ごめんなさいね、この人変わってるの
ヴィゴーレさんが、クリオに言った。
私に魔術師の家庭教師をつけたらどうかと。
才能がある私が、将来魔術師になる道も選べるようにしてあげたらどうかと。
けれどクリオは言った。
「オレはこの子に要らぬ苦労をさせるつもりはないよ。この子はずっとオレのそばにいて幸せに生きればいいんだ」
困り顔のヴィゴーレとピエタに、代わりに私が謝った。
「ごめんなさいね、この人変わってるの」
「えー?そうかな」
「変わってるわ。でも別に嫌ではないけれど」
「そう?なら良かった」
にっこり笑うクリオ。
変わってるなんて言われたのに、相変わらず甘い人。
「お嬢様はそれでよろしいのですか?」
「もしどうしても魔術を習得させたいなら、家庭教師より魔術書の方がいいわ。クリオや使用人のみんなは好きだけれど、基本的に人と接するのは嫌いなの。…みんなは別よ?」
「お嬢様…」
「フォル、魔術書もっと欲しいかい?」
「ええ、クリオの執務中暇だからその間お勉強したいわ。でももう屋敷にある魔術書を全部読んでしまったから」
私がそう言えば、クリオは微笑んだ。
「それであれば魔術書をたくさん買ってあげる。その代わり家庭教師はなし。それでいいかな?」
「私はいいわ」
「お前たちもそれでいいかい?」
「お嬢様がそれでよろしいのでしたら…」
「異論はございません」
ということで、私は魔術書を大量に買い与えられた。
しばらくすると、私はまた全て読破して使える魔術の幅が大幅に広がった。
ピエタは自分のことのように喜び、ヴィゴーレさんはやはり当主様の専属魔術師として将来雇うべきではと言っていた。
専属魔術師だろうがなんだろうが、クリオのそばにいられるなら別になんでもいい。
でもクリオのそばにいられて役に立てるなら、専属魔術師もいいのかも。




