可愛くて仕方がない
可哀想なフォル。
可愛いフォル。
賢いフォル。
魔術書を片っ端から与えたら、フォルは三ヶ月で読破してしまった。
フォルは天才だというのは本当らしい。
「今やフォルに使えない魔術の方が珍しいよねぇ」
「はい、当主様」
「おまけに本人はアルビノだから魔力もたくさんあると来た。すごい逸材なんだろうね」
「ええ、お嬢様は本当に素晴らしいお方です」
「でも、本当にフォルがすごいのはきっとそこじゃないよ」
あの子は恵まれなかった子だ。
だからこそオレはいっとう大事にしている。
たくさんの物を与えられ、大事にされ、なのにフォルは「もっともっと」とは言わない。
オレが手を差し伸べた者の中にはそういう者も多かった。
もちろんそうじゃない者も多かったけれど、そういう者は逆にオレに忠誠を誓っている。
「フォルはさ、もっともっとと求めるのではなく、オレに忠誠を誓うのでもなく。オレに近い立ち位置で、オレに『お返し』をしようとしてくれる」
「それは…ええ、お嬢様の美点ですね」
こんな子は初めてだ。
可愛いフォル。
フォルといると、満たされているはずなのに欠落していたものが埋まるような感覚がある。
乾いていた部分が潤うような感覚がある。
「フォルを拾って良かった」
「当主様…」
「フォルに色々なものを与えてあげたいのに、フォルにたくさんのものをもらってしまっているね。オレももっとフォルを幸せに出来るように頑張らなきゃ」
「そうですね」
「差し当たっては、オレがフォルのために出来ることは何か無いかな」
必要なものはその都度与えてしまっているし、物じゃないならなにがいいだろう?
なにをしてあげられるだろう?
「では、たまには羽を休めてお二人でお昼寝などはどうでしょう」
「え?」
「当主様が執務に専念されている間は、お嬢様はお暇でしょう。魔術書を読破してしまいましたし、今手にとっている屋敷内の他の分野の本もそのうち全て読破してしまわれるでしょうから。当主様との時間が増えればお嬢様も喜ばれるかと」
「そっか」
確かにフォルなら喜びそうだ。
フォルは忙しくしているオレを時々心配してくれるし、休息を取るところを見せれば安心もできるだろう。
「なら、早速明日から毎日一時間フォルとのお昼寝の時間を作ろうかな」
「三時のお茶の時間もご一緒したらどうでしょうか」
「それもいいね!でもお前、フォルにかこつけてオレに休息を取らせようとしていない?」
にっこりと微笑まれた。
ヴィゴーレったらもう。
でもまあ、いい案だとは思うから採用するけどね。




