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03話 俺何もやってないんだけど?

 渉以外の四人のステイタスを見ると、名前・レベル・能力値・スキルの類?の項目が表示されていた。

 そのほかの項目に『職業:勇者』とあった。

 もちろん、渉に職業なんて項目もない。


「これは流石に……」


 王や宰相、周りにいる貴族たちが渉について話していた。

 それは、渉の処遇についてだろうか。


「貴様、それはなんと書いてあるのだ——?!」

「一条…渉、俺の……名前ですね」


 「あはは……」と渉はなんとかその場の空気を和ませようとしたが、案の定和むはずもなかった。

 そのせいでみんな寝り、かえって空気を悪くしてしまった。

 渉は、状況を整理していた。

 大抵この場合、王に金だけもらってとんずらするのが定番だと思うんだが、俺は違う……異世界転移で、いつでも帰れる。——なら少しだけ流れに身を任せてみるか。

 王が宰相と話し合いが終わり、渉に選択肢を与えた。

 

「一条と言ったか……貴様に四極柱の勇者たちの補佐をするか、死ぬかのどちらかだ。さぁ選べ!」


 ……選択させる気、あるのかよ。

 そう言い返したい気持ちを、渉は飲み込んだ。


「もちろん、補佐します」

「そうか!よくぞ言ってくれた。ならこれからは勇者の補佐を努めよ」

「はは!」

 

 役になりきった渉は楽しげにそう言うと、勇者である四人は渉を見て笑っていた。


「改めて、其方たち四人の名を聞こう!」

冴島(さえじま)湊斗(みなと)、18だ」

来栖(くるす)壮語(そうご)、16歳!」

(すめらぎ)(れい)、17……」

夜鷹(よだか)武蔵(むさし)、17歳」


 王は四人の勇者に名を聞くと、渉は思った。

 おい……名前濃すぎるだろ。どこのラノベ主人公で、四人も異世界召喚されてんだ。俺場違い感半端ないな……。

 王は勇者の名を聞くと、勇者の役目を四人と補佐一人に教えた。

 説明が長ったらしく、学校の校長のようなスピーチを聞かされてるみたいだった。

 渉は話を聞き終わり整理すると、この世界の最北端・南端・西端・東端にあわせて四つの塔があり、その塔からは恐嵐という厄災が起こり、モンスターが塔から溢れ出て、国を滅ぼすと言う。

 しかし、厄災が起こる前に塔の頂上に着くと、平和が訪れると言う。

 

「おい、おっさん……その塔?の頂上いったらさー、なんかもらえるの?」


 来栖壮吾がそう言うと、流石の王でも勇者を不敬罪にはできないらしい。


「おっほん……報酬なら金を用意しよう」

「どれくらい?」

「豪邸を一つと、あまりある人生で贅沢できるくらいだな」


 勇者たちはやる気を出したように見えた。

 しかしそれぞれ初対面で、あまり会話が見られない勇者たちだった。

 すると王は、夜も近いと四極柱の勇者たちとその補佐の渉を、寝室へと向かわせた。


 寝室に着くと、しばらくして冴島が渉に向かって話し出した。


「渉だっけ?さっきのすごかったよ」

「……なんの話ですか?」


 すごいことをした身に覚えがない渉は、なんだろうと思わず眉をひそめた。

 すると冴島はなんのことか渉に教えた。


「あれだよ。王様から言われたことに、よくビビらずに答えたよね」

「そうだよ!すごかったよねー」


 来栖が冴島の言葉に乗っかり、渉を誉める。

 

