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別に私は売られてもいいのだけど
「クリオ」
玄関に塩を撒くクリオに声をかける。
「フォル、どうしたの?」
「別に私は売られてもいいのだけど」
「…聞いていたの?」
「うん」
クリオは悲しそうな顔をする。
「売られてもいいなんて言わないで。何をされるかわからないんだよ」
「でも、それでクリオが危険な目に遭う必要はない。あの人は魔術師。クリオにこっそり魔術を使って何かしてくるかもしれない」
「それでもオレはフォルを見捨てる気はないよ」
フォルを幸せにするために手を差し伸べたのだから、とクリオは言う。
やっぱりクリオは、狂ってるくらいに優しい。
自分の身の方が大切だろうに、私のために危険すら犯す。
「フォル、どうかオレのそばで幸せになって。オレはそのためならなんだってするよ」
「…クリオは私の恩人よ。クリオが望む限り、私はクリオのそばにいる」
「ありがとう」
「でも、手放したくなったらすぐに言って」
「そんな日は来ないよ」
彼はやっぱり、狂っているほど優しすぎる。




