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18話 イケハン全一の軍資金、危うし


「早く盾持ってジャスガ(ジャストガード)してぇ~」

「分かりますわ。成功するとアドレナリンがドバーですわよね」


 大きな通り沿いに連なる店の中には、やはりというのか冒険者御用達と思われる武具屋も並ぶ。

 前衛の防具メインで売っている店前を通ると、店のショーケースに立派な盾が並んでいた。

 プロ騎士御用達の装備に違いない。


「ヤナは忍者で刀振り回したいん?」

「そうそう。忍刀のあの長さが好きなんだよなぁ。室内でも振り回せるように想定した、あのサイズ感」


 つい魔女の口調を忘れてしまうほど、忍者の武器に想いを馳せるヤナ。


「──お」

「ここなら良さそうですわね」


 魔法職系の武具を売っていそうな店構え。

 店先にはマネキンに着せたローブやヴェールといった神秘的な装備が並んでいる。

 ショーケースにはヤナの武器である宝玉のデッキケース(仮)や、私の武器である指揮棒も並んでいた。


「どれだけ装飾を施されても、棒なんだよなぁ……」


 持ち手の先に孔雀の羽根のような長い装飾がついていたり、二色がぐるぐるととぐろを巻いているようなスティックであったり。どれもオシャレな指揮棒ではあるのだが、どこまでいっても『棒』の概念からは抜け出せない。


 ──自由


 それはやはり、全てを思い通りにすることではなく、ある一定の枠内において自分の意思で行動できることを指すのだろう。

 自由と無秩序は、同一の存在ではないのだ。


 つまりこの世界がどんなに自由に満ち溢れていても、私が『剣』を『棒』と認識して音符攻撃を飛ばすことはできないのである。


 仕様。


 やはり我々は、この枠組みに囚われた流離人(さすらいびと)なのだ。


「深いな……」

「また何かおっしゃってますわね……」


 運営の意図を充分に汲み取った私は、いざ店内へ。

 扉は元より開かれており、中には数組の冒険者が商品を物色している。

 私とヤナも彼らに混じり素材を売る前にアイテムを眺めてみる。


「ほう……」

「素敵ですわね、お姉さま」


 胴装備……服のコーナーを見て、思わず唸った。

 バブルミスティックの物と思われるタキシードにも、多様なものがあった。

 特に色んな意味で目を惹いたのは、何らかの鱗が表面に張り巡らされたスーツ。

 青と緑の中間……翡翠色とでも言えばいいか。

 そんな綺麗な色をした鱗がびっしりと覆っており、独特の網目模様がなんだか蛇やトカゲのようだ。


 恐らくステータスも純粋な防御力だけではなく、魔法効果をも持っていそうな雰囲気。


「ぬお、25000エル……」

「まぁ。手が出ませんわ」


 やはり金だ。

 リアルだろうがゲームだろうが、金が無ければ始まらない。


 金が無くても出来ることは沢山あるが、生きるだけで金が掛かるのはどこも一緒ってワケ。


 店内を一通り眼で楽しんだものの、現実問題お金が足りない。

 細かいステ値を見ると全てを欲してしまうため、ウィンドウショッピングをするに留めてさっそく本題へ。


「──らっしゃい!」

「素材を売りたいんだが」

「あいよぉ!」


 レジのカウンターに向かうと、元気な人間の商人が応対してくれる。

 歳は40代後半か。

 あいにくと我がセンサーが反応する者ではなかったが、しかし元気な雰囲気が私の気分を高揚させてくれた。


「どれを売るんだい?」


 その合図で売却専用の画面が開く。

 全部を売ると後悔してしまうかもしれないので、一旦『水ネズミの皮』を4個、尻尾を1個選択してみることに。


「それだと合計700エルだよぉ!」

「!」

「皮が100、尻尾が300ですのね」


 お金を稼ぐとは、なんて大変なのだ!


 リアルでも分かり切っていたことなのに、まさかゲーム内でも改めて実感するとは。


「どうします?」

「一旦納品依頼が無いか見た方がいいか……」

「それもそうですわね」

「お客さん、どうしますかい?」

「すまない。一旦キャンセルしたい」

「はいよぉ! またお願いしますね~!」


 嫌な顔一つせずに店員は私のキャンセル申告を受け入れた。

 なんて良心的な店なんだ。

 絶対また来よう。


 店を後にした私とヤナは、もっと効率よくお金と冒険者ランク上げをするために再びギルドを目指して歩いた。


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