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36話 初めての武器購入

更新お待たせいたしました。最近頭痛や耳鳴りがすごいもので、気圧の変動が落ち着くまではもう少しゆったりさせていただきますね。


「──っしゃぁ!! イケハン再開ぃ!」

「気合いが違いますわ……」


 サービス開始二日目。金曜日午後。

 お腹も満たし、夜ご飯の仕込みも終わり。

 何一つ憂いなくログインした今日の私は無敵だ。

 しかし……。


「……はぁ」

「情緒」

「さすがに起き攻めは無いか」

「日本語でおk」


 前回雑貨屋のおっとりイケメンお兄さんことカリューさんの店を後にし、商業区のど真ん中でログアウトした私たち。

 ログイン直後にイケメンNPCと遭遇しても何らおかしくないシチュエーションではあったが……周囲はNPCよりもプレイヤーの方が多く行き交っていた。


「運命の出会いってのは、忘れた頃にやってくる……か」

「よく分かりませんけど、お姉さまにはオルドフォンスさんがいらっしゃいますわ」

「うむ」


 まずはオルドフォンスさんがいつでも私たちに依頼を振れるように、私たちは着実にレベラップしなければならない。

 そしてそのために装備品を見繕おうと前回ここに来たわけだが……。


「中々武具屋のイケメンは見つからないな」

「シフトがお休みなのかもしれませんわよ」

「なるほどね」


 サービス開始早々イケメン店員を出してしまったら、私と同じイケハン全一にしてプロ騎士の皆さんの武具屋需要が一極集中してしまうことだろう。

 それを見越して武具屋はおじキャラが中心となっている……ということか。


「手厚いな」

「多分違うと思いますけど」

「ならもう、前回行ったところにするか」

「いいと思いますわ」


 以前訪れた店──

 金策のために水ネズミの素材を売ろうと訪れたものの、もっとお得にお金がもらえる納品依頼が無いかギルドへ確認しに行くため、見積もりだけとって途中退店したところだ。


 そこの店員は気の良いアニキで、店に一切の利益をもたらさなかった私たちに嫌な顔一つせず見送ってくれた。

 たとえそれがNPCの使命なのだとしても、いい印象を持ったのだ。


「手持ち13950エル……武器買えるかな~」

「きっと買えますわ」


 私たちはさっそく現場へと直行した。



 ◇◆◇



 大通り沿いに立ち並ぶ店。

 石畳の上を歩きながら一軒一軒に目を通しつつも、目的の場所へと辿りついた。

 水路側である右手は相変わらず賑やかで、ゴンドラや水霊族。時折イルカさんらが優雅に泳いでいる。


「『メルキド』ね」


 マネキンに着せたローブやヴェールといった神秘的な防具が並ぶ店先。

 前回見逃した店名の看板を確認すれば、強い装備が売っていそうな店名であった。かっこいい。


 買い物を終えたらしいプレイヤーとすれ違い入れ替わるように店内へ入ると、またも装備品たちが私たちを出迎えてくれた。


「やっぱりお店ってワクワクしますわよね」

「うむ」


 プロ騎士にとって武具屋とは、切っても切れない存在だ。

 剣や盾、甲冑を購入する場所であるそこは、自分の命を預ける場所とも言えるだろう。

 だからこそ本来、そこにイケメン店員が居てくれるのが望ましかったが……致し方ない。


「──らっしゃい!」


 カウンター前に来ると気のいいアニキがまたも出迎えてくれた。

 40歳前後であろう男性は、今日も元気。

 イケおじももちろんイケハン対象だが、このお兄さんとはどちらかといえば友人関係になりたいといったところ。


「武器を見せて欲しい」

「はいよぉ!」


 アニキがそう言えば、商品売買用のメニュー画面が開く。

 実際に店内で商品を見て回ってもいいのだが、画面一覧で見た方が予算内で買える商品を一目で把握することができるのだ。


「ほう」

「初期装備の次に強い武器は、大体1000エル前後ですわね」


 数回戦闘や依頼をこなせば、回復薬とは別に武器を買える。そのくらいの予算感だろう。まさにRPG序盤といったところだ。

 前回訪れた際には派手なバブルミスティック用の服に目を奪われたが、探せばこのくらいの値段のものもあるってワケ。


 やはりソート(整列)機能がプレイヤーを救う。


 無秩序な中に楽しみを見出すのもまた一興だが、いざ選ぶとなれば『比較』することが不可欠だ。値段、見た目、性能……それらを比較する際に、何らかの順序に基づいてデータが整理されていると非常に助かるというもの。


 ちなみにブラヴェの持ち物画面は自動で素材や回復アイテム毎にソートされている模様。片付けを未来の自分に託すことが大得意な私にとっては、運営に感謝せざるを得ない。


「バブルミスティックの指揮棒は……っと、これか」


 画面内の【アクア・バトン】を選択。

 すると文字列が連なる画面とは別に、武器のビジュアルや性能が別画面で表示された。


「おー」

「色違い?」


 今装備している【ベーシック・バトン】は本当に普通の指揮棒。

 真っ白で細い棒。


 対して【アクア・バトン】は真っ白い棒に、水の流れを表現しているのか螺旋状を描くような青い線が入っている。

 文字通り水の指揮棒ってワケ。


「1200エルね。ヨユーヨユー」

「調子に乗ったらいけませんわよ」


 私は迷わず購入ボタンを押し、早速装備した。


「ではわたくしは──」


 同じくヤナも初期装備の次に強いらしい武器を選ぶ。


 現在ヤナが腰元に装備しているデッキケースっぽい武器、【ベーシック・ケース】。

 真っ黒なスーパー・シンプル・デッキケースだ。

 ウエストポーチのようにベルトで固定している。

 そして新たな武器である【アクア・ケース】をヤナが選ぶと、白地をベースに青い十字線が描かれたようなデッキケースが別画面に表示された。


「マリンテイストってワケ」

「海の青と波しぶきの白でしょうかね」


 ニト=ラナ周辺は海ではなく湖と思われるが……まぁ、細かいところを気にしたら負けだろう。

 もしかしたらもう少し先に進めば海があるやもしれないからな。


「同じく1200エルですわ」

「ほなポチっと」

「ポチッとな」

「まいどありぃ!!」


 私もヤナも、ゲーム内で初めての武具購入を成功させた。

 感無量だ。


 VRMMOという現実に似て非なる空間。

 そこで実際に冒険者として働き得た賃金で、現実に手にする機会がほとんどない武具を入手……。完全に仮想空間を満喫している。


 あまりに順調。

 これはこの先のイケハン活動にも期待が持てるというものだ。


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