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花園花恋

ずっと黙っていた花恋がやっと口を開いた。

「私、みんなにおいてかれてる」

……え?……

花恋のいつもと違う、低くて真面目な声を初めて聞いた気がした。

「そんなの、私だって同じだよ。私も大会出れてないし…」

モモの言葉に花恋は首を振った。

「モモは怪我してたから……。置いてかれてるというより私だけ本気度が違った。

私、今まである程度のことは努力しなくてもそれなりにこなせてる。一生懸命って暑苦しくて私、努力するって苦手なの。それに、たとえ努力しても叶うなんて限らない。だったらそれなりにやってそれなりの結果の方が諦めがつく」

あぁ、この前心の中で疼いた違和感はこれだったのか。それと同時に花恋の言葉に納得してる自分もいた。頑張って叶うならみんな勝ってるじゃないか。本当に県大会に行けるのだろうか。努力して、それでも県大会に行けなかったら……想像でしかないけれど壊れる自分が見えた気がした。


……でも、諦められない……

私の心の声は口には出せなかった。なぜなら花恋の言葉に揺れ動いてしまったから。揺れ動いてしまったら叶う夢も叶わない。なのに……

「みんなと一緒にいるのが楽しくて残って練習してただけ。強くなりたいとか本気で思ってたわけじゃない。遠征に行けなくても私1人じゃなかった。だけど気づいたら私一人だけ取り残されてみんな先にいってた。どんどん上手くなって大会に出てるみんなはすっごいかっこよかった。私、今まで何してたんだろう。スタートはみんなと同じなのにって思って凄い悔しい。こんな気持ち初めて……」

花蓮は顔を上げて続けた。

「みんな、ごめん。今まで、みんなの輪を乱してた。私、もっと努力する。そして、みんなと県大会出場する。だから改めてよろしくお願いします」


花恋はどんどん強くなっていった。私も負けてられない!!そう思って自然と練習に力が入る。花恋の本気は私たちの力の底上げになった。


ある日の放課後、いつも通り部活で行く途中、ラケットを持ったモモの後ろ姿が見えた。

「モモ!今日からやっと打てるの!?」

モモは振り返ってピースして見せた。

「うん!今日からはみんたと同じ練習メニューだよ。見て、グリップ張り替えたんだ」

ラケットケースから覗かせたモモのラケットのグリップは綺麗な赤紫色だった。

「可愛い!しかも柔らかい!手が痛くならなそう!」

「早くこのラケット使いたいな」

そう言ってモモはラケットを抱きしめた。


コートの中から苦しそうな息遣いが聞こえる。モモはその場でうずくまり、その姿勢は全身の力が抜け落ちているようだった。血色は悪く、苦悶の表情が浮かんでいる。呼吸は荒く、モモは苦しそうに身をよじっている。呼吸の波が次第に高まり、全身が硬直している。

花恋に支えられてながら外に出るモモ。傷だらけの鳥は1人で歩くことも出来なくなってしまった。その傷の痛みを分け合うことが出来ればいいのに……。傷を一瞬で治せる薬があればいいのに……

私はなんて声をかけたらいいのかも分からなかった。どんな言葉もモモを傷つけるような気がした。とてつもなく大きな無力感に締め付けられて苦しかった。モモはその何十倍も苦しいのに……

私にはただそばにいて見守ることしか出来なかった。時間が解決してくれる、いつか必ず再び飛び立てる日が来ると信じて……





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