初の公式戦
大きな大会のない冬はあっという間に過ぎ去り、私たちは2年生になった。1年生が10人も入りバド部は大所帯となった。怖かった1つ上の先輩は1年生は別人のように優しくなった。もちろん、私たちには変わらず厳しいが……
私が最初に出場した公式戦はこの春季大会だった。個人ダブルスでの出場となった私は大会1日目は試合がなく応援に専念した。公式戦のスケジュールで1日目が団体戦とシングルスの予選、2日目がシングルスの順位決定戦とダブルスだったからだ。1つ上の先輩が私たちに応援の方法を教えてくれたように今度は私たちが後輩に教えなければならない。相談したわけではないけれど、大会に出場しないモモと花恋がその役目を担ってくれた。私は先輩として恥ずかしくない姿を見せなければと意気込んだ。
春季大会に出場できると決まった時から、ダブルスでペアを組む先輩とずっと一緒に練習してきた。ダブルスでの動き、サーブを打つ前の合図をその時に初めて教えてもらった。攻撃は前後、守備は左右に立つ。背中にシャトルを持った手を回して親指を出したらロングサーブ、小指を出したらショートサーブの合図。学校での練習ではバドらしい動きが出来ていた。ただの羽打ちではなく……。
試合の1時間前に少しだけ何か食べておいて、空腹でも満腹でもない状態にする。アップを沢山して体をほぐした。試合をするのに絶好な状態……のはずだった。
……あれ?なんで?体が動かない!!……
体はとても軽いのに何故か動かない。軽いというより体がふわふわ浮いているような、私の体なのに私の物ではないような感覚だった。手や足に伝わる神経が突然ハサミでブツンと切られた。気持ちだけが焦ってくる。
……早く!早く動かないと!……
私の中の歯車がカラカラと無駄に音を立てる。2、3歩後ろに下がれば打てるのに、シャトルがフワッと高く上がったこのチャンスを私は無駄にした。普段ならスマッシュ(=相手コートにシャトルを叩きつけるように打ち込む)やドロップ(=相手コートのネット付近にシャトルを落とす)で攻撃に入れたであろうシャトル。私の打ったシャトルはカンッと高い音を立てて力なく落ちていった。
12-11で私たちは負けた。先輩は挨拶が終わると直ぐに荷物をまとめて次の審判の準備をした。負けた側がその後審判をするためだ。私も慌てて先輩の後を追う。
「先輩、すみませんでした。私のせいで……」
私は審判が終わった後、先輩に声をかけた。
「ダブルスなんだから、負けたのは2人の責任。あなたは初めての試合でしょ?私の方が経験豊富なんだから私がもっとサポート出来れば良かった。次だよ、次。次頑張ろう」
先輩はその後目を伏せて続けた。
「……ていうのは頭ではわかってる。けど、私にはその次がないかもしれない。ペアがあなたとではなかったらもしかしたら……。ごめんね、こんな先輩で」
先輩は外へと走り出した。葛藤している先輩に胸が傷んだ。もし私が先輩と同じ状況だったら……。私も多分、黒い感情に支配される。だから私とペアじゃなければと言われても先輩に対して憎しみの感情は芽生えなかった。
大会が終わり、私達2年だけで集まった。
「傍から見てて思った。みんな、自分の力が出せていない」
「緊張に押しつぶされた。身体は万全なのに、気持ちが負けてた」
「ずっとテンパって終わった」
今の私たちに足りないものは精神力だった。まずは大会の空気に慣れることから始めなければならない。しかし、そんな悠長なことは言ってられない。私たちに残された時間はたった1年だから。
そこで私たちはランキング戦を行い、2年の中でランキングを決めることにした。負けた人は外周3週の罰ゲーム付き。そして、大会前はより一層試合形式の練習を増やすことにした。
夏の大会では、絶対自分の力を出し切ってやる!!私はそう心に決めた。
みんなで話し合っている間、花恋はずっと浮かない顔をしていた。




