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04話 冒険者になろ?

 渉が王の前に連れて来られると、あの四人もいた。

 王は眉間に(しわ)がある。


「渉よ、なぜ貴様が囚われているかわかるか?」

「なぜでしょうか?!」


 訳のわからないまま連れてこられた渉は、王の問いに即答した。が、心当たりといえば、今朝部屋にあった金を取ったことを渉は思い出した。

 渉の返事を聞いた王は、呆れたように言った。


「知らんのか……」


 違うと思いながらも、落胆した王に渉は、今朝のことを話すことにした。


「あの……もしかして、部屋にあった金のことだったりします?」

「何の話だ…?部屋にあったのは金ではなく、代々王家に受け継いだ魔纏具(アルカナギヤ)が勇者四人分あったのだ。……だがどうして金があるのだ?」



魔纒具(アルカナギア)

 この国に代々受け継がれている物。

 勇者が身に付けると、その者の本質に応じた力を具現化させる。 



 魔纏具?!名前かっこいいな——ってなにそれ、初耳だけど?と渉が思うと、王は言った。


「モチモチよ、渉の持ち物をもう一度確認せよ」


 宰相はズボンのポッケトから手を出し、王に返事をした。


「はは!!」


 魔纏具なんて持ってないのに……ていうか、モチモチとかふざけた名前の宰相、ポッケから何か出してなかったか?

