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ELECTLIZE-VOLT  作者: VIKASH


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1/1

一小節 蒙昧

Dmin 




 なんでだ。



 撃たれたはずだろ、俺は。



 確かに感じた。

 焼けるような衝撃と、体の奥に沈む鈍い痛み。

 あれは夢じゃない。



 なのに——



「なんで、生きてる」



 答えは返ってこない。



 喉が渇く。いや、違う。

 これは渇きじゃない。

 “現実が剥がれていく感じ”だ。



 思考が追いつかない。

 理解しようとするほど、足場が崩れる。



 だから俺は、考えるのをやめた。



 ……そうでもしないと、壊れそうだった。



A



「はっ――」



 息を吐くと同時に、目が覚めた。



 ベッドの上。

 見慣れない天井。



 いや——違う。



 天井が、近い。



 視界をずらして気づく。



 俺は、天井に立っていた。



 重力が、反転している。




「は……?」




 足元——いや、頭上には床がある。

 ベッドも、家具も、全部“逆さ”だ。



 なのに、俺だけが普通に立っている。



 気持ちが悪い。



 現実が、俺を拒絶しているみたいだ。



G



 机の上に、朝食が置いてあった。



 目玉焼き。コーヒー。マグカップ。



 ただし——全部おかしい。



 目玉焼きは虹色に光り、

 コーヒーは白く濁り、

 マグカップは、闇みたいに黒い。




「ネガ……?」




 写真の反転みたいな世界。



 いや、そんなレベルじゃない。

 これは“作られている”。



 誰かに。



B



「うふふふ」



 頭の奥で、笑い声がした。



 女の声だ。



 ねっとりと、まとわりつくような。



「……誰だ」



 言ったつもりだった。



 でも、声が出ていない。



 喉が動かない。



 音が、存在しない。



Dmin



 用意されていた服に着替える。



 黒いフードを深く被ると、鏡が目に入った。



 ……俺がいる。



 いや、違う。



 白い。



 肌が黒く沈み、

 目だけが異様に白い。



 反転しているのは、世界だけじゃない。



 俺もだ。



「……ふざけんなよ」



 ようやく声が出た。



 遅すぎる。



G



 扉を開ける。



 そこに——俺がいた。



 ベッドで、眠っている。



 さっきの俺だ。



「……は?」



 理解が追いつかない。



 近づこうとした、その瞬間。



「うふふふ」



 笑い声。



 視界が歪む。



A



 気づけば、また扉の前に立っていた。



 リセット。



 直感で理解した。



 これは、繰り返している。



「……条件があるのか?」



 思わず呟く。



 今度は、ちゃんと声になった。



B



 もう一度、扉を開ける。



 今度は違う場所だった。



 水の匂いがする。



 静かな池のほとり。



 その中央に——



 ひとりの少女が立っていた。



 ツインテール。



 風もないのに、髪だけが揺れている。



 こっちを見ている。



 最初から、ずっと。



Dmin



「……ここは、どこだ」



 ようやく言葉が出た。



 少女は微笑む。



 あの笑い声と、同じ気配。



「うふふふ」



 やっぱり、お前か。



 そう思った瞬間。



 少女が、口を開いた。



G



「ここはね——」



 一歩、近づく。



 距離が、やけに遠い。



 なのに、声はすぐそばで聞こえる。



A



「“蒙昧”だよ」



B



 世界が、また歪んだ。



Dmin



 俺は理解する。



 ここから出るには、

 何かを見つけなきゃいけない。



 あの笑い声の正体か。

 この世界のルールか。



 それとも——俺自身か。






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