娘というと語弊があるけど、お気に入りだよ
「さて。君はそもそも、誰の許可を得てここにいるのかな」
「…っ」
「アポイントメントも取らずに押しかけてくるとか、非常識じゃない?」
表情はにこやかなまま責め立てるオレに、フォルを傷つけた彼女は青ざめる。
「これには深いわけがっ」
「深いわけねぇ…」
「私はただ、クリオ様を助けたくてっ」
はて、助けたいとは?
首をかしげるオレに彼女が言い募る。
「クリオ様の優しさを利用するあの小娘から、クリオ様を守りたくて、その一心で」
「ちょっと待った。オレはフォルに利用なんてされていないよ。そもそも利用されているとして、特に困ってない」
例えばフォルがオレの思うよりもよほど腹黒くて、最近なつき始めたのも作戦のうちだとして。
だからといって困ることなど何もない。
そもそも彼女を助けたくて手を差し伸べたのだから、思う存分利用してほしいくらいだ。
オレは可哀想なものを放っておくなんてできないし、幸せになってくれるのならオレが破滅しない程度ならいくらだってオレを使っていい。
「困ってないって…」
「うん、困ってない。オレはフォルが幸せになってくれるのならそれでいい。フォルはオレにとって可哀想で可愛い目をかけるべき存在だからね」
「…」
呆然とされても困る。
オレは本心しか口にしていない。
「そんなにあの小娘を愛しているのですか?まさか養子にでもするおつもりですか!?このまま娘として引き取るとでもいうのですか!?」
「娘というと語弊があるけど、オレにとってはお気に入りだよ。養子にはしないけれど、このままオレの手元で育てる。愛しているというのとは違うけれど、可哀想で可愛い目をかけるべき特別な存在だよ」
理解できない、という目を向けられる。
別に、理解してほしいなんて思っていないからいいけれど。
「クリオ様は一体、何を考えていらっしゃるのですか…?」
「可哀想な子を助けてあげたい、ただそれだけだよ」
「…」
俯く彼女が何を考えているのかはわからない。
けれどそんなことより大事なことがある。
「ねえ、それよりも。君はフォルの頬を叩いたよね?フォルの両頬が真っ赤になっていたんだけど」
「あ…」
「オレのお気に入りに手を出したんだ、覚悟はあるよね?」
「ま、待ってください、そんなつもりじゃなかったんです!」
青ざめて、泣いて縋ってくるけれど。
オレにそんなことは関係ないので、制裁をくだすことにした。




