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魔術師ののんびり田舎暮らし

空は紺碧色に染まり一日の終わりが近づいてくる中森の中を淡々と歩いていく。鳥がさえずる中、木々が揺れ気持ちの良い風が体をなでる。

「リナ、そろそろ夕食にしない?」

リナと呼ばれる少女に話しかけるのは茶色の髪に水色の瞳をした子だ。

「んー、確かにおなかすいてきたかも」

リナはおなかのすき具合を確かめるように腹をさする。直後ぐ~と音が鳴る。

すると私は面白そうにくすくすと笑い立ち止まる。

「なっ!ちょっと、シル~、笑わなくてもいいじゃない」

リナはほほを膨らませて私の顔を見る。

「ごめんごめん、まぁナイスタイミングじゃない?」

シルは荷物を下ろすとてきぱきと調理の準備を始める。

「も~」

リナも続くように荷物を下ろし水筒に口をつけた。


私はシルそんで向こうにいるのがリナ。どちらも今年15歳になったばかりだ。実は2人とも王都の魔術学校を飛び級で卒業、その後は実家に戻って親の魔術研究の手伝いをしていた。卒業、とはいっても実は卒業認定試験を受けただけで通っていない。勉強自体は家にあった魔術書で独学だ。…分からないところは親に教えてもらったけど。そのような形で実家で魔術研究にいそしんでいたが先週から親は王都に仕事で赴任することになり、2人とも私の親戚の家に預けられることになった。親についていくという選択肢も考えたが職場の寮が狭く、また王都の家賃も高いため家族で家を借りることも難しかったため。リナとシルはお隣同士でそれぞれの両親の職場もが同じこともあり生まれた時から家族ぐるみの付き合い。今は実家から数日かけて親戚の家への道中。


「しっかし、収納袋が借りれてよかったよ~」

リナが鍋を取り出す。

この世界の収納袋は庶民が少し頑張れば購入できる程度のものでり、容量にもよるがそれほど珍しいものではない。これは2人の両親が赴任する際に渡したお古である。

私は薪に火をつけながら

「これがあるかないかじゃ全然違うよね」

と相槌を打つ。

「ファイア」

私の指先から出た火は薪を活きよい良く燃やす。

「ウォーター」

今度はリナが指先から水を鍋にそそぐ。

リナはガラス瓶からスパイスを取り出し鍋にまぶすとこんどはシルが一口サイズに切られた干し肉と野菜を入れる。

「ぱんぱんぱん~♪」

リナは鼻歌を歌いながらバケットを取り出すとナイフでちょうどよいサイズに切り分ける。

「はい」

「ん、ありがと」

リナがパンを私に手渡す。

「今日で2日目」

シルがつぶやくと

「そだね、明日には到着だね」

リナは私のほうを見てにっこりする。

2人がお世話になるところは何回か訪れたことがあり道順は完璧に把握している。

「まさかリナと一緒に暮らすことになるとはね~」

「私も予想外だった」

リナは少し嬉しそうにする。

「親と離れて寂しいけどリナと一緒だったら何とかなりそう」

「私もだよ~」

リナは私に引っ付く。ひっつかれるのはむずかゆい。

私は少し恥ずかしいのかごまかすように鍋のほうを指さして

「そろそろかな」

と話題を変えた。


鍋の蓋を開けると中から肉のににおいと野菜の豊潤な香りが漂い食欲を刺激する。

リナは鍋をの覗き込みながら深呼吸する。

「はぁ~、いい匂い」

すると直後私のおなかから音が鳴る。

「これでお揃いね」

とリナははにかむ。

「この香りをかいでおなかが減らないわけないよ」

リナは器によそい私に渡してくれる。

「確かに」

さっそくほおばるように口に運ぶ。

「おいしい」

「そりゃそうよ出来立てだからね」

リナも続いて食べ始めた。

スープに干し肉と野菜の出汁が出ており濃厚な味わいが口の中に広がる。ぱさぱさだった干し肉はスープがしみてしっとりとした舌触りになり、ほろほろのジャガイモが口の中でとろける。極めつけはぷりぷりのキノコと味のしみ込んだ人参だ。一度口に運ぶとしばらく無言で書き込みたくなる。

