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勇者VS魔王

 深夜。

 幼女三人と一つの布団で雑魚寝。


 抱き着かれるわ、布団を引っ張られるわで熟睡できず、目が覚めた。


「んあ? なんじゃ? おしっこか? ついて行ってやろうか?」


 俺が目覚めたことでロゼも目覚めたらしく、瞼を擦りながらそんな事を言ってきた。


「普通逆だろ」


 幼女に言われ無性に腹が立ったが、言われたことで尿意を催してしまった。


 少し悔しい。


 俺は一人でトイレに向かうと、そこで用を足す。


「儂はここにおるぞ~安心しろ~」


「うっさい!」


 扉の向こうからロゼの声が聞こえてくる。

 俺が怖くならないように心配しているらしいが、余計なお世話だ。


 というか三年前。ロゼがまだ魔王だった頃の事を思い出すと、逆に怖い。

 魔王がトイレの向こうでここにいるって言ってんだぜ? 安心できるわけがない。


 少し……昔を思い出してしまった。


 〇


 金髪灼眼の目も眩むような美女。


 白い肌とは対照的な漆黒のドレスを身に纏い、まるで虫でも潰す様に人類を蹂躙していった【不死の魔王】ロゼ。


 最硬、最大、最多、最凶の四天王を部下に抱える最強の魔王。


――俺は、そんな化け物と百回以上戦った。


「おおおおお! いい加減! 死ねええ!」


 ーー止まった時間の中、俺は聖剣を振るい、ロゼを細切れにしていた。


 何度も何度も切り刻み、完全に肉片になったロゼから距離を取り……。


(頼む……いい加減死んでてくれよ……)


 ーー再び時を進める。


「はっはははは! いくら細切れにしようと儂は死なぬわああ!」


「くっ……!」


 時が動き出した瞬間、ロゼは瞬間的に元の姿に戻る。


 そして……俺の反応速度を凌駕するスピードで近づき……。


「お主もいい加減死ねい!」


 鉄をも切り裂く手刀の一撃。


 肩に数センチ手刀が食い込んだ所で、俺のスキルは間に合った。


(止まれ!)


【スキル 時間掌握】


 ーー俺以外、全ての時間を止める最強のスキル。


「ちっ!」


 俺は、切り裂かれた肩に回復魔法を掛けながらロゼと距離を取った。


 時間を止めて戦っても、俺からロゼに有効打がない以上じり貧になるだけ。


(あの技は……止まった時間の中では使えないしな……)


 もしかしたら、効くかもしれない。

 その程度の予感だが、一応俺にはロゼを倒せる技があった。


 しかし、それは動いた時間の中で相手に《1分間》接触しないと発動しない。


(1分間動いているロゼに接触なんて出来るわけがない……ここは一旦……引くしかないか)


 俺は止まった時間の中、ロゼから逃げ出した。


 ーーと、こんな感じの戦いが続く事百回以上。


「でなぁ? 儂は絶対にボアの酢豚に太陽パイナップルは合わないって思うんじゃよぉ。でも、四天王は肉が柔らかくなるからって言ってな? 入れるんじゃよ。合わんじゃろ」


「あーそれめっちゃ分かるわ~。俺もいらないって思ってるもん」


「じゃろぉ?」


 俺たちは仲良くなっていた。


 二人で土手に寝っ転がり、雲を見ながらどうでもいい日常を話し合う中だ。


「なあ、ロゼ。なんで人間を襲うんだ?」


「それは、なんで人間通しで争うんだ。と言う問いと同じじゃよ。あっ、あの雲。太陽パイナップルみたいじゃ」


「そうだよなぁ。いろいろあるもんなぁ。本当だ。そっくりだな」


 そして俺は横で寝ころんでいるロゼの手を握り、目を見る。

 ロゼは顔を真っ赤にして動揺し始めた。


「なっ……! なんじゃ!? 儂は魔族じゃぞ!? しかも儂ら敵同士なんじゃぞ!」


(29……30……もう少し……)


 そのまま黙って見つめ続けると、ロゼはゆっくりと目を閉じ、口を尖らせた。


「……儂の初めてのキスじゃ……貰ってくれい」


(58……59……勝った!)


 瞬間――ロゼは光に包まれた。

 

「うぎゃあああああ! なんじゃこれはあああ!」


「ふははははははは! 油断したな! 俺は触った相手の時間を巻き戻す事も出来るぅ! このまま生まれる前まで戻れ!」


 俺が使ったのは接触した対象者の時間を巻き戻す技。


 いくらロゼが死なないと言っても、生まれる前まで存在を巻き戻せば消滅するはずだ。


「おっ……女の純情を裏切ったなあああ!」


 ロゼは、叫びながらどんどん姿を小さくしていく。


 ーードレスから零れ落ちそうだった胸が小さくなっていく。

 

 ーーすらりと伸びた四肢は子供の様に細く、短くなっていく。


「ふはははははは! 勝った! 勝ったぞおお! 人類の勝利だああああ! ……は?」


 時が止まった気がした。


 勿論俺は止めてない。

 俺とロゼが単純に驚き、固まっただけだ。


「あれ? まだ生きと……る?」


 目の前にいたのは、幼女の姿のロゼ。

 自分の姿を見ながらきょとんとしている。


(ヤバい……死んだ……時間を戻すのは一度しか使えない……)


 ロゼがゆっくりと歩みを進め、俺に向かってくる。

 死を覚悟した。


「この女たらしが! 死ねい!」


 ペチ。


「ん?」


「ん?」


 俺の太ももに伝わった衝撃は、まるで子供のパンチ。


 俺とロゼは同時に頭を傾げた。


「食らえ! 食らえ!」


 ペチ。ペチ。


(コイツッ! 死ななかったがガキの頃まで力が落ちたのか! 今なら殺せる!)


「死ねええええ!」


 聖剣を取りだし、ロゼを斬り裂く。


 相手が幼女の姿だろうと容赦はしない。

 コイツは人類の一割を殺した魔王だからな!


 しかし……。


「あれ?」


「おお~! 流石儂! この姿になっても不死じゃ!」


 ……死ななかった。今だ不死の能力は健在だった。


(もう……疲れた)


 ポケットから煙草を取りだし、火を付けて土手に座り込んだ。

 ロゼも俺の隣に座る。


「はぁ……お前どうやったら死ぬんだよ……」


「はぁ……儂……これからどうしよう……」


 そして、そのまま空を見ながらぼんやりと考える。

 十分後。ロゼがぽつぽつと話し始めた。


「儂……後二百年位は静かに暮らす……部下にも人間を襲うなって言う……人間に捕らえられて、死なないからって拷問されるの嫌じゃもん」


「ああ……それがいいよ。俺もお前を倒したって事にして王国に帰るわ……なんかもう……疲れた」


 これが三年前の真実。

 勇者が魔王から世界を救った真実だった。


 そして今……。


「そろそろ出てきてくれぇ~! 儂もおしっこしたくなってきたんじゃ~!」


「……」


 俺は魔王に早くトイレを出てきてくれと、急かされている。


 まだまだ、思い出す事は沢山あるのだが今はとりあえず……。


「漏れる! 漏れるんじゃぁ! はよ出てきてくれぇ~!」


(面白いから、もう少しだけトイレに篭ってよう)

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