きろ
ぼくには二つうえの兄がいた。
まいにちいっしょにかえっていたんだ。
小学校からうちまで手をつないで、まいにちまいにちいつもいっしょで。
おかあさんが『弟の世話を任せっきりでごめんね。イヤじゃない?』ってきいたけど『お父さんお母さんのかわりにできることだから』っていってた。
だけど…… その日はいつもとちがったんだ。
少し前に、兄がケガしてきた日があって、おかあさんがしんぱいしていたのだけど、なにもせつめいしてくれなかった。
にしゅうかんくらい、そのはなしをかぞくのなかでするのがダメみたいになってた。
そして、ゆびにグルグルまきのほうたいがなくなった、とおもったくらいの日。
いつもの校門でまちあわせ、兄のがあとからきたから手をにぎろうとしたら、さけられた。
しかもうつむいたままで、ひとこともしゃべってくれなかった。
目もあわせてくれないから、なにかあったのかなってぼくもしんぱいになったんだ。
「おにいちゃんどうしたの?」
でも、かおがよくみえない。
うちの前まできたけど、しゃべってくれないから、先にげんかんのなかにかけこみました。
きぃいい、ばたん。
ドアが、しまっちゃった。
おいかけてくるとおもったのに、ドアはしまったまま。
兄にわるいことをしたきがして、あけたんだけど。
そこにはだれもいなくて。
しずみかけのたいようの、なんだかねっとりしたオレンジいろのひかりが兄をかくしてしまったようにおもえたので。
ぼくは、おおごえをだしてしまった。
「おにいちゃんっ!? おにいちゃあんっ!?」
でも、だれもいない。
さっきまで、いっしょにかえってきた、兄がいない。
ぼくは外にいるのがこわくなって、うちにはいってかぞくのかえりをまつことにしました…… げんかんのカギをかけた時、いきなり電話がなっておどろいたけど。
ぷるるるるる!
その電話はお母さん。
その話が、よく、わかんなかった。
『もしもし!? いつのまに帰ってたの!?』
「えっ、おにいちゃんと、かえってきたんだよ?」
『……こんな時に、ウソ言わないで!』
お母さんはそういった。
ウソ?
いみがわかんない…… すると、お母さんはつづけて。
『さっきね、お兄ちゃんが学校でね…… 飛び降りたって連絡がきたの。今、お父さんと一緒に病院にいるから』
電話から聞こえてるお母さんのことばが、わかんない。
「……え?」
じゃあ、あの兄はいったい……?
ぼくは、もういちどげんかんをあけるゆうきがでなくて、ベッドにとびこみました。
ぼくの『おにいちゃん』はその日から、かえってこなかった。
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