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16話 イケハン全一の弱点


「イエーイ」

「レベラー」

『みゅー!』

『キュキュー!』


 私とヤナ、ミューレさんにラッコさんは一同揃って両手を挙げて喜んだ。

 ミューレさんもラッコさんもお手々が小さいので、相当可愛いことになっている。

 可愛すぎて辛い。


「レベル4かぁ。そろそろ中級者だな」

「まだまだ初心者ですわよ」

「ん?」

「お」


 レベルアップと同時にスキルを獲得したログが流れる。

 さっそく確認すると、獲得しただけで効果を発揮するいわゆるパッシブスキルのようだ。


「《カウンターバブル》?」

「泡が反撃するの?」

「どれどれ……。……! 『ラッコさんバリアが展開中、受けたダメージの1割を相手に返す』!」

「おー。いいじゃん」

「モブ戦はあれだけど……ボス戦でこれは強くね?」

「たしかにぃ? でもラッコさんバリア剥がれてたら意味ないし、ボス戦ならすぐ剥がれるだろうから……バリア管理ってやつ?」

「〇〇管理……俺の苦手な言葉だ……」

「一応ゲーマーなんだから頑張れよ」

『キュゥ』

『みゅぅ』


 スタミナ管理、体力管理。MP管理にバフ管理。

 ヤナが好きなジャンルのゲームなら、これに射線管理といった要素まで。

 苦手だ……。

 ヤナと違って数字の羅列を見た瞬間に睡魔が襲ってくる私にとって、非常に苦手な分野である。


 だがタンク専ということはつまり、落ちた(死んだ)らパーティ崩壊の危機になる訳で。

 もちろん、やるさ。

 スキルの打つタイミング、場所取り。安置の確認にパーティ状況の確認その他諸々。

 自分が出来得ることを最大限やるんだが、誰にだって苦手なものはある。


 あらゆるステータスをイケメンハントに極振りしているイケハン全一の私。

 イケハン活動と比べたら気が重いってワケ。

 逆にヤナはこういうのが好きみたいだから、本当ゲーマーにも色々タイプが居るよなぁ。


「わたくしは特に覚えませんでした」

「召喚獣専用スキルあるし、元々スキル多いもんな」


 さてさて……。ヤナの試したいスキルも試し終えたところで、お次は──


「ほな、持ち物管理……ですかな」

「相変わらず仕方なさそうに言いますわね」

「だってカバンからイケメン出てくるわけじゃないし……」

「それはもうホラーですわ」

「ふぅ……」


 もちろん色んなアイテムを見る楽しみもあるが、若干気が重い。

 ただでさえリアル片付けが苦手だというのに、リアルさが売りのVRMMOでお片付け……。


 私たちは、片付けのために生まれたのだろうかと錯覚してしまいそうだ。


「街に戻りましょうか」

「……おう」

「もしかしたらイケメン商人がいるかもしれませんわ」

「さあ今すぐ帰って片付けよう」

「まぁお早い変わり身」

「なにを突っ立っている。こうしている間に、イケメンNPCと濃密に過ごす時間が刻一刻と少なくなっていくのだぞ!」

「チョロいお方ですこと……」


 ふぅ、危ない危ない。

 イケハン全一たる私が、危うくイケメン商人NPCを見逃すところであった。


 オルドフォンスさんの衝撃が大き過ぎて、こう……街中にいる一般イケメンNPCの存在を危うく忘れかけていた。


 片付けは面倒ながら、しかしイケメンが待っているのならば容易いというものだ。


「じゃあ向かうは商店街的な?」

「そうですわねぇ」

「んじゃ」

「レッツゴー」


 私たちはニト・ラナのイケメンNPCが待ち受けるであろう商業施設へと向かうことにした。



 ◇◆◇



「さあ、イケメンを探すぞ」

「荷物の整理ですわよ」


 ミューレさんとラッコさんはご帰還し、ヤナと二人でニト・ラナに舞い戻った。

 ゲーム開始当初、この水の都に足を踏み入れた際に見た大通りを目指して歩く。

 そこには人混みや呼び込みをする人も多く居たため、恐らくプレイヤー御用達の店が立ち並んでいると予想。


「とりあえずあそこに座って荷物を見ませんか?」

「っがねぇなぁ~」


 南門近くのベンチに腰掛け、早速インベントリ画面を開いて荷物をチェック。


「なになにぃ。……『水ネズミの皮』が8、『水ネズミの尻尾』が2。『水ネズミの歯』が2。『水トカゲの皮』が2に、爪が1と」

「こちらもほぼ同じですわ」


 ほうほう。

 ドロップ率にも偏りがあるってワケね。


「……ふぅ」

「あ、イケメンに関係ないからやる気が無くなってますわ」

「こう、片付けをやる気になってもさ。いざ片付けなければならない物達を前にすると……また気が滅入るよな」


 ヤナのおかげでいつも綺麗なリビングとは対照的な自室を思い浮かべる。


「頑張ってください、もうすぐイケメンに会えますわよ。多分」

「『多分』を『確実』にする者……それが、イケメンハンター」

「なんでもいいので行きましょう」


 再び商店街を目指して歩く。

 石畳の道と水路のコントラストが、本当に異国の地に来たかのようで素晴らしい。

 ありがとう、ブラエ・ヴェルト。


 そういえば、この辺りだったな──


「あの時のイケメン、元気かな……」

「あの時?」

「ギルドの場所聞いた、ちょっと治安のわるそうなイケメン」

「ああ、あの黒髪長髪の……」


 ギルドの場所を聞くためにイケメンNPCを探していたところ、対面の人混みの中からスーパー・スタイル良・美形NPCが歩いて来た。


 完全にマチあり(※マッチングありがとう)案件だったため、とっ捕まえてギルドの場所を聞いたってワケ。

 スタイルもさることながら、お顔も良すぎました。


「明らかに不審者でしたわよね」

「まぁ、多少目つきは悪かったが……。しかし、お顔とスタイルが良すぎるだけで不審者扱いはいただけないな」

「あなたのことですけれど」

「なにぃ!?」


 ただ道行くイケメンを捕まえただけだというのに……。

 なんたる暴言だ!


「解せぬ」

「余裕で解せますわよ」


 ヤナとあーだこーだいいつつ、商業エリアを目指して歩いた。


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