練習開始!
……なんでみんなこんなに余裕そうなの?……
外周3週走って、私はヘトヘトになった。私が3週走り終わると、花恋以外は既に息が整っていた。私より2分遅れで花恋が走り終わると直ぐに体育館へ移動した。
……早くゴールすればその分長い時間休憩できるんだ……
体育館についてからも準備運動、フットワーク等でなかなかラケットを使った練習にならなかった。私はフラフラになりながら必死に練習についていった。
「基礎打ち!!」
矢野先輩がそう言うとみんな一斉に
「はい!!」
と返事した。私達1年はお互い顔を見合わせた。
……私達はどうしたらいいの?……
「じゃあ、1年生にはまず素振りからやってもらいます。若月さんが経験者だから若月さんに教えて貰ってね。素振り100回を2セット外でやって来て。随時休憩取って、終わったら戻ってきていいよ。まだラケット持ってないだろうから体育館倉庫にある学校の借りてね。はい、行ってらっしゃい」
矢野先輩は早口で言うとコートに戻ってしまった。
「若月さん経験者なの!?」
「小学生の時から習ってたってこと?すごい!」
外に出てアヤとモモが目を輝かせて言った。
「わかった?あなた達と私は違うの。私は本気なの。なんで私があんたらに教えなきゃならないの?」
玲奈の言葉で一瞬にして空気が凍りついた。
「それは先輩に言って。私だって入ったからには真剣にやるよ。だから、教えて」
優奈がそう言うと玲奈は小さくため息をついた。
「右利きは左足、左利きは右足を前に出して肩幅に開く。前に出した足と後ろの足が直角で、なおかつ踵と踵を一直線上にあるようにする……」
一通り説明を受けてから私達は1列に並んで素振りを始めた
「123、223、323、423……」
100を超えた頃、矢野先輩から集合がかかった。
体育館へ戻ると先輩達が並んでいた。私達も慌てて後ろに並ぶ。
「春季大会に出場する選手を発表します」
顧問がA4サイズの紙を広げて読み上げた。私にはまだ関係ないけれどその重苦しい雰囲気に心がドクドクと波うった。
春季大会には玲奈も出場する。顧問は最後に
「実力さえあれば学年関係なく出場させます」
と言った。部活終了の挨拶が終わっても大会に出場できない3年の先輩方はなかなか動けないでいた。
次の日から玲奈は先輩方と同じ練習メニューをこなしていた。玲奈とほとんど接する機会もなく、しかもあまり打ち解けられていなかった私達はなかなか気づけなかった。いや、もしかしたら心のどこかで否定したかったのかもしれない。