変な人は、変な趣味を持つものなのね
私はアルビノとして生まれた。
名前すら与えられず、要らない子を扱いされた。
魔術師に売られなかったのだけは、幸いだったと思う。
けれど家族から虐待されたのは、正直を言えば辛かった。
そしてある日、『お人好し公爵様』として有名な人の元に捨てられた。
『おいで、今日から君はオレのモノだ』
その人は本当に私を拾った。
お風呂に入れられて、痛んだ髪を切りそろえられ、服を着せられた。
診察と治療を受けて、食事を与えられた。
そして、一番欲しかったものを与えられた。
『フォルトゥーナ』
一度拒絶したのに、名前を与えられた。
一番欲しかったものだった。
貴方に幸運を、なんてなんて優しい名前だろう。
けれどだからこそわからない。
私を拾ってなんのメリットがあるというのだろうか。
『メリットなんて一つもないよ』
『オレは君を売る気はないよ』
『君を助けてあげたかったから』
なんて傲慢な人だろう。
それを口に出せば、叱責を受けるどころか頷かれてしまった。
思わぬ反応に驚く。
『オレはたくさんのモノを持っている。地位、権力、お金、才能、そして人脈。特に人脈には自信がある。優れた使用人、慕ってくれる平民たち、助けた結果忠誠を尽くしてくれる元棄民たち、よく取引する信用のできる商人や腕のいい医者。オレをよく思わない貴族もいるが、尊敬して慕ってくれているらしい貴族もいる。これで傲慢にならないわけがない』
『ここまで恵まれていて自信家にならない理由があるかい?』
なんてナルシストだろう。
でも、そうなるのもわかる。
彼の言うことは恐らく本当なのだろうし、それであれば思い上がりではなく本当に恵まれた人なのだろう。
『それだから、恵まれたオレは恵まれない人たちが可哀想で仕方がないんだ。オレはみんなを助けてあげたい。この世の中には可哀想な人たちで溢れている。だからできる限りのことをしたい』
なんて人だろう。
すごく変わっている。
お人好し呼ばわりされるわけね。
今までよく悪い人に食い物にされなかったものね。
呆れた目を向ければ、不思議そうな顔をされた。