私の計画に必要な娘なのに
私は国一番と謳われる魔術師、インクボ。
優れた魔術の腕があるのに、平民出身だと言うだけで宮廷魔術師になるという夢を絶たれた。
ならばこの国を私の理想の国に造り替えようと、私は奮起した。
表では魔術師として名声を高め、裏では国家転覆のための仲間を集め準備を進めた。
裏で手を回し、あとは王族を消せば身分制度に縛られない理想の国を確立できる。そこまできた。
「あとはアルビノを贄に捧げ、王族全員を呪うだけ」
呪いはコストが高い。アルビノを贄に捧げるくらいしなければ王族を全員殺し切ることはできない。
しかしアルビノはそうそう見つかるものではない。
だが私は幸運だった。ある日天の雫の花畑でアルビノの少女を見つけた。
私は大金を払ってアルビノの少女を買おうとした。
しかし、お人好しで有名な公爵はアルビノの少女を手放す気はないらしい。
「ならば、手放したくなるように誘導してやろう」
私は魔術を行使して、公爵に呪いをかける。
人の命を奪う呪いではなく、ましてや公爵一人が相手であれば私の魔力でもギリギリ間に合う。
そうして公爵に貧乏になる呪いをかけようとしたが、なぜか呪いが弾かれたのを感じた。
どうやら公爵はやり手らしい。
先手を打たれて結界を張られていた。
「小癪な…」
私は魔力回復のための秘薬を飲み、再び呪いをかける。
公爵自身に呪いをかけるのがダメなら、少し危険だがアルビノの少女に呪いをかけよう。
醜い見た目になる呪いをかける。
これであの公爵も少女を手放すだろう。
ところがまたも呪いは弾かれた。
「そこまで徹底するとは…公爵もなかなかやる」
では次はと屋敷の使用人に体調不良の呪いをかける。
体調不良者が続出すれば、不気味な娘を自ら手放すだろう。
しかしまたも呪いは弾かれた。
魔力回復の秘薬はあと少ししかない。
「なんという徹底ぶり…」
ならばと屋敷に呪いをかける。
不気味なポルターガイストが続出すれば、アルビノの少女を私に売ってくれる気になるかもしれない。
しかしこれも防がれてしまった。
ならば仕方がない。
「これは最終手段を使うしかあるまい」
私は虫を集め蠱毒を作った。
そして、かの屋敷に魔術で送りつけた。
いくら強力な結界を張ろうとも、蠱毒ほどの呪いには敵うまい。
私は勝利を確信して、人知れず高笑いをした。




