帰星
もう、母星へは帰れない。
僕は金星人だ。
いつからかこの星にいたんだ。
この星の重力は、僕にとって少し重い。
この星は僕にとって、寒くて仕方ない。
息が苦しいんだ。
頭が痛むんだ。
産まれた場所はこの星なのに。
だからきっと
僕は金星人なんだ。
金星での記憶はなくしてしまったけれど。
記憶はないけど覚えているんだ。
金星ではいつも神様が守ってくれていたことを。
風が強くて吹き飛ばされそうなんだ。
瞬きをしている間に一日が終わってしまうんだ。
眩しくて仕方ないよ。
できることならずっと目を閉じていたい。
空を見上げるとき
真っ先に目に入るのは、いつもあの星だった。
だから目を閉じるわけにはいかないんだ。
見失ってしまうのが怖いから。
でも、金星に行ったならきっと
僕は地球人になってしまう。
読んでくれてありがとう!