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「補習ってさ、「綺麗」って言葉を用いちゃダメなアレか?」
「おいおい!「綺麗」は禁句だろ? 聞かせたら余計に耳の奥にこびりついてしまうだろうがっ!」
ああ、そう来るのかよ。
これで間違いなく誰のことかは判明した。
それを口々に言い合って、一体何になるのだ。
同級生がここまで下衆な輩だとは正直、今日まで知らなかったよ。
正直…………僕の味方が一人も居ない。それは薄々気づいていたけど。
そして言われていることがどんなに悔しくても、僕には返す言葉が全く思い浮かばないんだ。
毅然と言い返して、彼らを黙らせるだけの説得力を持つ言葉をまだ知らない。
まるで、この頭は空っぽであるかの様に。言葉を紡ぎ出せないでいた。
なにせ表現は超苦手分野だからな。
何も自分を守ってやる言葉が出てこないんだ。
思い浮かばないのなら、「うがあああっ!」と叫ぶことぐらいは出来るはず。
それはケダモノみたいで抵抗を憶える。というより──。
そんな勇気があるのなら、とっくにそうなっているさ。
でもいつもこうだ。
僕の頭の中の世界と外の世界は光と闇のような関係だ。
ではどっちが光でどっちが闇だ?
嫌な奴らがいて、居たくない空間があるのは外だぞ。
外が汚れで、醜いだけの闇の世界か。
蜜柑子先生は外の世界にいるぞ。
この胸の内に住む蜜柑子先生は実体のない影なのだろうか。
先生が傍に居ないと影は薄れてしまい、やがて消える。
でも存在を忘れなければ消えることはない。
だとしても心の中に恐怖が入り込むのはどうしてだ?
こちらが闇の世界だから、怖れたちが帰還してくるのだろうか。
ここから汚れは生まれてないか。
彼らへの憎しみは清らかだといえるか。