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◇
さて先生が教室に戻られたので女生徒たちは挨拶をして、早々に下校を始めた。
男子生徒のホームルームだ。
今日も15分間、沈黙の戦艦で通せばいいだけだ。
蜜柑子先生が教壇に立ち、第一声を発した。
「今日はなにをテーマにお話ししましょうか? みんなが決めていいのよ!」
にこっと微笑んではにかんで見せる。
先生、いま密かにウインクしませんでしたか?
男子全員のハートを根こそぎくり抜くおつもりですか。
くり抜くつもりなら、くり抜いてやって下さい。
そして骨抜きにして二度と減らず口を利けないようにしてやって下さい。
と願わずとも、あいつらは蜜柑子先生の前では蝉の抜け殻も同然だ。
「先生!」
河東が挙手をした。
やっぱりクラス一番の秀才か。
まともな奴が意見を出すのだからただ見守ればいい。
「河東くん。すこし待ってね。みんな彼がテーマを決めてしまっていいの? 今年でもう卒業しちゃうのよ、彼にばかり頼ってないで──」
先生も、いつも同じことを皆にいっている気がするが。
きっとここは多数決で決める流れだよな。
賛同するなら挙手するだけだから、「賛成」する側に挙手をしておく。
秀才の話題はいつも未知数で新鮮さと魅力がある。
彼は僕なんかにでも新世界を提供してくれる。