ち
秀才の話題にはいつも癒されるんだ。だれも異論はないはずだ。
おや?
「はい、先生! 俺たちの意見も聞いて欲しいッス!」
「あら複数でなにか話し合ったみたいね? いいわね!」
あいつ、補習になるのが「クッソだるいぜ~」って言ってた名越じゃないか。
何を勘違いしたらしゃしゃり出て来れるんだよ。相手は校内一の秀才河東だぜ。
「先生、卒業の記念にタイムカプセルをみんなでやりたいんです!」
「え、卒業の記念に……皆で思い出作りに励みたいってことかな?」
そういや女生徒がこの時間帯に下校して居ないことは判っていた。
あいつらのイケメン作りは蜜柑子先生に捧げるためのものだったな。
とびっきりの爽やか青春ボーイを演出しながら名越が笑いかける。
「はぁ──い! そうなんです。みんなで随分と話し合ったんです。そのイベントが昔に終了したことは知っていますけど。将来の自分たちの姿をしっかりと思い描いて形にして残せるものは何かって、一生懸命考えたらみんな、それいいな!ってなって──」
みんなって……僕はそんな話を一度も聞いてないぞ。
反対してやる。絶対邪魔をしてやる。僕は知らされてないんだから。
どうぜもうすぐ卒業だ。
それにかなり昔に禁止事項となったイベントだ。
子供のころのたわごとを大人になってからみんなで見るとか、恥ずかし過ぎる。
いつの時代の行事なんだよ。
卒業の記念と言えば何でも許されるわけじゃない。