「流石にあの状況で死ぬなんて選べないだろ?」

「ですよね?」


 夜鷹が渉にそう質問すると、渉は当然のことを言ったまでと言わんばかりに言った。

 そんな雑談をしていると、ドアからノック音が聞こえて来た。


「お食事をご用意しました」


 その夕食の献立は見たこともないほどに豪華でたくさんの料理が部屋に用意されて行った。

 それから、渉を含めた5人は自己紹介をし、食事しながら、夕食を食べた。


 たらふく食った渉は食器洗いを忘れ、その夜ぐっすりと眠った。


 次の朝、渉が起きた時には四人はいなくなっていた。

 これはチャンスだと思い、渉は偶然城の兵に出会わず、城を抜け出すことができた。

 城下町に出ると、たくさんの人で賑わっていた。

 渉は朝起きた時、机の上に金が入った袋があったから、持ってきておいて正解だった。

 すると渉は気になる屋台の食べ物を片っ端から食べ歩き、剣や盾が売ってる鍛冶屋では、目に止まった古そうな剣を買うことにした。

 魔法書が売られている店では、適当に気になる本だけ買うことにし、本屋を出た。

 

「ねーねー……君、その魔法書と剣どうするの?」

「え……っと、買ってみただけっていうか?」

「使わないんだ……」


 渉の背後から声をかけたのは、誰が見ても間違いなく美少女だった。

 その子はニコっと、笑みを浮かべて渉を見てくる。

 

「そうだけど……ていうか、君誰?!」

「サフィルよ。君、暇なら付き合ってちょうだい」

「渉……」


 目の前のサフィルに緊張しているのか、渉は自分の名前ですら、はっきり言えなくなっていた。

 サフィルは「クスッ」と笑い、渉の声が聞こえ、名前で呼ばれた。


「ワタル……めずらいしい名前ね。で、どう?渉は付き合ってくれるの?」


 付き合うと言う言葉に渉は「うん」となんとなく頷き、サフィルについて行った。

 少しすると、酒場みたいなところに入り、店員と話しているサフィルから、「待ち合わせ」と聞こえた。

 ていうか、なんで俺を連れてきたんだ?と考えていると、向かっている席には先に人が座っていた。

 

「お、ようやく来たか……って何連れてきてんだ?」

「たまたまよ、気になったから連れてきちゃった」

「おいおい……まぁいいか」


 切り替えが早!、ていうか本当について来てよかったのか?と思った渉だったが、面白そうと思い、気にならなくなった。


「自己紹介がまだだったな。俺の名はラック、よろしくな」

「俺は渉、よろしくです」


 こう言う時、なんて言うかわからなかった渉は、変な口調になってしまった。

 ロジルが渉に笑うように声をかけた。


「気楽に行こうぜ、渉!」

「まぁまぁ、初対面ですから、許してやってくださいよ」


 サフィルが冗談を言うように渉を庇った。

 あなたもさっき会ったばかりでしょうが!と渉は内心サフィルにツッコミを入れていると、サフィルから渉が思っていることを当てられてしまう。


「ねー渉、今私のこと馬鹿って思ったでしょ——」

「そんなことないって」


 サフィルが言ったことを食い気味に渉は否定した。

 それから、酒場で食べ物を頼み、いろいろな話を聞かせてもらったりして、楽しく食事をした。


 食べ終わった後、一人だけ酒を飲んでいたロジルが渉に話しかけた。


「……渉、一人で帰れっか?」

「大丈夫ですよ」

「そうか、ならもう帰ったほうがいい……」


 酔っているロジルは渉を帰るように言った。

 渉は二人との食事が楽しかったのもあり、あまってる金を出すことにした。


「サフィル、これで足りるかな?」

「こんなに?!食事代って言っても、これの半分以上もあまるよ?!」

「あまった分はあげるよ。じゃあバイバイ」


 そう言った渉は、寝ているロジルと、ポカンと立っているサフィルを見た後、店を出た。

 サフィルか……また会えたらいいな。って連絡先聞こうにも、この世界にそんなもんないよなぁ……そんな思いを巡らせた渉は強い日差しに照らされ城へと戻った。

 少しして城に着いたはいいものの、扉は閉まっていた。

 扉閉まってるから入れないじゃん……と渉はどうしようかと悩んでいると、城の扉が開いた。

 渉は運よく開いたのだと思ったが、世界はそんな甘くはなかった……


「窃盗及び強盗の罪で貴様を拘束する!——捕えろ!!」

「やっぱこうなるのか……」


 城の奥から続々と兵士が現れ、槍を向けられた渉は、内心ため息をついた。

 どうやら、この国は最初から俺を仲間にする気はなかったらしい。

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