 渉は宰相の怪しい動きが見えたが、今更何をしても無意味だと思った。

 宰相が渉に近づき、荷物を確認する。

 すると、宰相は魔法書や雑貨などが入っている袋に拳を握った状態で中に突っ込んだ。

 ゴソゴソと袋の中を物色し、何かを見つけたように目を見開いた。

 そして宰相は、勢いよく言い放った。


「——これは!魔纏具ではありませんか?!」

「なに?!……」


 宰相が袋から魔纏具を出すと、それはなんの装飾もない指輪だった。

 王は驚いたような声を出すと、その反応は一瞬にして消え去っていた。

 続けて宰相が口を開く。


「やはり、私は思ってたんですよ。あなた……いいえ、貴様のような犯罪者は即刻処刑!王よ、異論ございませんよね?」


 なぜ自分の持ち物から魔纏具があるか。

 あの宰相やっぱ何か持ってると思ったら、魔纏具だったのか。


「モチモチ、そこにあるのは一つなのか?」

「持っていたのは一つだったようです。他はこやつが城下にいっている間に……」

「そうか——」と王が口を開くや否や、渉は言う。

「俺はやってない‼︎」


 渉は弁明するべく、宰相が怪しいと言ったが、信じてはもらえなかった。


「宰相であるモチモチ・モッコリーニは代々王に使える家系。だからこそ信用に足る人物なのだ」

「俺は見たんだ、宰相は元々拳の中に魔纏具を持ってたんだ」

「戯言を抜かすでない、これ以上の会話は不必要。渉 一条に残りの魔纏具のありかを吐かせたのち、処刑しておけ……」


 そこに、勇者の一人が口を挟んだ。


「いつまで茶番を見せられたらいいんだ……。そいつは魔纏具を盗んでない、だから処刑する必要もないってことだ」

 (すめらぎ)が渉の処刑に反対する。

 王は「どうしてだ」と聞き返すと、思わぬ返答が返って来た。


「……僕もう持ってるし。ほら、これだよ」


 皇の手から出現したものは、異世界ならではの剣だった。

 渉は胸を高鳴らせていた。

 異世界すげーな、て言うかなんで持ってんだよ。そう思うと、心を読まれたのか、皇は答える。


「朝一番に起きて、机の上に置かれてたんだ。それを一つ持ってみると、なんかできた」


 皇って結構異世界知ってるなー。と、渉が思うと、皇は続けて言った。


「それから部屋を出るとこいつがいたんだ。なんか様子がキモかったのを覚えてる」


 こいつっていうのは宰相だな…あと様子がキモいってなんだよ。

 渉は疑問を抱えつつ、王は言った。


「そうか。つまり皇、そなたが部屋を出た後、他四人が寝ているか、もしくは渉が寝ている隙にすり替えたということだな」

「そうなるな」


 そこで、勇者の中で最年長の冴島が割って入った。


「俺が起きたのは皇の後で、その時には無かったと思う。でも部屋の前に宰相がいたのは一緒だな。少しニヤついてたな」


 冴島の言葉を聞いた宰相顔色は、次第に悪くなっていた。


 もう黒でしょこれ。ここからの逃げ道ないよ、モッチーくん……

 渉は心の中でつけたあだ名と共にお別れをした。まだ別れてないけど……


 そこで、王は宰相の疑いを晴らすべく、尋問室へと連れ去っていった。


「うむ。わかった……衛兵!宰相モチモチ・モッコリーニを連れてゆけ!そなたは勇者を味方につけられなかったことが仇となったな」

「そんなぁ……違います、私はやっておりませぬ!!……」


 宰相は衛兵たちに連れてかれ、弁明の声は王には届かなかった。

 一区切りがついたところで、王が口を開いた。


「さて渉、お主を危うく処刑するところだったな。すまないことをした……」

「気にしないでください!俺が助かったのはあの二人の言葉あってのことですし……」

「そうか、お主がそう言うならそうしておこう。——して、お金の件はどうなったの()()?」

「あ———」


 まずい、今日知り合った人にあげたって正直に言うか?でも黙ってたところでないものはないんだ。言うしかない……

 渉は覚悟を決め、喉を鳴らした。


「——コホン。えーっとですね、城下町で仲良くなった人に渡しちゃいました……」

「はぁ……」


 王はため息をつくと、呆れたように言った。それとあの四人も王と同様な反応をした。


「部屋からお金を取ったことはいいとして、それを他人に渡すとは……」

「すいません」

「よい。だがそのような行いをするのならば勇者たちにとって足手纏い……よって、これより城への立ち入りを一切禁ずる」

「二日間、お世話になりました」


 去り際にそう言い残した渉は、城を出た。

 外に出ると、まだ昼過ぎくらいだろうか、太陽はまだ元気だった。


「これからどうするべきか……」


 異世界転移で、家に帰ろうとも思ったが、なにやら勿体無い気がしたので、やめといた。

 そのまま城下町に向かって歩いた。


「なーに悩んでるの?」


 渉は背中をワシっと掴まれ、勢いよく引き戻されてビビった。

 だが、その声には聞き覚えがあった。


「サフィル?!、なんでここに——」

「めっちゃ探したんだよ、そりゃもちろんこんな大金を返しに来たからに決まってるでしょ」


 渉があの時渡したお金を、すぐに返せなかったのには理由があった。

 時は遡り、酒場での出来事。


「なーサフィル……あいつをパーティーに誘わねぇのか?」


 ついさっきまで酔い潰れていた男がそう言うと、サフィルは「もちろん、そのつもりだったわよ……」


 酔っ払いは、ポカンとした顔で、サフィルを見ている。


「誘うタイミング逃しちゃった〜……」


 それからサフィルが渉を探すのは早かったが、探すに至るまでに時間を要したのだった。がそれは別の話である。

 時は戻り、渉はサフィルと再会した。


「そんなに受け取りたくなかったら、あのあとすぐに返しに来たらよかったんじゃ……」

「……ロジルをちょっと宿に預けただけだよ」


 渉はサフィルの答えるまでに間があったことを突っ込まないようにした。


「はい、これ返すね」

「あ、うん。わざわざ持ってきてくれてありがとな」


 お金は戻ってきたが、行くあてがなかった。

 そのことをサフィルに打ち明けることにした。


「今城を追い出されたんだ、だから行くあてがなくって……」


 その言葉を待っていたかのような口ぶりでサフィルは言った。


「ちょうどよかった。なら、冒険者なろ?」


 渉は、次の瞬間にはもう何を言うか決まっていた。

 ここで断ったら、一生後悔する気がした。

「……なるよ。冒険者」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

少しずつ物語が動き出していきますので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

感想などもいただけたら励みになります。

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