「にぇえ、シル。これからお世話になるおばさんてどんな人だっけ」

リナが口をもごもごさせながら言う。

「リンおばさんのこと?」

リナは私のほうを向きほっぺにパンが付いているのをみつけてハンカチでふき取る。

「んん、ありがと」

シルは気にせずスープをしみこませたパンを口に運ぶ。

「なんていうかいい意味で世話焼きな人だね~。ちょっとおせっかいなところもあるけど」

「へー」

「リナも小さいころあったことなかった?」

「小さいころだったから忘れちゃった」

確かリナがリンおばさんにあったのは5歳くらいの時だ。忘れてしまっても仕方のないことだろう。リンおばさんは少しばかり悲しむかもしれないが。

「そんなもんか」

私は残りのスープを口に入れると一息つくように息を吐きだす

「おいしかった」

「お食事タイム終わっちゃね」

リナは名残惜しそうに空になった鍋を見つめて片づけを始めた。

「キュア」

一声唱えると食べかすが散らかっていたお椀と鍋は新品のようにきれいになる。

パチパチと薪の音が鳴る中、私は薪を火の中に放りもむ。あたりが薄暗くなってきたところを炎が照らし夜が来たことを告げる。

フクロウの鳴き声が鳴く中リンは結界魔法を周囲に貼り寝る準備を始める。この結界さえあれば匂い、音、姿を消してくれるので安心安全だ。収納袋からマットを取り出し寝袋の下に敷く。あとは寝るだけである。

「ちょっと食べすぎたかも」

リナはおなかをさすりながら満足げに座る。

「もう、リナったら」

私はあきれながら笑う。

「そういうシルも結構食べてたよね」

「私の胃袋は特別性だから…」

私は少し恥ずかしそうにして膝を体に寄せる。

「知ってる」

リナはニヤッとしながらこっちを見る。

「えい!」

「余計なことを言うのはこの口か~」

私はリナのほっぺをつつくと

「ぷにぷに」

とリナのほっぺを堪能していた。

しばらく無言で焚火を見つめるながらふとリナに問う。

「今パパやママは頃王都についたのかな~」

「ん~どうだろ、うちの両親のことだから途中で観光してもおかしくない」

「確かに」

私は笑いながらリナのほうを向く。

「リナは王都に行きたかった?」

「どうだろ、今更勉強することもないし、かといって働くのはまだ先でいいかなと思ってるから…なによりやりたいことが見つからないしな~」

燃え尽き症候群はまだ健在のようだ。魔術学院を最年少で卒業したが、それなりに忙しかったのだ。

「まぁ、あとはシルと一緒にいたかったからかな、なんて」

なははとリナは笑う。

「おいおい、そんなこと言われると照れますな~」

と私はリナのことを肘でぐいぐい押す。

「それは私もだけどね」

と私も笑う。

「でも王都か~、今は乗り気じゃないけどそのうち行ってみたいね」

「そうだね、ナウでヤングな流行の先端だからね~」

「ナウかもしれんがヤングかはわからんぞ」

「確かに、もしかしたらマダムかもしれない」

「それそれ~、貴族とか多そう」

「それ言えてる」

私はぴしっと指をさす。

「私りゃ田舎もんにはまだ早いということで」

「そういうことにしときましょ」

焚火の日が小さくなってきたところでランプに魔石を申し込んで火を灯す。

「さて、明日も朝早いしそろそろ寝ますか」

目をこすりながら寝袋に入る。

「さいですなではおやすみ」

リナもランプの灯を小さく調節すると寝袋に入る。

「おやす~」

しばらくすると寝息が聞こえてくる。私も寝よう。



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