ねえ、オレのそばを離れないでおくれよ
「フォル、ひとつ聞いていい?」
「なにかしら」
「フォルは将来はどうするつもりなの?」
あれから毎日時間をとって、もはや恒例となったお茶の時間。
オレの突拍子も無い質問にきょとんとするフォル。
けれど自分のことなのに、なんでもないように言った。
「考えていないわ。だってそれを決めるのは私じゃなくてクリオだもの」
「そっか」
思っていた通りの返答。
オレはフォルと目を合わせて言った。
「ならさ、このままずっとオレと一緒にいておくれよ」
「ええ、クリオが望むなら」
「オレが望むなら、か」
ならば君に呪縛を与えよう。
オレから離れていかないように。
「ねえ、オレのそばを離れないでおくれよ」
「それは一生?」
「そう、一生」
彼女は少し間をおいて、それから優しく微笑んだ。
「貴方がそれを望むなら」
「望むに決まってる」
「なら、一生一緒ね」
フォルはオレに懐いてくれているから、こう言えばオレから離れていかない。
わかっていてこんな狡い言い方をするオレは、現状保護者をやっている身としてはダメなんだろう。
「…けれど、ひとつ聞いていいかしら」
「なに?」
「最近の貴方、おかしいわよね」
「うん?」
「まるで私に執着しているみたい」
おや、バレていた。
にっこり笑えば、フォルは呆れた顔をする。
「それはどの種類の感情なの」
「どの種類だと思う?」
「どうかしら。保護者…親代りとしてみたいなもの?それだけではないの?」
「多分それだけではないね。オレも君を殺人アメーバに奪われそうになって自覚したんだけどね」
「あーもう、貴方手遅れね」
フォルはため息をつく。
けれどオレから離れていく様子はない。
「逃げなくていいのかい?世間的にはオレ、結構な変態扱いされるもんだと思うけど」
「そうね、変態だと思うわ。十二歳差よ?極東の島国の干支というものならちょうど一回り」
「おや、そんな知識も身につけたんだね」
「普段暇すぎて書庫を漁っているもの」
「それでも一緒にいてくれるかい?」
問えばなんでもないことのように頷かれる。
「ええ、だってそれが貴方の望みなら私が叶えない理由がないもの」
「ふふ、よかった」
わかっていたことだけれど、嬉しいな。




