つ
柄にもなく、そっと挙手をした。
「僕は……聞いていません。そんな話……」
勇気を振り絞って意見をした。
先生が意外そうな顔で僕を見た。
ずっと咲いていた蜜柑子先生の笑顔が突風にさらされて色をなくす様に。
「翔太くん──話に入れてもらってないの?」
僕は、僕の声は先生が見つめてくれると少しずつだけど開花するんだ。
聞いてもらいたくて口元がウズウズしてくるほどに。
「うん。し、知らないです……だから僕は河東のいつもの意見が聞きたいんです」
「あ、いや。実は俺もこいつらと同じ意見なんだぜ? 自記?」
え、なんで? お前もグルなのか河東。
「それは一体……?」言葉を見失った。
これはホームルームだ。
いじめや差別や偏見を無くす、全員参加のための時間だ。
僕をひとり除け者扱いにしたことがいつの日か仇になって泣くことになるぞ。
先生は意見の食い違う生徒の様子を見て、皆がまとまっていくために丁寧に確認作業をしてくれる。
「どういうことかな? 翔太くんは聞いてないって言ってるよ?」
はい。聞いていませんとも。
やっぱり蜜柑子先生は平等だ。いくら多数決で圧倒票であっても通らないよ。
マジざまあ。
お? 名越が手を上げている。反論するつもりだな。