せめて、私に出来る範囲で彼を守ろう
結局クリオは私を売らないらしい。
だけど魔術師に恨まれるのは怖いこと。
普通は魔術師と関わることなんてそうそうないけれど、関わってしまったら逆鱗に触れないようにしないといけない。
けれどクリオは危険を承知で私を選んだ。
だから私は、私に出来る範囲でクリオを守ろう。
「…っ」
魔力を極限まで酷使して、屋敷全体に結界を張る。
屋敷だけでなく屋敷にいる人全員、クリオはもちろん私自身や使用人にまで結界を張る。
限界まで結界を張ったので、並みの魔術師では呪いなど付与できないで跳ね返されるだろう。
これでクリオや優しくしてくれるみんなを守れる。
けれど魔力を極限まで酷使したせいで、多分魔力不足になってしまった。目眩や倦怠感を感じる。
「ピエタ、今すぐ甘ーいお菓子と蜂蜜たっぷりのホットミルクを持ってきて」
「はい、お嬢様」
ピエタは私の魔力不足を知らないので呑気に取りに行った。
魔力不足の時には甘いものの摂取が一番効率がいい。
ピエタはその後すぐにお菓子とホットミルクを持ってきてくれた。
私はホットミルクをごくごく飲んで一口でコップ一杯飲み干してしまった。
「ホットミルクおかわり」
「は、はい!今日のお嬢様は甘党さんですね!」
ピエタはホットミルクのおかわりをもらいに行く。
その間にお菓子を食べる。
今日はチョコレート菓子だ。
甘いお菓子が魔術で酷使した体にしみる。
「お待たせしました、おかわりです!」
「ありがとう」
甘いものが魔力に変わり、身体を満たしていくのを感じる。
全て食べ終わり飲み干したところで、とりあえず必要最低限の魔力は回復して、魔力不足で感じていた目眩や倦怠感を脱した。
あとは自然回復を待てば十分だろう。
「ありがとう、ピエタ。元気になったわ」
「いえ、お嬢様のお役に立てて何よりです!」
そう言って満面の笑みを向けてくるピエタ。
ピエタはいつでも私に優しい。
クリオとは別ベクトルの優しさを感じる。
ピエタもちゃんと守ろう。
使用人にも結界を張って正解だなと思った。




