執事からみた主人
私はアッフェット家に仕える執事、ヴィゴーレ。
今は当主たるクリオシタ・ソッリーソ・アッフェット様にお仕えしている。
我が主人は、少々変わっている。
二十二歳の若さで両親を失ったというのに泣くことすらなく、爵位を継ぐと圧倒的な手腕で領内を発展させてその名を轟かせた。
さらに、自由になるお金を領内外問わず貧民救済のために使い信奉者を生み出して人脈を広げる徹底ぶり。変わってはいるが、素晴らしい主人だ。
「しかしその優しさは本物。たとえ認知が歪んでいたとしても」
ひとりごちる。
そう、我が主人は認知が少し歪んでいた。
自分が恵まれた立場なのは理解しているが、自分以外の人間は可哀想なものだと考えていた。
だから助けてあげたいのだと主人は言う。
そして、自分のできる範囲ではあるが誰にでも手を差し伸べていた。
「そんな主人が、まさかひとりのお嬢さんを特別扱いするとは」
齢十二歳の、幼いアルビノの少女。
専属侍女曰く天才である美しい少女を、主人は可哀想な子で可愛らしい子だからとなにかと目をかける。
そしてある日、彼女に手を出した辺境伯家の娘を苛烈なまでに追い込んでみせた。
「人並みの執着を知ることができたのは良かったのか、それとも主人にとって悪い影響となるのか…」
ただ、お嬢様自身は冷めた子供だがたしかに美しく才能がある。
礼儀作法やマナーも最初から最低限は出来ていたし、今では主人のお気に入りとして十分なレベル。
だからまあ、もし万が一主人が変な気を起こしても問題はないだろう。
そもそも主人がそんな趣味に走らないことを祈るが、人生どう転ぶかわからない。
「まあ、なるようにしかなるまい」
主人にとってこれが、幸せな変化であることを心から祈る。
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