こんな展開の小説、読んだことないぞ。
『第1回物語を現実する小説大会』
……というニュースが僕の愛用するSNSに流れた。概要をかいつまむと、一人につき一回まで『#物語を現実にする小説』のタグを付けて小説を投稿すると、数日後に小説に書いたことが現実に起こるらしい。
まあ、物語が現実なんて、テレビ局がつくるドッキリ番組ぐらいのクオリティの、ありきたりな内容をそう演出しているだけだろうと、僕はスルーした。だが数日後、SNSで『#物語を現実にする小説』がバズった。同時にバズったワードが『巨大怪獣』と『ロボット』。その二つの言葉が取り入れた小説が現実になったのだ。これがきっかけに素人からプロまで、幼稚園児から政治家まで、老若男女官民超えてさまざまな人々が小説を投稿した。
ただし、SNSを漁っていると小説が現実にならなかったという報告もちらほらあった。何らかの条件があるらしい。分析したが、ある程度のクオリティがある中長編程度の作品が現実になりやすいというのはわかったが、それ以上がわからない。
ふと、小説大会の概要を見ると、もう期日が数日しかない。僕は急いで小説を書き出そう……と思ったが、僕は小説なんて書いたことがなく中長編なんて書けない。
そうだ。こうなったら僕の好きな小説をコピペして投稿してしまえばいい。SNSにはそういう輩はいなかった。これは見事な盲点だろう。
そして、僕は色んな小説をコピペした。主人公がハーレム築く系は、主人公の名前を僕の名前にして投稿した。成り上がり系とか、無双系もそうして作り、十作以上は投稿した。僕はわくわくしながら新しい現実を待った。
数週間後、僕はたくさんの老若男女がぎゅうぎゅう詰まった檻の中にいた。こんな展開の小説、読んだことないぞ。