流しているけど、気がついた時はそれはもう慌てたもんだ。

 そして少しだけこうも思った。「主人公じゃないのかよ!」と。


 俺が転生したのはゲームのモブキャラ。グラフィックだと前髪で目が隠れてるとか、下手すればシルエットで済まされてしまいそうな、そんな存在。

 だってゲームにこんなキャラ出てこないんだから。


 持ち物から名前は階堂かいどう 竜一りゅういちであるということは分かっている。つい間違えがちだが二階堂ではない。どうやら二階建てではないようだ。


 もちろん本名じゃないが今の俺はそのキャラクターなので、自分は階堂なんだと言い聞かせている。


 このギャルゲー、最新作というわけじゃないけどネットにある数多(あまた)の『ギャルゲーおすすめランキング』では、割と上位をキープし続けている作品だ。

 そして発売当時はその界隈でちょっとした話題になった。


 その理由は、今までR-18指定のゲームしか出していなかったメーカーが、そういった要素のない全年齢版を発売した初めての作品だから。


 普通の高校生活を三年間送る間に彼女を作るという、王道ともいえるごく普通の恋愛シミュレーションゲーム。その出来の良さやメーカーの実績で売れたのだと俺は思っている。


 前世での俺は高校を卒業して社会人になってから一年も経ってなかったので、特に何も起きず本当にモブキャラだった高校生活をやり直すつもりで再プレイしてる最中だったんだ。


 そんなある日、ネットでとある書き込みを見つけた。それはそのゲームのR-18バージョンが発売される予定であるというもの。18禁というやつだ。


 誰かが適当な書き込みをしただけなのか、それとも関係者が情報をお漏らししたのかは分からないが、そういった要望があっても不思議じゃないなとは思う。


 もともとはそういう作品を作ってるメーカーだし、そうじゃない作品でもヒロイン達のあんなことやこんなことを想像したことがある人はいるんじゃないだろうか? はい、それは俺です。


 まぁネットでも賛否両論で、『待ってた!』・『さすがメーカーは分かってる』といった好意的なものと、『エロ要素は邪魔にしかならない』・『プレイヤーはヒロイン達に萌えるが作品は炎上して燃えるだろうな(笑)』といった否定的なものがある。


 しかしよく考えてみよう。R-18バージョンとはおそらく、全年齢版には無かったシーンが描かれるということだろう。


 それは主人公とヒロインが恋人同士になった後の話。付き合ってる二人のそういうシーンが描かれるのだと思われる。


 だがそれはごく自然なことで、お互いを想いあっているからこそ。

 その気持ちは尊いものであるはずで、それをエロいの一言で片付けてしまうなんてことが、いったい誰にできるというのだろう。

 

 どっちにしても正確な情報がない限り、俺としては半信半疑だ。


(とにかく事実は事実として受け入れないと)



 登校した俺は二年生の教室へと向かう。ゲームでは入学からだけど、俺にとっては今日からがニューゲーム。


 教室に入り指定されてる自分の席についた。俺の席は一番後ろの窓際。いわゆる主人公席と呼ばれてる位置だ。


「俺は主人公じゃないのになぁ」なんて考えていると、前の席に座る男子が振り向き話しかけてきた。


「俺は江並(えなみ)っていうんだ。これから一年間よろしくな!」


「こちらこそよろしく」


 声をかけてきたのは江並えなみ 蓮二れんじ。このゲームの主人公だ。ゲームを通して知ってはいたが、容姿についての記述は特になかった。


 こうして実際に見るとイケメンで、名前は江並だけど全然『並』じゃなかった。


 前世では俺もモブだったが、男女問わずクラスの陽キャと関わることなんて三年間なかったから、少し戸惑ってしまう。


(しかし困ったな、記憶が無いぞ……)


 俺は転生したがそれはつい最近のことで、この世界での以前の記憶が無いからゲーム知識で何とかするしかない。


 そしてこのクラスにはもう一人、決して無視できない人物がいる。俺達とは少し離れた席に座っている女の子。


 黒のストレートロングヘアーに透き通るような白さの肌。容姿端麗、文武両道で性格は明るくて素直。八方美人じゃなく、本心から誰にでも優しく丁寧な対応をする。


 このゲームのメインヒロインである、朝陽奈あさひな 陽香はるかだ。清楚系というのだろうか。

 そしてプレイヤーからの人気ナンバーワン。俺の推しキャラクターでもある。


 そんな子がすぐ近くにいる。これから一年間のモブ生活、きっとそれだけで楽しいものになるだろう。


 そりゃあできれば俺もモテたいし、せっかく高校生に戻ったんだから前世と同じことにはしたくない。

 でも俺が変に動いたせいで主人公に影響が出たら悪いからなぁ。


(それは追々考えるとするかな)



 そして昼になった。今日の学校は昼までで全部活が休みなので、教室からは続々と生徒の姿が減っていく。


 俺は一人で校内を散策することにした。ゲームだと行き先を選択するだけでいいが、俺にとっては初見。実際に見ておかないと多分迷子になる。


 一通りの散策を終えた頃、教室にカバンを置きっぱなしだということに気がついた。貴重品は肌身離さず持っているが、不用心だったと反省しながら教室に戻る。


(さすがに誰もいないよな)


 静まり返った教室に入り、真っ先に自分の席へ向かう途中、俺の前の席、つまり江並の席に誰かが座っていることに気がついた。


(朝陽奈さんじゃないか。江並の席で何やってるんだ?)


 少し(うつむ)いたまま何かに集中しているみたいなので、邪魔しないよう忍び足気味に自分の席に近づく。

 するとどうやら朝陽奈さんが俺に気がついたようで、素早く顔を上げてこっちを見てきた。


 しかもそのスピードは爆速で、まるで二度見する時のような速さ。

 それになんだかスカートの辺りから急いで手を離してたような気がする。


「見た!?」


 朝陽奈さんが俺に問う。


「えっ……と、何を?」


「そ、そっか。だったら安心だね! 一応説明すると未遂だからね!」


「未遂?」


「想像してただけってことだよ。さすがに学校では……ね。でもちょっと手を伸ばしかけたけど……」


 いったいどこにだろう? そういえばスカートの中に手を伸ばしてたような気もするが、そんなわけないか。

 しかし意味が分からない。それに目のやり場に非常に困る。


(スカートめくれてませんかね……?)


 見えてはないがなかなかに際どいラインまで攻めている。それはまるでショートパンツのよう。制服はひざが見えるかどうかというスカート丈のはずだが、普通に座っただけではここまでにはならないはず。何か理由があるのか。


 直視すると変な誤解を生みかねない。なので必然的に朝陽奈さんの目をしっかり見て話してる感じになっていた。


 これ以上深く考えてはいけないと俺の第六感が全力で警鐘を鳴らしている。こんなシーンが原作にあるわけない。メインヒロインはこんなことしない。


 そして脳内で急激に湧き上がる仮説。


(R-18バージョン……)


 そうとしか思えない。なんてこった、噂は本当だったのか。だとしても、こういうことじゃないでしょうよ……。


 てっきり恋人同士になった主人公とヒロインの追加シーンや、その後を描いてる健全なものだと思ってたのに、まさかメインヒロインがこんなことになってるなんて。きっと炎上しただろうな、これ。

読んでくださりありがとうございます!

一日あたり複数話更新を予定しています。

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